第10話 漁師、現る…
翌日。
勇都達の乗るエクスプローラー号は、出航した。
修理も無事に終わり、岩礁地帯から離れる。
エクスプローラー号は、ゆっくりと進んで行く。
「ようやく船が動きましたよ師匠。これで王都クックに向かえますね。」
勇都は、船室で飲み物を飲みながら笑顔を見せていた。
「やっと動きおった。速く王都にある美味しいスイーツを食べてみたいのう…」
人間の姿になったサマエルが、テーブルでケーキを食べまくっていた。
エクスプローラー号は、クラーケンの襲撃で足止めを喰らったが、後1日あれば王都に到着することができた。
勇都だけでなく、船内の乗客達も船が動いたことに安堵していた。
今日の海は、穏やかだった。
波も小さく、天気も雲一つない青い空が広がっていた。
太陽の日差しが照り付けるが、時折吹く風が心地よかった。
勇都は、船室でサマエルと会話をしながら楽しく一時を過ごしていた…
それから2時間が経過した。
突然、エクスプローラー号が止まった。
「え、止まった。まさか、またモンスターが出たのか?」
勇都は、椅子から立ち上がっていた。
「わしの楽しい食べる時間を止めるとは、けしからん!勇都準備じゃ。」
サマエルの全身が光る。
サマエルは、魔剣グランベリーに姿を変えた。
勇都はそれを腰の鞘に入れる。
すると勇都の部屋の扉を叩く音が聞こえる。
「ユウト。いいか?」
それは、エキドナの声だった…
勇都とエキドナは、階段を上がり甲板に向かおうとする。
行きながらエキドナから話を聞いた。
エクスプローラー号が止まったのは、前方に一艘の船に男が乗っていたのを見つけたからだった。
男は、エクスプローラー号に向かってしきりに何かを叫んでいるようだった。
船首には、水夫や冒険者、用心棒達が大勢集まっていた。
「おい。今どうなっている?!」
エキドナが1人の水夫を捕まえて事情を聞く。
「エキドナの姉さん。あの漁師みたいな奴、この先を進むなとずっと叫んでるんです。」
エキドナと勇都は、船首から海を見る。
「あ、あの人は…」
一艘の木の船に1人の男が立っていた。
その男の右手には、三叉の槍があった。
勇都達の乗るエクスプローラー号が、巨大なモンスター、クラーケンに襲われた時に助けてくれた漁師風の男だった。
男がクラーケンに立ち向かってくれたおかげで、エクスプローラー号は嵐の海から脱出することができた。
その男が、再び勇都達の前に現れた。
(勇都よ…聞こえるか…)
突然、サマエルが勇都に呼び掛ける。
(あいつをこの船に上げてやれ。悪い奴じゃなさそうだぞ。)
サマエルは、男を船に上げてやるように勇都に言う。
サマエルは、男の持つ武器に覚えがあった。
(あの武器の神は…確か…)
すると、サマエルが姿を変えた魔剣グランベリーに誰かが呼び掛ける。
(この感覚。覚えがある…君は、毒の女神だったかな?)
(そういうお前は、確か、雷の神トールか?)
勇都は、サマエルの言う通りにエキドナに呼び掛け漁師を船に上げる様に頼んでいた。
勇都のグランベリーと、漁師の持つ三叉の槍が光っていた…




