第9話 勇都、絶体絶命…
ゴブリン達が姿を現した。
(1、2…7匹もいる…)
勇都は、背筋に寒気を覚えた。
矢を受けて、血を吐くプリーストの体が重くのしかかる。
プリーストの目は虚ろだった。
プリーストは、多分死ぬだろうと勇都は直感した。
(やばい。このままだとゴブリン達にやられる!)
勇都の全身は、一瞬で汗びっしょりになった。
頭の中に死の文字がよぎる。
ゴブリンからは、プリーストの体で隠れていたのでまだ自分の存在はわからない。
今なら何とか全速力で逃げれば命が助かるかもしれない。
ゴブリン達が武器を持ち、小走りに迫ってきた。
(気配隠蔽!!)
勇都は、アサシンに与えられたスキルを使った。
勇都は、プリーストの男の体から離れる。
プリーストは、地面に倒れ体を痙攣させていた。
背中に受けた矢から紫に染まる。
たぶん、毒矢をプリーストは喰らったのだろうと勇都は推測した。
(すいません。命が惜しいので。逃げます!)
勇都は、上の階の階段に向かって駆け出して行った。
「ゲシャアアアッ!!」
ゴブリン達が叫び声を上げながらプリーストの体を武器で突き刺していく。
「うぐっ!!」
プリーストは、軽く叫び声を上げた。
それが彼が発した最後の声だった…
ゴブリン達がプリーストの体に群がる。
勇都は、全速力で階段を上がっていった。
(よし、何とか逃げられるかも。このまま地上まで逃げるぞ!)
その時だった。
上の階に居たはずのコウモリが勇都目掛けて飛んできた。
(うわっ?!)
勇都は、身をよじらせて回避する。
しかし、足場の悪い階段で安定しなかった。
勇都は、階段から足を踏み外してしまった。
勇都は、階段から落ち地面に尻餅を付く。
ドンッ
勇都が落ちた音にゴブリン達が反応する。
勇都は、ゴブリン達の方を見た。
プリーストの体が血に染まっていた。
動きもしない無残な姿だった。
ゴブリン達は、勇都が落ちた音の方を不思議そうに見る。
(ま、まだ気配隠蔽で気づかれていない。ゆ、ゆっくりだ。ゆっくり階段を登ろう。)
その時だった。
勇都の腕が透けて見えた。
気配隠蔽を使うと全く見えなくなる。
が、効果が切れ始めてきた。
(やばい。時間が終わってしまう…)
するとゴブリン達が指を指し喚き出した。
勇都の姿が完全に見えて騒ぎ始めた。
ゴブリン達は、武器を勇都に向けて構え始める。
勇都は、階段に行こうとするが、コウモリが飛んでいて立ち塞がっていた。
(に、逃げられない…)
勇都は、詰んだと体中の力が抜けていく感じがした。
ゴブリン達は、勇都に向かって歩き始めた…