5話 パーティ結成
双子の獣人、スーラとウーラを連れて冒険者ギルドの門をくぐる。
冒険者の男性達が美形の双子を見て、目を光らせる。
そういう男性の視線に慣れているのか双子は全く気にしていない。
三人で受付カウンターまでいくとロミンダが双子を見て、何かキースに言いたそうな顔をしている。
「ロミンダさん、この二人は森の中でオーガに襲われている時に助けてくれたんだ。冒険者ギルドに用事があるっていうから、連れてきたんだよ」
「まぁ、オーガはCランク魔獣じゃないですか。あれほど危険は避けてくださいと言ってるのに」
「オーガが風下にいることに気づかなくて……ごめんなさい」
ロミンダは「まったく、もう」といった感じで少し頬を膨らませる。その仕草が色っぽいことに、本人は全然気づいていない。
「それではキースさんは隣の解体所のカウンタ―へ行って、討伐部位と魔石をカウンターに置いてください」
「わかりました」
キースと双子が解体所のカウンタ―へ回る。そしてEランク魔獣四体の魔石と討伐部位、そしてオーガの魔石と討伐部位をカウンターに置いた。
「Eランク魔獣の魔石と討伐部位で銀貨四十枚。オーガの魔石は金貨二枚、魔石で金貨二枚。合計で金貨四枚と銀貨四十枚になります」
カウンタ―の受け皿の上に金貨四枚と銀貨四十枚が乗せられた。
さすがCランク魔獣になると引き取られる金額も上がるんだなと感心するキースだった。
そして受け皿の上にある金貨と銀貨を革袋の中へ入れる。
「これでキース、アンタの用事は済んだわよね。これからは私達の用事に付き合ってもらうわよ」
「そうですね。私達は冒険者になりたいんです。冒険者登録をお願いします」
その言葉を聞いてロミンダが微笑む。
「それではカウンターの上に置かれている水晶に手を触れてください。スキルチェックいたします」
双子のスーラとウーラは順番に水晶の上に手を置いていく。すると水晶が光り始める。
その光をロミンダが読み取って、用紙にスキルを書いていく。
「二人共、スキルは『剣士』ですね。それでは用紙を渡しますので、二人は空白欄を埋めてください」
スーラとウーラの二人は別々に用紙を受け取って、空白欄を埋めていく。
「これでいいかしら?」
「できました。よろしくお願いします」
ロミンダが用紙を受け取って、カウンターの奥へ行って、机に座って作業している。
そしてカウンターに戻ってくると銅色のカードを二人に渡す。
「これが冒険者カードになります。登録したばかりですからFランク冒険者のカードになりますね」
「へえ……冒険者はFランクから始まるんだー?」
「キース、アンタは何ランクなのよ?」
「俺は一応……Cランク」
キースがCランク冒険者と知って驚く双子。
確かにオーガと戦っている姿はCランク冒険者に見えなかっただろう。
「そっか……キースは支援魔法士だから、弱くてもランクが上なんだー」
「ウッ……」
それはわかっても言わないでほしいと思う。
食堂に溜まっていた冒険者達が立ち上がって、双子の周りを囲み始める。
双子は美少女だ。冒険者が寄ってくるのも頷ける。
「スキル『剣士』だって。俺達のパーティに入らないか?」
「ちょっと待て……その二人は俺達のパーティが狙っているんだぞ」
冒険者パーティの者達が双子をめぐって言い合いを始めた。
双子はそんな彼らを澄まし顔でみている。
「私達に声をかけても無駄よ。もうパーティを組む相手を見つけちゃったからね」
「そうね姉さん、私達を支援してくれるパーティがいいわね」
「そういうこと!」
取り囲んでいる冒険者の輪からするりと抜け出すと、キースの前に立つ双子。
「ねえ、キース、アンタはソロでしょ。それで支援できるパーティメンバーが必要なんでしょ」
「私達は支援魔法で援護してくれるメンバーが欲しいんです。気が合いますね」
「俺とパーティを組んでくれるのか?」
「「そういうこと!」」
双子達の思わぬ申し出に、驚くキースだが、本心はありがたさでいっぱいだった。
今回のオーガとの戦いでソロで冒険していく自信を失いかけていた。
双子がパーティを組んでくれれば、キースの支援魔法が役に立つ。
「いいのか? こんな弱い俺で?」
「そこは朝から基礎訓練の特訓かな。基礎は誰でも大事でしょ。自分の身を守れるぐらいには剣術も上達していないとね。私達が特別に教えてあげるわよ」
「姉さんの特訓はキツイですが、必ず身になります。頑張ってみましょう」
カウンターから外へ出て来たロミンダが双子達へ手を差し伸べる。
「実はキースさんのソロ活動は危険だと私も思っていた所だったんです。お二人がついてくれれば、キースさんの危険度も減りますし、お願いしますね」
「わかったよ。そういうことだから、キースこれからもよろしく頼むな」
「キースさん、よろしくお願いしますね」
「俺のほうこそよろしくお願いするよ」
キースと、獣人の双子スーラとウーラの三人はパーティを組むことになった。