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4話 獣人の双子

 Eランク魔獣討伐を初めて1週間が経った。

キースは順調に毎日、Eランク魔獣を十体討伐しては銀貨百枚を手にして、生活が安定してきたことを実感する。


 今日も壁門の警備兵に見送られて、デリントンの街近郊の西の森へと向かう。

そしてEランク魔獣を順調に狩っていく。


 少し慣れてきて、森の中での行動も大胆になっていたのかもしれない。

自分が風上に立って行動していることに気づかなかった。



「ブゥモォオー」



 聞こえてきたのは魔獣の突然の咆哮。

森の茂みから覗き込むと二人の獣人とCランク魔獣のオーガが一体が対峙している。

オーガは天然の剣を持って獣人二人を威嚇している。



「いくわよ。ウーラ!」


「わかりました。スーラ!」



 二人の獣人は双剣使い。四本のシミッターで、美しい連携でオーガに立ち向かっていく。

しかし、オーガの頑強な体に、シミッターは皮膚を裂くだけ。

段々とオーガのほうが押してきている。

このままでは獣人二人のほうが危ない。



「ブゥゥォオー」



 オーガが剣を袈裟切りに振り下ろす。スーラは必死でオーガの剣を受け流す。

そしてまた、オーガが大上段から剣を振り下ろす。ウーラは必死で回避する。



「このままじゃマズイわ」


「オーガを倒さないと、こっちが殺られるのよ」



 なんという強靭な筋力、なんという膂力。

オーガ一撃一撃の斬撃が重い。

二人の獣人は徐々に傷つき、体力を奪われていく。


 このままでは獣人の二人がオーガになぶり殺しに遭う。


 オーガの大上段からの振り下ろしがウーラを狙う。

なんとかウーラはオーガの剣を受け止めるが、そのまま押し切られそうになる。

ウーラがオーガと対峙している隙を狙ってスーラがシミッターで斬りつける。

オーガはウーラに攻撃するのを止め、スーラに目標を変える。


 森の茂みから覗いていたキースは二人の獣人を助けることに決めた。

そして茂みから出て、獣人達の後ろに立つ。



「茂みから見ていたが、苦戦しているようだね。俺も加勢する」


「アンタ、誰よ。このオーガは私達の獲物よ」


「スーラ、そんなこと言ってる場合じゃないでしょ。助けてもらいましょう」



 獣人二人は突然現れたキースに戸惑っている。

その間もオーガの攻撃は止まらない。

必死でオーガの攻撃を回避する獣人二人。



「俺が君達を支援する」


「何言ってんの?」


『俊敏10%アップ・膂力10%アップ』



 すかさずキースは二人の獣人に支援魔法のバフをかける。光の粒子が二人の獣人を包む。


 そしてオーガに向かってキースは吠える。



『俊敏10%ダウン、膂力10%ダウン』



 オーガに支援魔法のデバフをかける。



「なんだか体が軽くなったわ。今のうちにオーガを倒すわよ」


「オーガのほうは動きが鈍くなったみたい。今が好機かも」



 二人の獣人は四本のシミッターを使って、オーガに戦いを挑む。

四本のシミッターがオーガの体を確実に傷つけていく。

それでもオーガの強靭な筋肉を断ち切ることができない。


 キースは支援魔法のデバフを重ねがけする。



『強靭10%ダウン』



 オーガの真上から紫色の光が降りてくる。キースの支援魔法のデバフだ。

オーガは怒り狂ってキースを睨む。

しかしキースは二人の獣人の後ろにいるためオーガは手が出せない。



「ブゥゥォオー」


「どこ見てんのよ。相手は私達でしょ」


「デバフをかけられて怒っているんでしょ。今のうちに討伐しましょう」



 二人の獣人がオーガに強襲をかける。

今まで断ち斬れなかったオーガの筋肉が、シミッターによって切り刻まれる。



「ヤッター。これならイケるわ!」


「うん。そうだね!」



 獣人二人はオーガを八つ裂きにして、とうとうオーガを討伐した。

そして二人共、安堵の息をついて、キースの元へ歩いてくる。



「あんた、後ろにいると思ったら支援魔法士だったのね。なぜ支援魔法士が一人で森にいるの?」


「姉さん、何か訳があるのよ。オーガも倒したことだし、後でゆっくりと話を聞きましょう」



……姉さん……


 よく見ると2人の獣人は毛並みの色は違うが、容姿はそっくりな双子だった。かなりの美形の少女達だ。



「私は姉のスーラ、こっちは妹のウーラ。よろしくね」



 赤銀色の毛並みの獣人が姉のスーラ。

青銀色の毛並みの獣人が妹のウーラ。

二人の違いがわかるのは毛並みぐらいだ。

後は切れ長の二重に、涼しい目元、少し潤んだ瞳まで瓜二つだ。



「俺はキース……助けてくれてありがとう」


「私達も支援してもらって助かったわ。オーガって筋肉が硬いのよね」



 二人は立ったまま、両手を広げて、オーガを見て嫌な顔をする。

そんな仕草まで二人共一緒だ。


 そして、オーガの胸から魔石を抜いて、討伐部位である右手首をシミッターで斬る。

そしてキースに投げてよこした。



「本当はアンタの獲物でいいわ。だからこれはアンタにあげる。その代り、私達をデリントンの街まで連れて行ってくんないかな。私達、デリントンの街で冒険者になりたいのよ」


「そのために獣人の隠れ里から出てきたの。このまま帰れないわ」



 双子はスラリとしたスレンダーの腰に両手を当てて、キースを見る。

今日の討伐はこれで終わりとなるが、二人を放っておくわけにはいかない。

キースは双子をデリントンの冒険者ギルドまで案内することにした。



「それじゃあ、ありがたくオーガの魔石と討伐部位は貰っておくよ。デリントンの街にある冒険者ギルドまで案内すればいいんだね」


「そうしてちょうだい。助かるわ」



 姉のスーラが答える。



「よろしくお願いしますね」



 妹のウーラが少しだけ頭を会釈する。


 三人で森を出て街道を歩く。そしてデリントンの街の壁門まで着いた。

いつもの警備兵が立っている。



「今日は帰りが早いな。それも別嬪さんを二人も連れて、狩りはどうしたんだ?」



「狩りは早めに終わらせてきた。この二人はデリントンの街に冒険者ギルドに用事があるらしいんだ。通してあげてもらえないかな?」


「いいぞ。通りな。二人も冒険者になるのか? 元気で頑張んなよ」


「「ありがとう。おじさん!」」



 双子は壁門の警備兵に手を振って、キースの後ろをついてくる。

三人は冒険者ギルド、デリントン支部へと向かった。

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