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1話 追放

 ここはデリントンの街の大派閥ギルド「シュトラウス」の幹部会議室。

いつもなら呼ばれることのない大幹部達からの朝からの呼び出しに、キースは嫌な予感しかしない。


 ギルドマスターで炎剣のローランド、副マスターで賢者のハンヒェン、炎の精霊術士のアウリール、大戦斧使いのドワーフのベルド。

四大幹部が総出でキースを幹部会議室で待っていた。



「お前は解雇だ。このギルドから出ていってもらう」



 開口一番、ギルドマスターのローランドからの一言。

その言葉を聞いただけで、口の中がカラカラに渇く。しかし、このまま黙っているわけにはいかない。



「なぜですか? 俺もこのギルドに入ってから一生懸命に働いてきたつもりです!」


「そのことはわかっているさ。そんなことは関係ない。解雇になるのはお前を冒険に連れていくほうがデメリットが大きいからだ」



 副マスターの賢者のハンヒェンが冷静に言い放つ。



「キース、お前を冒険に連れていくために、お前専用の護衛が4人も必要になる。いくらお前が支援魔法使いとはいえ、これはデメリットでしかない」



 確かにキースは支援魔法使いで、他の冒険者を支援することはできるが、自分の身を守る術がない。



「それにお前の支援魔法は味方十人までしかバフをかけられない。中途半端な魔法でしかない。それもバフの効果が10%とは値が小さすぎる」



 そのことについて一番気にしているのはキースだ。自分の魔法の非力さを指摘され拳を握る。



「そういう理由じゃから、お前はもう『シュトラウス』の団員ではない。早く出ていくがよい」



 長いアゴ髭をさすりながら、ドワーフのベルドがいう。ベルドは軽蔑の眼差しをキースに向ける。



「これはもう決まっていることなのさ。そういうことだから出ていってくれ」


「俺はこれからどうやって生活していけばいいんですか? いきなり放り出されてどうすれば?」


「そうだな。互助会組織の冒険者ギルドへ行けばいい。一応、キースの冒険者ランクはCとなっているから、魔獣討伐さえ成功できれば生きていけるだろう。今夜の宿代ぐらいは餞別に出してやる」



 副マスターの賢者のハンヒェンが最後の言葉で締めくくると、革袋をキースに投げる。



「……わかりました……失礼します」



 これ以上話しても、キースが『シュトラウス』へ残れる選択肢はない。幹部達の命令は絶対だ。キースは自分の部屋にある荷物をまとめて『シュトラウス』の本部を出た。


 本部を出てから副マスターが投げた革袋の中身を覗くと金貨が3枚入っていた。

デリントンの街の中央広場近くにある安宿に入って、金貨を1枚支払う。



「これで宿泊できる日数分頼む。足りなくなったら言ってくれ。また支払うから」


「毎度あり」



 安宿の主人は愛想笑いをうかべて金貨1枚をカウンターの引き出しに閉まった。

キースの部屋は三階の角部屋。ベッドが一つと机が一つ。姿見が一つ。簡素なものだ。


 ベッドに横たわり、天井を見る。何も良いアイデアは浮かんでこない。

このまま、今日は宿にいても良かったが、ここの宿代は一日銀貨30枚必要だ。金貨1枚だと三日分しか支払っていない。すぐにでも働くことを考えないと宿から追い出される。


 キースは重い体を引きずってベッドから上半身だけ起こすと姿見が目の前にあった。

十三歳の時にコールス村から冒険者になるために、近くにあるデリントンの街まで出て来た。

そして大派閥ギルド『シュトラウス』に入団した。


 入団したての時は支援魔法士ということで、もてはやされた時期もあったが、一時もなかった。

すぐにお荷物扱いされるようになり、十五歳の成人の儀を迎えてすぐに追い出されるとは。


 姿見を見ると、このデリントンの街では珍しい風貌、黒髪、黒い瞳が映る。

まだ少年から脱していないような童顔、後五年ほど経てば、それなりの良い顔になると思うのだが。



「副マスターの言っていたように、冒険者ギルドへ行くか」



 キースは立ち上がって部屋をでる。そして宿屋を出て冒険者ギルドを目指す。

大通りに剣と槍と盾の看板がある大きな建物が冒険者ギルドのデリントン支部だ。


 門を開けて冒険者ギルドの中へ入ると、多くの冒険者がキースをチラッと見て顔を横に向ける。

冒険者ギルドに新しい顔が入ってくることはよくあることなのだろう。

キースは足早に受付のカウンタ―へ向かう。


 受付には見目麗しい受付嬢が微笑んで待っていてくれた。



「ここは冒険者ギルドです。新人登録の方ですか?」



 キースは腰のポーチから冒険者カードを出して受付嬢に渡す。すると受付嬢が口を押える。



「失礼いたしました。『シュトラウス』の方でしたか? 今日はどのようなご用件でしょうか?『シュトラウス』には一括して討伐依頼の手配書を送っているはずですが?」



 やはり理由を言わないといけないのか。

キースの胸が痛む。こんなきれいな女性に自分の非力さを知られてしまうことが嫌だった。



「……今日、来たのは『シュトラウス』を追放されたからです……仕事を、依頼をください……」



 それを聞いた受付嬢は目を丸くして、キースの冒険者カードをじーっと見る。



「何か訳アリのようですね。事情は別室でお聞きしましょう。私は受付嬢のロミンダといいます。今後はキースさんの専属アドバイザーになるかもしれませんので、名前だけ覚えておいてくださいね」


「……よろしくお願いします」



 ロミンダが前に立ち、冒険者ギルドの奥にある扉を開いて、廊下を歩いて別室へ向かう。

別室に入ったロミンダがキースにソファを座るように促す。キースは促されるままソファに座る。

その間にロミンダが紅茶を淹れてくれている。紅茶ができあがるとキースの前に紅茶を置く。



「さあ、キースさん、ご事情をお話していただけますか? 協力させていただきますよ」



 ロミンダはキースを安心させるように微笑んだ。

応援よろしくお願いいたします(*^▽^*)

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