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【書籍化】お局様!三十路OLの転職~株式会社異世界商事へようこそ~  作者: 富士とまと


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「何か、日本で売りませんか?」

「この国で売れるものなど……」

 とんっと興奮して思わず小さく机をたたいてしまう。

「ありますよっ!例えば、そう、紅茶。飲んだことのない新鮮な味の紅茶がいくつもあって。会社で休憩時間にいつも飲んでいるんですが売れると思います。あ、もちろん、日本で売るだけの生産量があればですが……」

 そういえば、日本茶も昔は貴族の飲む高級品で庶民の手には届かない品だったんだっけ。貴族じゃなくて華族だっけ、いや、武家?まぁいいや。

「ほかにも、いろいろあると思うんですえっと、……魔法のランプも素敵でした!」

「魔法のランプ?」

「あ、いえ、アラジンと魔法のランプというおとぎ話に出てくるような形の調味料入れ。日本で調味料入れとして使うにはちょっと不便な形ですが、アロマポットとか別の使い方をしてもいいと思うんです。それから、あの壁にかかっているカーテンをくるくる巻いておいておくやつ」

 カーテンは、どちらかというとくるくると巻いて上に乗っけておくスタイルでした。カーテンというか手動式ロールカーテン?そのくるくる巻いたものを、カーテンレールのあるような高さにぽコリと乗っけるものがついている。それがとてもかわいい。なんかちょこっと鞄など引っ掛けておくのにおしゃれな感じなんですよ。

「それに、雑貨屋では北欧デザインがブームになってたりするんですけど、ソファーやベッド、部屋のいたるところに少し飾られた布というか、模様のついやカバー?すごく素敵だと思いますし、家具はちょっと大きくて扱いがちょっとむつかしいかもしれませんが、小物類はどれも異国感があって、輸入雑貨の店に置いてあったら、絶対に売れます」

 あ、しまった。リュウソ殿下があっけにとられた顔をして私を見ている。

 相手は王子だよ、王子。

 もう、本当、なんで話し出したら止まらない癖が出ちゃうかな。うううう。

「それは、本当なのか……?」

 リュウソ王子が私の目をまっすぐにのぞき込む。

 イケメンに見つめられるとか、すぐに目をそらしたい衝動に駆られるんだけど、さすがに不敬になるかとぐっと耐えつつ、返事をする。

「はい」

「だが、ソータはそんなことは言っていなかった……ぞ?その、こちらからもいくつか商品見本を送ったりもしていたんだが、これがほしいという注文もなかったし」

 え?

 もしかして、真ん中の倉庫のあの大量のごちゃっと置かれた品……。よく見てないけれど、本当にいろいろな物が詰め込まれてたけど、あれ、見本だったんじゃ……。

 社長……まさかと思うけど……。自分が使えそうなもの……紅茶とかテーブルとかは使って、金銀財宝以外は売れると思ってなくて……とか……。

「社長……宗太さんは男なので、私とは見ているものが違うんだと思います」

 殿下が、意見を求めるように後ろに控えている女性を見た。

 一番初めに私を見つけて声をかけてくれた、近衛兵のミシャさんだ。私が滞在しているあいだ、この屋敷の護衛をしてくれているので、ちょこちょこ話をすることもある。

「そうですね。男性はドレスや宝石を女性に贈れば喜ぶだろうと勘違いしている人も多いかと……」

 ミシャさんの言葉を聞いて、殿下は今度は侍女の一人に意見を求める。

「そうですわね。見ているだけで楽しくてついつい時間をかけて買い物をしていると、眉を寄せる男性はいます。どれも同じだろうさっさと選べと……」

 心当たりがあるのか、他の侍女たちが小さく頷いている。

 それから、同じく心当たりがあるのか、殿下のおつきの男性がちょっと顔色を悪くした。

「日本に帰ったら、送られた品を私が確認するとお約束いたします。そして、日本で人気が出そうなものをお知らせしますので……」

 殿下が小さく頷いて、おつきの人に尋ねた。

「ソータに送っている品は誰が選んでいる?」

「は。財務大臣と補佐官数名かと」

「性別は」

「すべて男性です」

 殿下が頭を抱えた。

「なるほど。なるほど。女性の視点が、こちらもかけていたようだ。リョーコ殿……。すぐに女性に品を選び直させよう」

「あの、それでしたら、私に選ばせてもらえませんか?一度送っていただくより、直接よさそうな品物を選ばせてください。あの、日本で売るにしても、あまり高価な物だと売りにくいですし、こちらでの価格……物価も知っておきたいので。街を見て回ることはできませんか?」

 殿下がうんと頷いた。

「ソータが5年前に平和を取り戻してくれたとはいえ……街はまだ完全に安全というわけでは……」

 え?社長が平和を取り戻した?

「大切な客人にもしものことがあってはいけない……」

 殿下がどうしたものかと首をひねる。

「私が一緒に参りましょう。明るい時間であれば街もそれほど物騒ではありません。念のために少し離れて護衛を数名つけてくだされば十分だと思います」

 ミシャさんの提案に殿下が頷いた。

「では、それでよろしいか?リョーコ殿」

「はい」

 すごい。街を見られる許可がおりちゃった。

 社長が15年暮らしたこの国を見られるんだ。どんな国なのだろう。


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― 新着の感想 ―
[良い点]  ………もしや、主人公は異世界だということに気付いていない??  社長ー。 早く来てくれー。 (◎_◎;)
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