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「僕が一番知ってるはずなのに……知らないところに一人で放り出される不安は……」

 社長が苦しそうな表情を見せる。

「不安な気持ちに気が付かなくてごめんなさい。あの、僕は頼りなくて不安かもしれないですけど、それでも……言わせてください」

 社長がにこりと笑う。

「僕が一緒にいるから、大丈夫ですよ」

 ドキリ。

 社長の言葉には時々ドキドキさせられる。また、もうっ!恋人に言うようなセリフを恥ずかしげもなく口にして。

 日常生活で聞くような言葉じゃないから、違うってわかってても、聞いてる方が照れますっ。

 今、私絶対変な顔してる。恥ずかしくなってうつむくしかできない。

「あー、やっぱり僕がいても不安ですよね……どうしよう、まりにも来てもらおうかな……?」

 いつまでも下を向いたままの私に社長がおろおろし始めた。

「だ、大丈夫ですっ。社長がいれてくれれば、私、頑張れますっ!」

 ……って、何、言ってる……んだ、ろう……。

 あああああ。

「とにかく、一緒にお願いできるならば、その景山先生に日程を調整していただくのに、まず社長の予定をその確認したいんで、えーっと、いつなら大丈夫ですか?いえ、むしろ大丈夫じゃない日を教えてもらった方がいいなら、そっちの方が……」

 ごまかすように早口でまくしたてる。

「あ、予定、そうですね、予定を……その、ちょうどいいので教えておきます。えっと、カレンダーはこれを使ってるんですが」

 と、社長が壁に掛けてあったカレンダーをはずして持ってきた。

 会社で使うにはかわいいカレンダー。プラネタリウムっぽいデザインのカレンダーで、背景に星空が書いてある。

 月別で、日曜始まりのものだ。

 日付と、月の満ち欠け、それから六曜が書いてある。

「だいたい、半月に一度荷物をまとめて送っています。えーっと、いちいち連絡しなくてもその、分かりやすいように取り決めてあって……」

 ちょっと社長の目が泳いでいる。なんで?

「満月の夜に荷物を出荷します。ですから、満月の前、2~3日は倉庫の整理とか荷物の確認で少し忙しくなります」

 そういえば、面接のときに昨日は満月だったからと言っていましたが、なるほど。

 忙しかったという意味だったんですね。

 月見をして夜更かしをしたわけじゃなくて……。

「新月の日に向こうから次の注文や荷物などが届くことになっています」

 なんだかロマンチックなやり取りですねぇ。

「ですから、新月の次の日から新たに注文を受けた品を取りそろえたりと少し忙しくなります。えーっと、満月から新月まではあまり忙しくありません。注文以外の品で、新しく何か良いものは探したり、向こうから送られてきた品を日本円にしたりと、まぁ今みたいな感じです」

 あ、ちょうど今の時期ですね。なるほどなるほど。

 面接の前の日が満月だったから、あと10日くらいはのんびりモードなんですね。

 カレンダーの満月と新月の日に、社長がペンで丸をうつ。

 そうか。だから、カレンダーは月の満ち欠けがついているものを使っているのか。

 取引先がもし、現代文明を受け入れていない人たちだとしたら……時計すらないのであれば、西暦のカレンダーも使っているか怪しいですよね。日本だって、旧暦の風習が今もいろいろ残ってますし。旧正月、旧暦のお盆とか、地域によっては大切にしてますし。

 月の満ち欠けなら、どんな暦を使っていても、日程のすり合わせができるってことですね。考えましたね。

「あれ?社長、満月の商品発送の日が日曜日になってますが、出勤したほうがいいですか?」

 社長が慌てる。

「い、いえ、休んでください。むしろ、もう、絶対に来ないでいただいた方が、いいというか、えっと、あー、いや、迷惑とかじゃなくて、あの……」

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