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【書籍化】お局様!三十路OLの転職~株式会社異世界商事へようこそ~  作者: 富士とまと


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 お茶を片付けて社長の予定を確認する。

「社労士の景山先生に単発でお仕事をお願いしようと思うのですが」

 出てきた資料を社長に見せる。顧問になってもらえば月額いくらみたいな料金とは別に、1回の相談料なども記載されていた。

「はい、もちろんいいですよ」

「社長はいつならご都合よろしいですか?」

 社長が変な顔をする。

「僕も?」

「はい」

 社長、今いやそうな顔しましたね?

「すでに会社として前例事項があり、担当者も決まっていれば社長自らがということはないと思うのですが……今回は、いろいろ話を聞く中ですぐに決めていただくことはなくても、検討していただくことが出てくると思うのです。えーっと、例えば、試用期間の件とか……初めは1か月と言っていましたが、途中で3か月にと変更しましたよね?」

 社長がはっと表情を引き締める。

「そ、そうでした。はい。あの、確かに、試用期間3か月で、りょ、涼子さんが、辞めたくなったらやめていいと……」

 んー、だから、試用期間って、会社側が辞めさせることが簡単な期間だったと思うんですけど。

「試用期間の雇用保険などの扱いなもよくわかりませんし。1か月と3か月では何かいろいろ違いが出てくるかもしれないですよね?それで、また、社長の考えが変わるかもしれないですよね?」

 できれば、試用期間……は1か月に戻らないかなという気持ちだ。

 早く、正社員と胸を張って言えるようになりたい……と、思っている。

「なるほど……」

「あと、会社としなければいけないこと、経営者側にとっては不利益で、社員にとっては有益なことなど、私がいいように社長を言いくるめる可能性もあるじゃないですか。一緒に話を聞けばそういうことも」

 社長が悲しそうな顔をする。

「涼子さんがそんなことするわけないじゃないですか。でも、涼子さんは、もしかしたらこういう提案をすると僕が疑うかもしれないと僕のことを不審に思う可能性があるってことですよね。それは嫌なんで、一緒に話を聞きます」

 あれ?

 もしかして悲しそうな顔を、私がさせちゃったの?

「しゃ、社長、とにかく、その、疑うとか疑わないとかじゃなくて、景山先生と私は面識もないんで、一緒に行ってください。お願いしますね?……えーっと、一人では不安なので」

 と、本当は隠しておこうと思った本音も付け加える。

 初対面の人に会うのは不安だし緊張する。

 社会労務士の先生と何を話していいのか本当は不安。

 事前に調べはするけれど、話は聞いたから任せると言われないか不安。

 責任のあることをするのはやっぱり不安。

 ……教えたがりなんじゃない。私がいろいろ教えてほしがりなんだ。

 教えてもらうと安心する。不安が小さくなる。わからないことが不安。……だから、同じように不安にならないように……。後輩にあれこれ教えて……それが……。人によっては迷惑だとか余計なお世話だとか……嫌味に聞こえたり、知識のひけらかしに見えたり……迷惑になってただなんて……。

 前の会社の人達の、あざ笑う声が耳にこだまする。

「ごめんなさい、涼子さんっ!僕が社長なのに……なんでも涼子さんに任せちゃって、その、気が付かなくて。そうですよね、僕がもっとちゃんとしないと……」

 はっ。社長の声で現実に引き戻される。

 息苦しさが消えた。


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