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そもそも……。
「ペンや付箋、そうですね、あとはクリップ、メモ帳……少し値段がしそうなものでもホワイトボードくらいでしょうか……。値段知ってますか?」
せいぜい5万円も預かれば私の筆箱の中に入っているものや、ちょっとした事務用品を買いそろえることはできる。
……というか、落ち着いたら事務用品通販サイトで注文すればお金を握りしめてお店に行く必要もないんだけれど……。あ、そうだ。
封筒を社長に押し戻し、インターネットにつながるPCで「事務用品、カタログ」で検索。
「社長、事務用品をそろえるのはゆっくりで構いません。私が私物で使用した分は、あとで会社で同じものを返してもらえばいいです。というか、私が勝手に使った分なんで、別に返してもらわなくてもいいんですが」
「それはダメだよっ!」
「社長、ほら見てください。事務用品を通販するカタログを取り寄せますから、カタログ見ながら必要なものを注文票に書いてfaxでも注文できるんです!PCから注文しなくても、全部書いてこの番号にファックス送るだけで」
社長が微妙な顔をする。
「あ!ファックスがなかったんだ!社長、まず、消耗品いろいろ買うより、備品っ。ファックス買いましょう、いえ、ファックスも最近は高くないですから、消耗品になるのかな?それともリースにします?えーっと、リース?あ、もしかしたらコピー機がファックス対応かもしれません。ちょっと説明書はどこでしょうか?」
おかしい。私は、昭和は知らないけれど、昭和にはすでにファックスはあったんじゃなかろうか?とすると、なぜ、この会社は昭和よりも物がないんでしょう。令和だというのに……。
あ、むしろ最近はメールの普及でファックスがない会社が増えてはいますが……。
おかしいです。一つのことをしようとすると、仕事が3つに増える感じです。
とりあえず、ファイルチェックの続き。今必要そうなものにはピンク付箋。今後必要そうなものには黄色付箋。あとでしっかり目を通す必要がありそうなものには青ふせん。近所のお店開店のお知らせチラシみたいなものまで混ざってい、これは取引先なのか単にメモ程度に取ってあるのかよくわからなうものには緑付箋と、付箋で簡単に仕分けしながら見ていく。
1冊目のファイルを見おあり、とりあえず残りは後にして、社会保険労務士の景山さんに関係しそうな資料を取り出し目を通す。
おや。
社員の入社や退社の処理も社会保険労務士さんにお願いできるんだ。社会保険全般の手続きとか。
費用も、10名以下の社員の会社なら年間20万前後……。給与計算など細かい仕事まで頼むと費用がちょっと前後するんですね。
……月額にして1~2万。社長は出すつもりあるでしょうか。うーん。
単発の相談費用……1年に何度も相談しないならば単発でお願いしたほうが費用は節約できることはたしかですが。とりあえず、今回は単発でお願いして、いろいろ話を聞いて教えてもらってから社長に相談しましょうか。
ふと顔を上げると、社長がファイルを見ている。
「あ、使うんでした?どうぞ」
社長が首を横に振り、ファイルを指さした。
「付箋の色分けは理由あるの?」
「ああ、これですか。えーっと、社長は今お時間ありますか?」
ついでだ。先ほど色分けした緑の確認もしよう。いるのかゴミにしていいのかよくわからなかったチラシとか。
「ええ、もちろんです。あ、せっかくなんで、お茶でも飲みながら」
社長が立ち上がってキッチンへ移動する。
お茶ですか?




