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「えーっと、このあたりが日本でなんかもらった会社関係の書類」
ドアの横にはファイルがずらりと並んでいる。不器用だけれど丁寧に書かれた背文字が書かれている。
1年弱前の日付とともに「会社の書るい」と書かれたファイルを見つける。
書類のるいの字が。後で教えましょう。
「たぶんこの辺にあると思う。探してるものがなかったら言ってください。もしかするとどっかほかのところに紛れちゃってるかもしれないんで」
社長が出て行ってからも、他の書類の背表紙を見て関係しそうなものをピックアップしていく。日付が入っているため、ファイルを戻すときにぐちゃぐちゃにはならなそうだ。隣の棚は、日付ではなく花田硝子など会社名が入ったものが並んでいた。あ、もちろん硝子は「ガラス」って書いてありますよ。
ほかには?と思って別の壁の棚を見ると、まるっきり読めなくなった。
「日本語じゃない……」
背表紙の文字は見慣れぬ文字。アルファベットとも日本語とも遠く、アラビア語とハングルを足して2で割ったような文字が並んでいる。
「これ、どこの国の言葉なんだろう……」
「見つかりましたか?」
社長に声をかけられて、ハッと我に返る。
別に見てはダメと言われていたわけじゃないんだけれど、なぜか社長の秘密を覗き見たような気がしてドキドキする。
本当に、どこか知らない国で社長は過ごしてたんだなぁ……。
「たぶん、あると思います。今からちょっと中を見てみますので」
ファイルを数冊抱えて事務所に戻る。
パラパラとめくりながら、付箋を張り付けていく。
「あ、それも、必要ですよね?」
付箋は私物。筆箱から取り出して使った」
「ああ、そういえば、あると便利ですね。すいません、私、まだ必要なもの書き出せていなくて……」
「いえ、僕こそ全然気が付かなくて、えっと、必要だと思うもの、僕の許可はいらないです。買ってきてください」
社長が部屋を出て行って戻ってきた。手には封筒。封筒の表には「会社の必要なものを買うお金」と書いてある。
ボールペンを取り出し、必要なものを買うお金に線を引く。
そして、横に「消耗品費」と書く。
「会社に必要なものにはいろいろありますが、金額が10万円以上の高価なもの、ずっと使える机やイスなどは備品です。ペンや紙など使えばなくなるもの、短期間で使えなくなりものや安いものは消耗品です。流石に備品は私の一存では買おうとは思いませんので、これは消耗品費という名目でいいかと……」
社長がニコニコと笑う。
「へぇー。備品と消耗品って違うんだ。机とかイスはずっと使えるってわかるけど、パソコンとかは?さすがにずっとは使えないよね?」
「10万円で分かれます。それから、車もそうですが、耐用年数何年と決まっていますので、税金など計算するときにもほかの備品とは別枠になります」
「そうなのか」
社長は知らなかったことを知ると、自分に関係あろうがなかろうが、何でも嬉しくなるみたいです。
また笑顔が見られました。
「では、お預かりいたします。確認をお願いします」
お金を預かれば目の前で確認。封筒からお金をだs
「社長、さすがにこんな金額は預かれませんっ!」
明らかに10万を超えている。30万くらいあるだろうか。まだ入社数日の人に預ける金額ではない。




