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戻ってきた社長に尋ねる。
「会社を作る時に、お世話になったのは、社会労務士の景山さんと、税理士の桜田さんで間違いありませんか?」
社長がぽんっと手を打つ。
「そうそう。景山さんと桜田さん。えーっと、顧問税理士とか顧問社会労務士には会社の軌道が乗ってからでもいいですって言われて、えーっと、普段は、困ったことがあればその都度お願いするということになってて……あー、なんか紙もらったな」
紙?
「会社の守秘義務などに触れないのであれば、見せてくださいっ!」
「守秘義務?秘密は、倉庫にしかないよ。あとは別に秘密にしてない」
ん?
立ち入り禁止の倉庫に、秘密?
「倉庫は秘密なんですか?受けっとった商品が保管されてるだけではないのですか?」
まさか、盗品とかちょっとやばい品が……なんてことはないか。社長がわるいことするわけないと、思う。
むしろ、実はキディちゃんコレクターで、倉庫内自分の趣味コーナーが設置してあるとか、そっち系のかわいい秘密があったりするんじゃないかな。
もしくは、王子が取引相手にいるというのが本当で、そっちの国の秘密にふれちゃうような何かがあるとか?
あと、秘密かぁ……カルト宗教の祭壇みたいなのがあったりして……。
「ひ、秘密なんです。えっと、あの、その、怪しい物がおいてあるわけじゃないんですよ?ただちょっと、ときどき、その、えーっと、ときどきなんか、その……見ちゃいけないものが見えちゃうというか……」
は?
いや、いや、いや、それ……。
「幽霊でも見えますか?」
そっち系なの?
変なシミが天井にあるとか?
社長の顔を見る。
「い、言えません、これ以上は秘密です、秘密、あの……そ、倉庫の秘密は教えられませんけど、それ以外、会社のことも僕のこともなんでも聞いてくださいっ!」
「え?社長のことも?」
びっくりして声に出る。はっと社長が口を押えた。
「あ、聞かれて困るようなことないって意味です、あの、別に、僕のこといっぱい知ってほしいとか、そういうんじゃなくて、せ、セクハラとかじゃないですよ?」
ふふ。また言ってる。よほどまりちゃんに厳しくくぎを刺されたのかな。
あ、花田さんもセクハラやパワハラか?みたいなこと言ってたし、周りの人たちから従業員を雇うといったら、同じようにくぎを刺されまくったのかもしれないですね。
「では、社長、一つ伺ってもいいですか?社内にスマホを持ち込むのが禁止の会社はたくさんあるので不思議ではないのですが、社長はなぜスマホを使わないのですか?携帯電話すら持っていないですよね?先ほどの電場番号ですが、携帯電話を持っていれば、携帯電話の電話帳に登録しておけば電話番号を見ながらかけなくても電話ができますよ?」
社長が恥ずかしそうに顔を伏せた。
「向こうでは、スマホも携帯電話もなかったから……」
向こうって、社長が30歳までいた国の話ですよね。今時電波が届かない国なんてあるんでしょうか?それとも、情報統制が厳しくて個人では通信機器を持てないとか?
「つ、使い方が、わからない……んで……」
はい?
まさか、社長……。




