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「うーん、ここでははっきりしたことは言えませんね……少しお預かりしてもよろしいですか?機械にかけて調べさせていただきたいので」
機械?
ルーペで見て鑑定するんじゃないんだ。そうか、今は鑑定士の能力で偽物本物を見分けるだけじゃないんですねぇ。
「はい、お願いします」
軽く頭を下げると、店員さんがトレーを持って立ち上がる。
「少々お時間をいただきますので、あちらでお待ちいただけますか?」
と、コインを2つ渡された。
順番待ちの人とは別に、鑑定結果待ちの人用の待合室があった。
中には丸テーブルが4つほど。奥にはカップドリンクの自動販売機がおいてある。
「ああ、このコイン……。何を飲みますか?」
「涼子さん、僕が行きますよ。何がいいですか?」
社長がすぐに手を出してコインを受け取る。
そういえば、会社でも社長がコーヒーを入れてくれたし、女性社員に飲み物を用意させるどころか、社長自ら飲み物を用意するというのは……。対外的にはどうなんだろう。やっぱり古い考えの人もたくさんいるし……お局様は社長まで顎でこき使っているとか思われちゃうのもいやだし。
「私が取ってきますよ社長……じゃなかった、えっと、宗太さん」
祖母の形見設定なのに、社長と呼ぶ人間と一緒じゃぁ変だということで、名前で呼ぶことにしていたんでした。
これなら、従妹同士とか不自然じゃないですよね。
「あ、はい、あの」
社長が名前を呼ばれたことで固まった。ああ、私も恥ずかしいですが、呼ばれる方も恥ずかしいんですねぇ。って、不自然だから、不自然っ。怪しげな客だと思われたら、宝石強盗だとかオレオレ詐欺とかでだまし取ったとか疑いをかけられたら困りますよ。
「一緒に、取りに行きましょう」
「そうですね」
ぎくしゃくとしながら飲み物を持ってテーブルに座る。まぁ、他に誰も待合室にいないから問題ないんだけれど。
「はぁ?偽物?そんなはずないっ!」
ドンッと何かをたたく音と怒鳴り声が聞こえてきた。
「……で……な……」
接客している店員さんは落ち着いた様子で対応しているようだ。
「くそっ。もういいよっ。ほかで売るから、返せよっ」
怒鳴り声が再び聞こえ、ばたんと個室の簡易ドアを開け閉めする音が聞こえた。
待合室の前を通り過ぎたのは、30代半ばだろうか。耳に大きなピアスをいくつもつけた金髪の男だ。太い首には入れ墨も見えた。
「あっ」
ドアのガラス越しに男と目が合い、慌てて視線を外す。
こ、怖っ。
「どうしました、涼子さん?」
「あー、その、偽物だったらどうします?」
「絶対偽物じゃないです」
社長がきっぱりという。
「え?でも、数がありますし、中には、その、混じってしまうこともあるかもしれませんよ?」
社長がふっと笑う。
「日本の価値基準でお金にならないものを偽物と呼ぶことは知ってますけど……。彼らにとっては本物です。彼らにとって価値があるものを、僕に渡してくれたんです。だから、どれも本物です」
……そういう考え方もあるんだ。
「信じてるんですね、取引相手を」
「そうですね。信頼できる相手としか取引しませんし、そもそも鑑定すればすぐに本物偽物はばれますからね。偽物を渡すメリットなんて何もないでしょ?信頼を失うだけで」
まぁ、確かに。今後も取引を続けようと思うならば、なんのメリットもないですね。
「偽物……じゃないですね、えっと日本の価値基準じゃ価値がないものがいいです」
「え?」
「現物支給」
社長がぱぁっと明るい表情をする。




