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「そう、王子」

 社長が驚いている私の顔を見て、慌てて自分の口を押えた。

「あ、言っちゃダメだってまりに言われてた。き、聞かなかったことに……」

 本当の話のようだ。

 冗談かと思ったけれど、この慌てっぷりは……。

 それにしても、社長は本当に隠し事や嘘がつけない人のようです。

 大丈夫かな。騙されたりしないのかな。ちゃんと、取引相手と交渉できるのかな……。

「わかりました。何も聞いてません。取引先との交渉はすべて社長に任せます。では、仕入れの方は私が頑張ります。見本として作業着は通販いたしますが、その先取引に発展し、必要な数がわかれば、生産元へと連絡を取り話をします」

 と言ってから、出しゃばりすぎかとちょっと反省する。

「それは助かります。どうも、僕は日本の人と話をするのがあまり得意じゃなくて……まだ、その、なじめないというか……」

 長く海外で生活してるとそうなるのかもしれないですね。まりちゃんの話だと、15歳から30歳まで。人生の半分……ちょうどいろいろ社会のことを学ぶ年齢をずっと海外で過ごしてきたのであればなおさら。

 その点、私はお局様と言われるくらい経験値ありますからね。

「社長のためにがんばります」

 社長が顔を赤くする。

 ん?

 あっ!

「ま、間違えました!会社のためにがんばりますって言おうとして、私……」

 ひゃー。言い間違えた。言い間違えた。

 社長が眼鏡をはずして、袖口で額と目元をぬぐっています。

「あ、はい。い、言い間違いですよね。誰でもありますし、その、えっと……ご、ごめんなさい。ちょっと言われなれてなくて」

 耳まで真っ赤になった社長が自分の席に戻っていった。

 か、かわいい。いや、社長に対してその感想はどうかと思うんですけど。でも、あそこまでいろいろなことが隠し立てできない人って初めてで……。

「じゅ、10着ずつ注文しますね」

 必要な情報を打ち込む。

 会社名、会社の住所と電話番号……。もちろん、まだ覚えていないのでしっかりメモをして電話機の横に張り付けました。社長の名前も書いてあります。栗川宗太。さすがに社長の名前は覚えましたが、漢字はまだ自信を持って書けないのでメモしました。

 電話だけなら「社長いる?」とかかってきても「栗川は今席をはずしております」とすぐに言えますよ?

 社外の人には社長といえども呼び捨て苗字で対応しなくちゃいけないのは常識ですから。

 それから、受け取りは平日の午前指定でいいですかね。支払いは……。

「社長、合計金額が高額で、代金引換は無理のようです。振り込みか、クレジット決済になりますが……」

「あ、じゃぁ振り込みで。振り込んでくるんで、振込先教えてください」

「はい分かりました」

 それから振り込みに必要な情報を入力していく。

「社長、メールアドレスの入力が必要なのですが、会社でアドレスは取ってありますか?それとも、社長個人のメールアドレスを入力しますか?」

 社長が首を傾げた。

「メールは使えないです」

 ……はい?

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