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 出勤しました。

 ただいま、午前8時40分。9時からが勤務時間なので、10分前には到着していないといけないと思い、道の混雑具合もつかめないので少し早めに出たらついたのが今です。

 誰も、来てない……って、誰もって、社長しかいない会社ですが。話によれば、まりちゃんと、もう一人、は月に1~2回手伝いに来るだけだそうで。

 ビルの入り口のドアには鍵がかかってる。

 うーん。

「え?あれ?涼子さん早い。おはようございます。今日からよろしくお願いします」

 社長が現れた。

 黒いTシャツに、黒のジーパン姿だ。

「おはようございます。今日からよろしくお願いします」

 相変わらず、社長は丁寧に頭を下げる。私もつられて、いつもより深くお辞儀をする。

「もっと、楽な服装でいいよ」

 昨日は面接だったから、上下リクルートスーツ。紺の細いストライプのブラウスとストッキングにパンプス。髪の毛は後ろでかっちり一つ結びで、まえがみも上げてピンでとめていた。眼鏡も銀縁のちょっと高い余所行き用。

 今日は、グレーのパンツスーツ。スーツの中は襟なしシャツだし、ストッキングでなくナイロン靴下とローファー。髪型は同じだけれど、眼鏡のフレームは少しブルーが入った日常使いのもの。

「十分楽な服装ですよ?」

「え?」

「え?」

 驚く社長の顔に驚く。

 パンプスじゃないだけで相当、楽。

 スカートじゃないだけで、相当、楽。

 ストッキング履かなくていいだけで、相当、楽。

 社長が自分の服を見た。

「こういうの、なんていうの?」

「Tシャツとジーパンですね」

「あ、うん。そうでなくて、こういう服装は楽な服装って言わなくて、なんていうの?」

 ちょっと首をかしげる。

「ラフな格好?」

「そう、涼子さんラフな格好でいいですよ。社長の僕がこんなんですから」

 ニコニコと笑う社長。

 服装へのこだわりがないだけだったか。昨日のサイズが合っていないスーツにスニーカー。

 社長、仮にも会社経営者ということもあります。今後、会社を大きくしていくおつもりならば、服装に関して一つよろしいでしょうか。……と、言いたいのをぐっと我慢する。

「服装が自由というのはわかりました。私はこれで大丈夫です。むしろ、仕事とプライベートの切り替えが難しくなるので、あまりラフな服装は好みません」

「あ?ああ、なるほど、切り替え、気持ちの……あ、だったら、制服とかあったほうが気持ちが切り替わりますか?必要なら用意します。あの、着たい制服があれば教えてください。探して準備します。僕も制服作ったほうがいいですかね?」

 社長の制服?

「倉庫の荷物整理など頻繁に行うようであれば、制服ではなく作業服があればいいかもしれませんね。私も倉庫作業を手伝うのであれば、ジャケット脱いで作業着を羽織れると服が汚れなくて助かります」

「ああ、なるほど!作業着!そっか!それだ!」

 社長が嬉しそうな顔をする。

「おっと、まずは入って入って。ほらこれ、買ってきたんだ」

 社長が手に抱えていたのはタイムカードの機械。ずいぶん旧式の紙を入れて時間を刻印するタイプのものだ。

 最近はカードをかざしてPCと連動して記録をするものやスマホを使たものなど集計が便利なものもいろいろあるのに……って、スマホ持ち込み禁止の会社でしたね。

 社長がビルのドアのカギを開けて階段を上がっていく。

「あ、そうだ。鍵を渡しておきます。さっきのドアのかぎがこれで、こっちのが倉庫のドアのかぎ。えーっと、倉庫の中の扉3つのカギは僕しか持ってないんで、荷物の出し入れのときは僕が必ず一緒に行います」

 防犯上かな?

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