異形
また時間が空いたが思い出す事に時間がかかる場合もある。
御容赦頂きたい。
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よく人が死ぬ場所や凄惨な事件や事故が起きた場所は、何だか空気が重いと感じたことはなかろうか?
かつて殺人事件が起きた家、沢山の車が事故を起こし続けているトンネル、戦場、そして病院.......。
そう、病院と言えばそのタイプによるが沢山の人が毎月亡くなっている場所である。
故に下手な場所よりも悪い気や霊なんかが溜まりやすい場所だと私は考えている。
今回も職場での体験を少し書いてみる。
あれは私が病院の宿直室に泊まっていた時のこと。
耳元に置いた院内用の携帯が鳴り響き私を眠りから叩き起した。
「はいもしもし山田です」
「もしもしこちら救急室です!さきほど使用した呼吸器が外れたので回収して貰えませんか?」
「承りました!すぐに向かいますね」
宿直室を出ると深夜なのもあって通路は薄暗く、職員しか通らない通路は明かりが落としてあった。
明かりの消えた病院はやはり何も無くても怖いものがあり、少し小走りに救急室に向かった。
中に入ると暗い通路とは一転、明るい緊急室の中は沢山のベッドが壁際に並べられ中央の職員センターから患者様の状態を見やすいようになっている。
そんな中、夜中にも関わらず寝ていない患者が何人もいる前を通り過ぎる時、初老の男性にそこのお兄さんと声をかけられた。
「はい!どおされました?」
「看護師さんを呼んでくれんかね?隣の人がずっと看護師さんを呼んででおるじゃろう?煩くて眠れんのよ?」
お爺さんがカーテンで仕切られた隣のベッドを指さして疲れたようにそう言った。
隣のベッドを見れば空床で明かりも落ちている。
もしや反対のベッドかなと思い、そちらも確認するがやはり空床だった。
「今すぐに看護師さんを呼んできますね?少しお待ち下さい!」
正直、こんな事はテレビで言ってるような空想の事のように思っていたが、いざ現実で相対するとやはり眠気も吹き飛ぶほどの衝撃だった。
「すみません、連絡頂いた山田です!呼吸器を回収していきますね?」
「あ、はーい、ありがとうございます」
「お疲れ様でした、.......すみませんあちらの患者様が看護師さんを呼んでくれと仰られてまして.......」
「あら?ありがとうございます」
そう言うと看護師さんは患者の側まで小走りで行ってしまった。
ふと其方を目に力を入れて見やるとカーテンの仕切りの向こうに僅かに黒い影の頭が見えた。
だがまずは仕事と思い呼吸器を回収し、先程の患者の前を通り過ぎて隣の空床を目に力を入れて見やると、カーテンのすぐ側に黒い影がのっそりと立っていた。
それがまだ黒い影にしか見えない俺は何となく人かと思ったが、よく見ればその背丈は2メートル程はあり、まるでカーテンの上から先程のお爺さんを覗いているようだった。
人.......と言うにはオドロオドロしいその姿はココで亡くなった患者様の集まりが為した異形だったのかもしれない。
患者の袖引きと言う言葉が看護師の中で言われていたが、患者様が近くの患者様を連れて散歩に行くように、誰かが亡くなられた際は近くの患者様がよく亡くなられるらしい。
あの黒い影は看護師を呼んでいたらしいが、それは助けを呼ぶ為に呼んでいたのだろうか?それとも.......看護師を.......?
だがその後、お爺さんも問題なく退院して行った。
ココは急性期病院。
人死になど日常茶飯事であり、だが同時にそう簡単には逝かせない為のエキスパートが集まる場所だ。
数多の死者の袖引きよりも数多の職員が生かそうと引く力の方が強いのは当然であろう。
今日も救急室は沢山の患者がやって来る。
バカ騒ぎして酔い過ぎた患者が来た際には、是非とも一声掛けてやって脅かして欲しいものだ。
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ついでではありますが何か占いなどして欲しい方は、感想などで出来る範囲で細かい情報を乗せていただけたら、それに対して占って結果を返答したいと思います。
軽い相談とかお待ちしております笑