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バラバラ欠陥じゃーにー  作者: tomatoma
一章 生首とあまのじゃくと旅のはじまり
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トーク集2.トリムとシスティア

おまけ2

17話の内緒話の下り。リア主観なのでどうしても入れられなかった部分です。

 システィア宅一晩目。リアとレティアナが体を拭きに席を外した後のシスティアとトリムの会話。


「可愛らしくて優しい子ですね」


「どうだかな。随分とひねくれているようだが」


「あら、素直になれないところも可愛らしいじゃないですか」


「どこがだ……それについては厄介以外の何ものでもない。扱いがどうにも分からない」


「そうは見えませんけれど。とても仲がよろしいように思いますわ」


「節穴なのか?」


「いやですわ、見る目は自信がありますのに。少なくともリアさんは心を砕いていらっしゃいますよ。けれどトリムさまが手探りの状態とおっしゃるなら、もしかして、出会われてそれほど時間が経っていらっしゃらないのですか?」


「ああ、三日……実質二日か……もっと長く感じるが」


「密度の濃い時間というわけですね」


「余計なことばかり引き起こすから余分な手間を取らされるだけだ」


「まあ、そんなことおっしゃらずに。たった三日でこのご様子というのはとても相性がいいのですから。分からないことも時間が解消してくれるはずですよ。これから共に行動をなさる予定なのでしょう? 多くの言葉を交わし、尊重し合えば分かり合えるものです」


「…………」


「ふふ、素直になれないのはお互い様、ですか?」


「……お前は、お前達はどうなんだ。随分とよそよそしく感じる」


 返事をせず話題を逸らしたトリムの言葉にシスティアは微笑み、僅かに視線を下げて寂しげな表情になる。


「そう、ですね……レティアナはとても優しい子に育ってくれました。優しすぎるほどに。わたくしは何一つとして母親らしいことをできないまま、彼女を苦しみの中に捕らえてさえいたのに、わたくしのことを母と呼び、慕い、尊敬までしてくれています。レティアナの中の母親と違って……わたくしは……とても独善的で身勝手な人間ですの」


「人とは本来そういうものだろう。あのような……いや、自己犠牲で得られるものなど所詮些事だ」


「献身を全て肯定はいたしませんが、己より他者のために尽くしたいという心は価値のあるものですわ」


「くだらん。それについて論じるつもりもない」


「そうですわね……。正直なところ、わたくしはレティアナが尊敬する母という期待に応えられる自信がございません。彼女の方がよほど、よほど高潔な人間なのです。レティアナの父がそうであったように……。思えば、リアさんがどこか彼に似ているのも、慕われる一助になっているのかもしれません。

 レティアナは自分を語らない子です。気を遣っているのもあるのでしょうし、わたくし達にはまだまだ時間が足りません。これから沢山話して、埋め合わせて、分かり合えるよう努力するつもりですわ」


「そうか。あの娘は頭も良く優秀なようだから、リアと違って苦労はしないだろうな」


「そう言っていただけて嬉しいですわ。ですが、手のかかる子も可愛いものですよ」


「…………」


「あらあら、だんまりですか?」


 システィアはしばらくころころと笑い、そしてふと、真剣な表情で声を落とす。


「……ところで、トリムさまのことをお伺いしてもよろしいですか。その、お体のこと」


「リアといい娘といい何も聞かず受け入れるものだから、それほど特異なことでもないのかと思っていた」


「まさか。若い方は柔軟性がありますから……」


「物は言いようだな」


 くすりと笑みをこぼし、システィアは了承を得てトリムに僅かに触れる。


「……望まれた境遇ではございませんよね?」


「無論だ。誰が好き好んでこんな不都合な姿になるか」


「時を止める魔術とも違うのですね、このような高位で複雑なものはわたくしの知る禁術にもございません。これほど悪意ある魔術を、一体、誰が、どうして……わたくしも魔術師の端くれ、畑違いは否めませんが、多少なりともできることがあればご助力させてください」


「現時点では不要だ。魔術(これ)をかけた者も、解く術も分かっている。あとは体を探せばいいだけだが、俺以上に分かるものもおるまい。まあ必要になれば、利用させてもらおう」


「さようでございますか……お力になれず、不甲斐ないばかり。――トリムさまは、その特異な魔術の詳細をご存知なのですね……差し支えなければ、その魔術をかけた者のことを教えていただけませんか?」


「知ってどうする。無用な情報だ」


「私達の知識とはかけ離れた魔術……悪意ある、状況……わたくし達に、害をなした者達と関連性があるならば……」


 表情を消したシスティアの周囲には、凍てつくほど冷えた魔力の揺らめきが渦巻く。トリムはそれに対してふんと鼻を鳴らした。


「紙一重か。生まれながらに聖者というわけではなさそうだ」


「……申し訳、ございません。回復したばかりで感情の操作が上手くいかないようですわ」


「いや、人らしいさ。残念だが、お前達の求めるものではないだろう。当人には悪意ですらない」


「そう、なのですね。何か断言されるほどの理由がございますのね。個人、ということであれば確かに異なるようですし……トリムさまのよく知る人物ということ……」


「無用と言ったはずだが」


「失礼いたしました。いずれにせよ、レティアナを助けていただいて、わたくしはあなた方に心から感謝しているのです。さしたる助けにはならないかもしれませんが、必要時はいつでも申し付けてくださいませ」

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