トーク集1.リアとトリム
おまけ1
3話の後あたりの会話です。持ち方の話。
リアとトリムの契約後、黒扉の間にて。
「はい、よろしくお願いします…………えとー」
リアは膝の上で向かいあう生首に両手を差し出して丸く包むように手を動かして止まる。
「何をしている」
「えーと、私はあなたを持って運べばいいんですよね?」
「不本意ながらな」
「不本意なんだ。では、どう持ったらいいです?」
「俺の視界を遮らなければリアの持ちやすいようにすればいい」
「すいません、なにぶん人の頭部を持ったことがないもので、ちょっと色々試してみてもいいでしょうか」
「ああ」
とりあえずトリムの顔を正面へと向きを変える。そして両手で挟んで持ち上げ、座ったまま上半身だけを回してロボットのように左右に一度ずつ動いて正面で止まる。
「……………………」
「…………このまま行くつもりか?」
「どう思います?」
「非常に不安だな」
「私もですね。そもそも両手が塞がるしあなたの長い髪で少し滑るしていうか邪魔だし何で男のくせにこんな綺麗な髪してるんですか自慢ですかケア方法を教えてください」
「人の体は質の良い食と睡眠で培われる。手遅れだ」
「おぅ……思いの外真面目な答えが返ってきた……てか手遅れて。髪紐がないのでこのまま行くしかないですけど、手に入ったら結んでいいですか」
「構わん」
「と、なると」
リアは逡巡した後、恐る恐る左手をトリムの下に、右手を上に乗せて固定し、立ち上がった。左手にはおよそ人の体でない硬さが伝わってくることに安堵した。ふにゃふにゃしていたら嫌悪感どうしようかと。
「こうかな?」
「まあ、俺はいいが、どちらにせよ両手は塞がっているな」
「うーん、そうですねぇ、けど喉元とか持ったら苦しくないですか?」
「いいや」
「……よく分からん……けど生首の時点で理解の範疇は超えてました。ならこう持つのが一番安定感はありますね。右手も空くし」
トリムの後頭部を左胸につけ、左腕でヘッドロックのように首と頭を固定する。
「そうだな。これならば万が一何かあってもリアの心臓は守れる」
「いや、心臓以外も守ってくださいよ。私はトリムさんと違って体の一部分だけになったら死んじゃう人ですからね?」
「何を言っている、誰でも死ぬ」
「己の姿は……」
「だから体を取り戻すと言っているだろうが。俺は五体満足でただ切り離されているだけだ」
「そ、そう、でしたね」
「分かっていないな」
「う……差し支えあります?」
「……別に、いい。興味がないんだな」
「興味ないというか、理解できないと思うというか、魔術系はとんと疎いものでして」
「ああ、馬鹿なのか」
「辛辣ぅ」
短いのでもうひとつ上げます。




