3話 夏イベント
「だぁー、また大破かー。」
下着姿の女はそう言い天を仰いだ。
いや、正確には天井を見上げた。
そして、女の子と目が合う。
「……んふー、かわええなぁ……」
もちろん、天井に可愛い女の子が張り付いている訳ではなく、美少女ポスターである。
「はー、上手くいかんなあ……」
回転椅子から立ち、ベットにダイブする。
アニメキャラがプリントされた抱き枕に抱きつき、顔を埋めた真奈は空腹感を感じた。
「そういや、昼ごはん食べてなかった……」
時計を見ると午後の三時。
昼ごはんの時間はゆうに過ぎている。
真奈は重い足を引きずって階段を降り一階へと向かった。
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簡単な登場人物紹介
真奈……異世界の魔法使い。巨乳で露出魔。趣味はアニメ鑑賞。
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一階に降りると、リビングのテレビは健太と想花が占領していた。
ソファーも使われており、仕方なく食卓の椅子に座る。
ちょうど美咲が台所におり、おはようと声をかけてきた。
食卓の上には一人分の昼ごはんがラップに包まれて置かれている。
真奈が気がつかなかっただけで、おそらく昼飯時に呼んでくれていたのだろう、しかし真奈が降りてこなかったのでこうして残しておいてくれているのだ。
真奈は少し申し訳なく思う。しかし、何時もの事なので慣れてしまっていた。
「あー、ごめん。いただきます。」
「ごめんって思うなら降りてきてほしいな。」
「気をつけます。……お、美味い。」
何気なくテレビを見る。
健太と想花が仲良く見ているのは野球だろうか。あまり興味はない。
それよりも、それを見る二人の様子が気になる。
随分とくっ付いて、仲良さそうに見ている二人は、兄弟のように見えなくもない。しかし、想花の方が健太に抱く気持ちは兄を慕うものではない。
そして、真奈は後ろを見る。
そこには、台所を片付けながらも携帯電話の方をチラチラと見ている美咲の姿があった。
「………まあ、いっか。」
何故か疎外感を感じてしまう。
美咲や悠馬は外に出る事が多く、健太もそれなりに活動的だ。想花は部屋にこもる事も多いが、結構な時間を健太と過ごす。
しかし真奈は、ほぼ一日中部屋にこもってゲームに興じたり、アニメを見たりしてるわけで。
「なんか寂しい……」
「何が?」
「いや、こっちの話。そういえば悠馬は何処いってんの?」
「何処だっけな……あ、免許取りに行ってたはずだよ。」
分かりやすく覚えてないふりをする美咲を見て、真奈は苦笑いを隠せない。
こうもまあ、典型的なツンデレなんて見ないなと。
そういえば、あのツンデレキャラがヒロインの新作が出ていたな。
「そうならさ、悠馬に◯◯っていうマンガの新刊買ってきてって言っといて。」
「もう、自分で買ってきたら?」
「いやー、今忙しくて……」
真奈の頭の中は、ゲームの夏イベで一杯だ。
「たまには家出たら?」
「……涼しくなったら。」
まあいいけど、と言って美咲は片付けに戻る。
無理に連れ出そうとはしない所が真奈は好きだ。
逆に悠馬は事あるごとに連れ出そうとする。フットワークが軽すぎてしょっちゅう外出する悠馬は面倒い。
ソファーの方からは凸凹コンビが楽しそう?にテレビを見ている。
あの二人は自分の好きな事に夢中で特に干渉してこない。
居心地のいいこの場所が真奈はたまらなく好きなのだ。
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「さあて、続きやろっと。……やっぱり編成が重いのかなあ。半年じゃレベルも装備も足りない……」
真奈は再びパソコンの前に張り付く。攻略サイトと睨めっこしながら、編成を弄り、戦闘が始まると祈る。
なんだか前の世界の生活と似通ったものを感じる。
魔法もこんな感じだ。効率のいい呪文を覚え、改良し、そして達成するとまた次のステージに向けて思考を巡らせるのだ。
「……難度、落とすか……」
……諦めも肝心である。
丙で妥協