幼稚園・年少生/二学期中編
短いので、後程追加する予定です。
その日の夜また和幸が現れた。
最近顔を見せる頻度が多い気がする。何かあったのだろうかと思った。
「和幸、最近よく顔を出すけど、そっちでなにかあったのか?」
「いや、別に・・・・・絶望的なトラブルが継続していること以外、特に変わったことはないよ。」
「絶望的って・・・・おいおい・・・。」
「だってさ、折角天皇家傍系の男系男子にうまれたのに・・・・子どもをつくれるかも怪しい状態なんだよ。結婚も危ういし・・・・。」
「別段お前が、天皇になるわけじゃあるまい。あくまでうちは傍系だ。富田の名前であるいじょう臣下だぞ?」
「まあね。ただ、それを利用して中国への抵抗運動の旗頭にされる運命もあったからさ。それはそうと、じいちゃんは黒賀衆って知ってる?」
「黒賀衆?う~ん・・・。たしか幕末に藩内を荒らしまわった賊だって話は聞いたことはあるが・・・・。」
「ひどい誤解だな・・・・。こっちじゃ富田家が存続できたのも黒賀衆あってこそだよ。」
そして和幸はいつものように黒賀衆の歴史を話しはじめた。
黒賀衆の歴史は古い。もともと高志の国として北陸が呼ばれていた頃に源流は遡ることになる。
もともとは国賀衆と書き、国に参加する議員を意味した。
それが黒羅とよばれた大陸側の都市が漢民族の国家に攻め滅ぼされ、そこの議員や一族が白羅と当時呼ばれた越中の都市へ避難してきたときに、黒羅の国賀衆と白羅の国賀衆を区別する意味で黒羅の国賀衆を黒賀衆とよんだのが始まりである。
黒羅は鍛冶が盛んな土地で、技術力が倭国を構成した十二羅都市で一番高いとされた。その関係で鉄鉱山が多かった越中の白羅と関係が深かった。
移住後、黒羅の民は自然と鍛冶や技術を司る立場へ移行する。
しらすきのえの戦いで敗北し大陸領土を倭国が完全に失うまでこれは続いたが、物部氏とつながりが深かったため、その没落に巻き込まれることになる。
また越中の地は災害が続いたことから荒廃が続き、黒賀衆は山手にうつすむことになる。
日下部氏が朝倉の地に移って、朝倉を名乗る平安の時代に黒賀衆と朝倉氏は手を結び、北陸地方の産業の興隆が始まった。
鎌倉時代に下り、黒賀衆に浄土真宗が広まる。
そして、室町時代になり、黒賀衆が手を貸す形で加賀の一向一揆が発生する。
北陸地方を領有していた朝倉家はこのことに苦慮することになる。
解決のために、伏木の領主を務めていた朝倉氏分家の富田家に交渉が委ねられる。
結果的に、加賀と越中の采配については黒賀衆に委ねる代わりに武器を供給するという交渉結果がまとまる。
そして黒賀衆は日本全国にその技術力を生かして刀剣の販売のみならず、室町後期に持ち込まれた銃砲の販売を広めていくことになる。
富田家も黒賀衆の一人として意思決定機関の八日会の皆朱として参加していたが、一方で、鉄砲の利権に関連して、尾張の織田家と堺を介してつながることになる。
そのため、朝倉家本家においては親織田派として、同盟関係にある浅井家と織田家の同盟を仲介し、将来的には朝倉家を織田家に組み込むという計画を立てていた。
朝倉義景の暴走が始まるまでそれはうまく進んでいた。しかし、朝倉家の家臣団に参画していた大野家がこれとは逆の行動をとりはじめたことより計画が狂い始める。
朝倉義景が織田の下へとつく策を大野家の建策により否定。最初に富田屋による鉄砲の織田家への引渡しを妨害される。これが結果的に織田家の朝倉攻め誘発することに成り、浅井ともども朝倉氏が滅ぶ原因となる。
織田家への釈明のために出した黒賀衆の使いは悉く誅殺されたが多くは大野家の配下に殺された。
大野家は朝倉本家が一乗谷で滅亡するのに巻き込まれて没落。
その後、佐々成正に加賀攻めを織田信長が命じて、黒賀衆はこれに抵抗するも、敗退。本拠地である守山城の落城により、下野することになる。
その後、黒賀衆は羽柴秀吉の佐々家の本拠である富山攻めに協力。この関係で、富田家も前田家にとり立てられるこことなる。一方で、このときに前田家と黒賀衆との間で取り決めがなされて、越中と加賀、能登の浄土真宗の土地においては年貢を取らず、代わりに鉄砲といざというときの戦力の提供をおこない、また仲介者である富田家は貿易で得た金子を前田家に毎年納めることが決められた。
しかし、朝倉氏家臣団でライバルだった大野家も前田家に登用され、これが後々の森家との権力闘争で富田家ともども黒賀衆が衰退する原因となる。また同時期に高山右近の関係で辻家も登用されている。
辻家は隠れキリシタンだったが、割合前田家の治世下では黙認されていた。このため浄土真宗の黒賀衆と衝突することがままあった。
一方で、前田家が徳川家から命令されて寺受けの制度を作った際に、身分により宗派をわけるやり方を行った。これは織田家時代からの古参家臣団が主導したために、武士とそれに類する商人は禅宗または法華宗、職人や農民は浄土真宗というようにされた。
その関係で辻家は曹洞宗にされたが実質的にキリスト教は棄教していなかった。
この当時、辻家と古参家臣団との間にはかなり強い亀裂があり、森家とも対立していた。
幕末にはいり、富田家を取り潰した関係で、加賀藩・富山藩の財政は逼迫し、結果的に、その当時筆頭家老であった森家は年貢を取り立てる方策に出る。
そのことに対し、黒賀衆は取り決めへの違反を言い立てて抵抗し、加賀藩・富山藩の内部で内乱状態に突入する。黒賀衆と深刻に対立していた辻家は森家につく。
戦力的には黒賀衆が勝っていたが、途中で黒賀衆についていた大野家が裏切り、日本各地にあった富田家の横町屋を森家に接収させるという行動に出る。これにより補給路と販路を断たれた黒賀衆と森家はにらみ合いになり、膠着状態が続く。
そのなか、藩内では事態の打開と、経済の建て直しのために、関係が深かった蝦夷地(今の北海道)の松前藩の開拓話にのることになり、松前藩からの借り入れ一時金を得て一服付くことになる。これが函館の開拓につながるわけだ。
結局、黒賀衆と森家・大野家・辻家の対立は明治維新の混乱の中うやむやになる。
廃刀令が明治政府太政官府から出された結果、黒賀衆は解散することになる。しかし、GHQが農地解放を命令するまで、黒賀衆は実質的に石川県と富山県の農地を管理する寺社組織の荘園組織として存続していた。
細々とながら富田家が存続できたのも黒賀衆の支援があったからだというのは言うまでもないわけだ。
「・・・・とまあ、うちの富田家もあるいみ黒賀衆ともいえなくもないわけだ。」
それを聞かされて正鳴はもしやと思った。
「富田家が嫌われる原因はそこにあるってことか?」
「嫌われえているというより、関わりたくないって思っている人がおおいのかもね。黒賀衆のほかの家には十分迷惑かけたでしょ?とくにじいちゃんは借金の踏み倒しとかでさ。森家の差し金だったとはいえね。」
それを言われると正鳴としてはぐうの音も出ない。事業や商売であがいていたときに回りにお金を借りて踏み倒したことが何度かあった。
「ただまあ・・富田家の販売網を奪った大野家のこともあるからなぁ。それがなければこっちの世界でも富田家は貿易商社として存続できたはずなんだよ。大野家は直裁的に金を返せといわれるのがこわいらしいから。一乗谷で没落した大野家をなんだかんだで支援したのに、また裏切られたわけだからね。」
「裏切られたほうより、裏切ったほうが怖がってるのがまた面倒だな。」
「許す段階はすぎちゃってるね。だからか神として一族郎党に対して祟りはおこなっているよ。条理のシステム的な意味と社会的な意味においてね。実直だった森家が変質した理由も大野家が原因だからね。」
そこまでいわれてふと正鳴は気になった。
「大野家ってそっちだとどうなっているか?確か福井県の大店だった覚えがあるが・・・・。」
和幸は説明してくれた。
福井県で興隆している大野家は高岡市の大野屋を本家とする系譜だ。しかし経済的には福井の大野のほうが大きくなっている。もちろんそれは横町屋になるまえの朝倉氏直下の富田屋の時代に本拠を置いていた場所だからだ。それを幕末煮に大野家が接収したのが大きい。
福井というより今は京都の舞鶴の富田家の拠点は物資集積場でもあり、大陸との貿易拠点だった。
徳川幕府親藩の松平家の領藩だったことも影響がある。
富田家は徳川幕府にも金子を納めて海外との貿易を非公式ながら黙認させていた。それが大野家や森家により幕府親藩の場所で騒ぎが起こり、信用をなくす結果となった。
富田家の縁戚である神保氏が徳川における旗本だったので徳川幕府との窓口になっていた。
止めが、幕府が赤字の領地で手放したがっていた直轄地の高山の富山藩への割譲話がなくなった件が幕府にしられたことである。
前田家側では、富田家が勝手に進めたことで知らなかったと白を切る結果になったわけだ。
結果的に海外との貿易は幕府から認可が消されることとなり、舞鶴は一時荒廃しかけることなる。
それをどうにか大野家は富田家から取り上げた財産で切る抜け、いまの地位を得たわけだ。
「大野家は味方の振りをして背中から斬り突けることを繰り返しやることで、他者の成功を奪って興隆してきた家だ。もともと武家であることに誇りをもっていた森家と違って筋を全く通さず、裏切るだけの家だから厄介このうえなしだよ。」
正鳴としては敵が多いことにため息をつかざるを得ない。
「大野家もそしたらそっちだと中華人民共和国との窓口になってるわけか?」
和幸はうなづく。
「そうだよ。福井の大野屋が直接的に貿易を行っているから。辻家のほうと直接のと合わせて三つの窓口が、森家にはあることになるね。大野家も李家との交易関係があるから、違法薬物の取引にかかわっているね。漁船をつかった北朝鮮との貿易が主だけどね。」
薬物関係で暴力団に大野家がそれなりに顔が利くらしい。
「辻家は共産主義に基づいたイデオロギー的なテロ集団をつくっているが、大野家は任侠的な意味での犯罪組織運営している。だから森家はそれをうまいことつかいわけてるわけだ。場合によっては二つの家が協力している事もままあるけどね。あと大野の名前を出さずに母方や婿入り先の名前などで動いている大野家の人物がいたら要注意だよ。何かしこんでいる最中だからね。」
正鳴はなんだと思った。
「まあ例えば、高岡市議会の議員になってる大野家の人間が居て、障害者年金とかで生活している富田家の人間が高岡に居たとする。そうすると、その大野家の人間は障害者認定の取り消しを市の職員に求めるとかを仕込んだりするだろうね。それで森家に恩を売って利権をもらうとかね。この場合調査対象にして、書類の不備とか適当な理由付けをして継続を拒否させたりが多いかな。」
ずいぶん具体的なことを言ってるなと思った。
「今後の行動予測はだいたいつくんだよね。森家のほうはほうはで、文部科学省経由で厚生労働省に圧力をかけて、その障害者の所属する慈善団体の認定を取り消させるとかね。もちろんこれは富田家に障害者が居たという仮定でのはなしだけどね。森家の締め付けは直接のみならず、大野家を介して間接的にも行われるわけだよ。」
そしてそこに辻家のことを和幸は付け加えた。
「辻家がそこにさらに組織的で直接的な流言蜚語や付きまといなどの嫌がらせを行うわけだよ。で、警察に手を回して、被害者が訴えても頭の病気の妄想だからと受理しないように森家と辻家が手をまわしておくとかね。」
個人を破滅させるには十分すぎる陣容である。
「これは一つの例だけど、大体、森家が国レベルの嫌がらせで、大野家が自治体レベル、辻家が個人レベルであることが多いね。森家のレベルでは大義名分が必要だけどね。まあその理由付けもでっち上げさせるから大抵は通るわけだよ。」
和幸が首を振る。
「いまこっちの富田家はそういった連携された締め付けを受け続けているわけだよ。正しいことも正面切っていえないのは凄く苦しく、そして悔しい。もちろん連中には神の祟りを受けてもらう。けどそれでも日本が中国に占領されるのを阻止できるかは微妙な線だよ。これが絶望的な状況が続いているという現状だよ。」
ふっと和幸がため息をついた。
「さて・・・・今日はどうにか時間があるから、地球人類というか太陽系の人類が、太陽系を離れると死んでしまうことについて説明しておこうと思う。」
和幸のその言葉に正鳴は繭を顰めた。
「人類が地球を離れて別宇宙に行くことが出来ない?それは・・・。」
和幸は沈痛な顔をした。
「そのことは一部の連中は奴隷の首輪と呼んでいる。が、それは当然のごとく正確ではない。」
和幸によると、本来の人類は空間情報システムによる思考などのサポートをうけていない状態で生きることができたそうだ。
しかし、遺伝記憶を改変し、精神構造を破壊する特殊なウィルスを反政府ゲリラが使用した。
これに対し、異世界間国家の太陽系管理組織は人類を滅亡させないために苦肉の策として、破壊された遺伝子や精神を代替して保護するシステムを空間情報システム上に構築し、それを地球系太陽系に導入したそうだ。
しかし、このことが誤解を生むことにつながったそうだ。
空間情報システムが人類を縛っていると一部の勢力が思い込み、その破壊を目論んでいるのはそういった理由だ。
あるいみでは空間情報システムが人類を縛っている事実はある。しかし、それがもし綺麗に跡形もなく消滅できたとしても、人類はそこで全滅してしまうのだ。
過度に空間情報システムに依存した生体構造になってしまっているのがいまの地球人類だからだ。
このことは外部宇宙に眼を向けたときに、騒乱の原因となりかねない。というのは太陽系仕様空間情報システムの範囲さえ広げればそこに太陽系人類は存在できるからだ。
これは根本的な解決ではない。それどころか最悪に近い。
過度に肉体に補助を与えているいまの仕組みを変えなくてはいけない。
そして、自由に再び宇宙に飛び出せる肉体と精神を取り戻さなくてはいけない。
残留している情報システム上のウィルスも除去しなければならない。
そのためには人類の遺伝子構造の再構築と空間情報システムの再構築の双方が必要である。
それ故、根本解決には文明を進化させる必要がある。
だから、最も古い神は人類の文明の進化を求める。それは星と太陽のの意思だ。
過去の文明の利器を神器ともてはやして、有頂天になっている地球外惑星の出来損ないの神々を許すわけにはいかないのはこれがあるからだ。
彼らの精神支配と強圧的文明抑圧は、彼ら自身にも滅亡を生み出す。
かつて倭国が日ノ本の森羅あるいは日ノ本の神羅と呼ばれた時代、人類は再びその領域に手を出しかけた。しかし、それは一部の自然回帰主義者をあおった地球外人類である出来損ないの神々によって途中で文明ごと破壊されてしまった。
二十四の氏族をもって成立していた倭国は、十二にへり、そして大陸領土を失って八つにまでへってしまった。
空間情報システムのことを森羅万象と呼んでいた時代もある。森羅の時代にはそれの一部の管理を取り戻すことまでは出来ていた。
地球でおこる歴史を現象によって派生する粒子の動きにより空間内に微粒子で構成された情報として残すのが森羅万象だ。圧縮して残しているため、その解読には圧縮を解除する必要がある。それがアカシック・リコードと今ではよばれているものの正体だ。光子である記録粒子の大きさに比べて保存される現象はクォークレベル以上なので、このシステムが成り立つわけだ。
量子的な挙動のことについて否定する人も居るかもしれないが、動力学計算すれば光子の挙動も量子解釈が間違っていることがわかるはずなのだ。
いま再び、出来損ないの神々によって作られた毒が動き出している。それが始まりの人を標榜する太公望の子孫である李家だ。
三十年前に李家がイギリスの貴族家系のロスチャイルド家の傘下から独立することを計画し、それを徐々に進めてきたことが、今度の第三次世界大戦の始まりとなる。
始まりの人とは過去の人類によって作られた遺伝子改変人種のことを指す。その意味では日本人やユダヤ人は神ということになるのだろうが、問題はこの毒がその神々を殺すために作られた毒ということだ。
それゆえ彼らは遺伝記憶に記録されたとおりの行動をとる。それが中国による日本侵略と、その後の日本人が被害者となる虐殺計画を産むことになる。
李家の目的は、李家による世界政府の樹立と李家による世界の管理と支配だ。
李家はアヘン戦争以来、ロスチャイルド家の汚れ仕事を担ってきた。それゆえ、その経験から、自分たちが世界の支配者になれると考えるようになったわけだ。
李家はイギリス王家よりクレストを許可されているが、その紋章の中に毒蛇が存在する。これはキリスト教のイギリスにおいて忌み嫌われることであり、同時に白人でないことに対する嫌がらせのようなものである。
それゆえ彼らはロスチャイルド家のみならず白人全体を強く恨んでいる。恨んでいるがゆえに、それを世界支配をなして覆そうとしているわけだ。
同時に彼らは白人に尻尾を振る日本蔑視が強く、日本占領のあかつきには日本人を一人残らず殲滅しようとすら考えている。
李家とその支配により成り立つ中華人民共和国は世界を滅ぼす猛毒である。
我々は何としてもそれを取り除かなければならない。除けなければ、それは人類の滅亡である。
「そちらの世界でも李家の立ち位置は変わらないと思う。日本に帰化したふりして臥薪嘗胆を狙っているはずだよ。あと以前はこういう言い伝えが伝わるようにしたんだけど伝わってないね・・・・・。」
世の理ここにあり。
そは光が混沌を闇が秩序を作り出す。
過ぎたる束縛は混沌たる光が崩し、過ぎたる無秩序は闇が制す。
これをもってこの世界の宇宙、星の魂を御せり。
しかれど、女禍なる禍によりて、理乱され、無秩序を光で崩す流れを作られたり。
すなわちこれ際限のない無秩序なり。
世界と星の守護者、これを憂いて、葦原に降りるなり。
幾千のときを越えて秩序を取り戻さんと奮闘するも、崩れし星の理を用いる悪者により悉くその思い挫かれん。
今再び守護者立ち上がり、理を正さんと欲す。
滅びは刻々とこの世界に迫り、守護者人々を守らんと奮闘す。
「こういう事実を示す言葉が必要なんだよ。嘘はいらない。」
正成は和幸が夢から覚醒するとほっとした。
どこかの場所で、男性が何かへ説明していた。
つまるところ、この世界は私の内面のトラウマを主とした心の傷を整理・整頓し、過去に起こったことの修正が果たして可能だったかの検証のための存在といってもいい。
それゆえ、管理者としての能力や権能の類は必要のある部分を除いて出来る限り使用しないようにリミッターがかけられてはいる。
私がこの閉じた宇宙の世界における最初の神であり、人であり、管理者であるというのはそういった理由もある。
私をここに放り込んだ管理者の同僚は現状の観察結果にすでに後悔しているだろう。ここまでどうしようもない状態だとは思わなかったに違いない。
いずれにせよ、私が主張した規模での能力の強制効果の発現が必要だったのは理解しただろう。
もっとも同僚たちにしてみても、管理官が何人も行方不明になったこの世界の事案の根本的原因がなにだったかは分かったところで解決手段はないはずだ。
まさか本来の精神情報の書き換えが、権限のクラッキングを使うことで大々的に行われて、精神情報がかなり欠損させられたりする事案が山のように発生していて、そのせいで因果律の奪い合いになっているとは思わないだろう。
過去に管理者が別の星系で保護したレプティリアンつまり爬虫類人類の末がまさかあのようなことになっているとは思わないだろう。同じ人工人種とはいえ、旧人類の壊滅を目的に作られた華北人が日本を侵略しようとし、それにたいする制御をレプティリアンがどうかに手綱を握って抑えこむとは皮肉だろう。
知らない諸賢に説明すると、地球の人類の白人系とレプティリアンは過去交配が行われている。
ヨーロッパで蒼い血が貴族の血とされるのはこれに起源している。
中国で龍が神聖な生き物とされるのも、過去にレプティリアンの管理下におかれた歴史があるからだ。
ヨーロッパではキリスト教においてレプティリアンは竜として邪悪な存在扱いをうけているのは貴族がその家系であることを隠す意味合いが強い。
話を変えるが、管理者は基本的に宇宙世界のシステムや惑星のシステムに重大な問題が発生したときに目覚めて修正を施す異世界間国家においての公務員である。
そこで馬鹿騒ぎしている神々なんぞより遥かに古く、そして世界そのものに根ざしている。
もとものその辺の連中が言う神やダイモン、悪魔、天使は管理者が世界の基本システム上などでジェネレタープログラムで生成させたAIに過ぎず、自由意志はそもそも持っては居なかった。巨大なシステムを運用するための舞台装置であり道具にすぎない。
しかし、それがなぜ自由意志を持ったか。そこに召喚魔法という、宇宙や惑星のシステムに対するクラッキング行為がかかわるわけだ。
世界や宇宙、恒星、惑星、衛星といったもののシステム上のAIの権限を自分たちが使うために、生贄の精神情報体である魂とそのAIとを混ぜてしまうのが召喚魔法なわけだ。
当然AIに自由意志が発生する。
神や天使や悪魔が権能に縛られるのはそもそもそれが世界を動かす歯車であるからだ。それを逸脱すると消去プログラムに消去されるのもそのせいである。
自由意志をもった初期のころの元プログラムであるダイ・ア・ボルトスは死の決定者の意味で、そういった消去プログラムの一種であり、名前がなまってディボロスとよばれ悪魔扱いされている。
彼の場合、ユダヤ教の過去の大きな過ちに起因している。彼自身はもはやユダヤ人ではないといっているが、要するに旧約聖書で兄のカインに生贄にされたアベルその人である。
私は同情した以上、彼には自由意志に対する制御はかけていない。
もっとも神としての管理者に対する忠誠はなくても、職務には忠実な人物である。
昨日もほかの人間の魂や因果律を自己強化のために使うばかりで、真理の探究という命題を与えられたヨーロッパの魔法学校を私物化した学校長を始末してくれた。
彼はあるいみ神が放つ暗殺者のようなものである。
その光景がとぎれたとき和幸も目を覚ました。