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歴史の狭間の中で  作者: 高風鳴海
第一章<新しい世界での生活>
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幼稚園・年少生/二学期前編

久しぶりに投降しています。

待たせた割に文字数少な目なのであとで付け足す予定です。

 言うだけ言った後、和幸は更に付け加えた。

「もちろんそれは森家側の事情だ。散々嫌がらせをされて困窮させられている富田一門の立場としては到底認められないし、森家の日本国内の権力を握るために国と国民を外国に売るような行為は到底受け入れれるものではないよ。」


 正鳴はそこまで言われてからそれを遮って、今自分の置かれている状況を和幸に話した。

 すると和幸は首をかしげた。


「祖父ちゃんの言ったことをその軍人は受け入れたの?」

 心底不思議そうだった。

 そして考え込み始めた。

「全体的な因果律の流れの差か・・・・・・。それに個人が得ているシステムからの補助が大きい気がするな。」


 そういわれても正鳴にはチンプンカンプンである。


「・・・・まあバレるのは時間の問題だったし、ここは遠慮なく技術開発してもらおうかな?」


 そして膨大な量の記憶と知識が正鳴の頭を駆け巡る痛痒がおそってきた。

「・・和幸・・・・一体なにを・・・・。」


「祖父ちゃんごめん。ちょっと送りすぎたみたいだね。頭痛はすぐに治まるとは思うけど、その宇宙船の設計図だけは絶対に忘れないでね。」

 正鳴の頭痛が治まると、正鳴はため息をついた。

「これどうやってつくらせるきだ?」

「自作が出来なければ最悪、軍務省技術開発局に送りつければいいと思う。それ以外の技術はなにかあったときの取引材料として使えばいいよ。あと100年の間に大陸が海に沈み、あるいは不毛の大地に変わるような巨大な人災が起こるはずだよ。それが戦争によるものかあるいは何らかの実験によるものは断言できないけど、それが起きるときまでに最低限日本人は生き残れるように準備をしろってことだよ。」


「日本人が惑星のシステムの根本に影響しているってやつか?」


「うん。本当は遺伝子改変人種でも能力向上型の白人と黒人は救いたいんだよ。黄色人種のその系譜もね。でもどうあがいても全部は無理だと思う。そちらはうまく運営できてるけど・・・・だからこそ余計ないさかいを惑星外から持ち込まれる危険性が高い。いずれ天皇家に牙をむける森家の存在も問題だしね。」


「森家がそこまで問題なのか?」


「問題だね。こちらでは日本を中国に売り渡す算段までつけてる始末だ。売りわたす対価に日本の管理権を得る手はずになっている。だから台湾国籍で日本国籍かどうかも怪しい人物を野党の党首にすることまでしたんだからな。その人物は中華人民共和国の国籍を持ってたそうだしね。」


 正鳴はまさかと思った。


「もしかしてその対価として中国に支払うのは?」


「天皇の血族すべての首だね。」


「馬鹿な!!!そんなことをすれば・・・・。中華人民共和国による日本占領なんて不可能だ!!」


「だが、これが中国側の視点でみると可能なんだよ。森家に失敗させて、併合の口実につなげる。二重三重の意味で日本人の心を折る戦略なんだよ。あとはウイグルやチベットと同じで、日本人が虐殺されて、追いやられ、そこに漢民族が入植するという流れだね。」


「・・・・それはつまり・・・・敗戦占領後の悪いことをすべて森家にぶつけておいて、中国による日本の実効支配を進めるということか。」


「蛇足で付け加えると、日本人は国を持つ能力がないという証明だと新華社が伝えることになるはずだよ。マッチポンプが得意な森家が逆にマッチポンプに利用されて捨てられるのは見れるだろうね。最もうちは天皇家の血族だから森家に真っ先に処刑されるだろうけどね。」


「そこまで・・・・。」


「僕は別の時間世界でそういうところを見てきたから分かるんだよ。その世界では地球はディストピア化の末に滅亡した。そのためにシステムが暴走して宇宙中でも有名な進入不可能領域になっている。日本人が滅亡すればイコール太陽系人類の滅亡だからね。ちなみに今のこっちの状況はそれに近い。」


 そこまでいったあと和幸は頷いた。

「とりあえず現時点で伝えるべきことは伝えたかな?祖父ちゃんいつになるか分からないけど、また話そう。時間だからじゃあね?」


 正鳴が気づくとベッドの上にいた。

 カーテンの隙間から朝日が差し込んでいる。

 今日も今日はで孫にずいぶん色々言われたなというのが正直な感想だ。


 森家の妄執みたいなものを感じて正直背中が寒くなる。そこまで権力を欲して何になるのか理解できない。

 もちろん向こうにすれば何代も前から滅亡させようとしても出来なかった富田一門に恐怖を感じているかもしれない。


 世の中、組織内で権謀術数で権力を握るのは得意でも、所属組織自体を維持発展させるのがどうしようもなく下手な人間が割といる。すくなくても国という尺度では森家はこれにあたる気がする。

 逆に組織の維持発展は得意でも、組織内で地盤を固めるのが不得意な人間も居る。これに富田家はあたると思う。

 両方できる人間は間違いなく天才だが、実際あんまりいない気がする。活動能力全体は人それぞれあるにしてもどんぐりの背比べだ。こういう国難のときは森家より富田家の資質が必要なはずだ。もっとも富田家の足元をサポートする要員がいればのはなしだが。


 それ以外の人種も存在はする。例えば公家の系譜の大野家の人間は権勢ある人間に取り付いて、食い物にして使い捨てるのが得意だ。天皇家の系譜の家系は誰もが一度は大野家にひどい眼に遭わされているのは割と有名である。

 幕末に富田家に寄生して、情報を森家に流していたのも大野家だったりする。全国津々浦々にあった富田家の横町屋を森家が接収するのが容易だったのはこの大野の役割が大きかったらしい。

 一乗谷で朝倉氏が滅亡した一因も大野家の影響が大きかった。朝倉義景にあることないこと吹き込んだかの庚少将も大野家だ。



 いずれにせよ国賊と称するにしてもあまりに罪状が重い家系が存在するのも確かだ。内憂外患をわずらってるほど日本と世界に余裕があるわけではない。


 共産党の根源であるソビエト共産党を作らせたのは確かに当時の日本の為政者の責任ではある。しかし、現場で裏切る人間が居なければそもそも日本が存亡の危機に陥ることもなかったわけだ。

 それを考えると日本の共産主義者は許しがたい罪を犯している。

 東条英機と同列に語られるのがいやで、東条たちを統制派や全体主義者といっているが内情同じことだ。東条らは東条らで、利用するだけ利用して、弾圧して使い捨てにしようとしたのも確かだが。


 統制主義と共産主義にかかわるものは纏めて断罪されるべきだ。


 正鳴が自動車の中で思いにふけっていると、どうやら幼稚園に到着したらしい。

 高級ホテルのロビーのような玄関を通って、自分のクラスへと向かう。ななこももちろん一緒に居る。三井家の自動車に送られているから当然ではあるが。


 現在啓信学園幼稚園の年少部では文化祭にむけて様々な取り込みが行われている。正鳴のクラスで昨日描き始めた油彩画もその一つである。一方で、それとは別に舞台の出し物を一つクラスとして出さなくてはいけない。

 演劇にするか、合唱にするか、はたまた演奏にするかの三択である。

 一応クラスの生徒の合議で合唱に決まった。

 だが問題はここからである。次はどの歌を歌うかが問題になる。

 いきなり出てきたのが「親知らず子知らず」である。北陸の新潟・富山在住の方以外にご存知の方はすくないかもしれないが、これは新潟と富山をむすぶ北陸道最大の難所の「親知らず海岸」と「子知らず海岸」の物語を歌としたものである。なにが問題かというとキーの変化が大きい歌なのだ。


 なんとなく富山県出身の正鳴に対するあてつけのような気がしたが、それは口に出せない。


 次にでたのが滝廉太郎の「荒城の月」で、これまた子どもが歌うには厳しい歌だ。

 そのあとに「さくらさくら」とようやく少しは幼稚園らしくなった気がする。そして「エーデルワイス」がでたあと名前の聞いたことないポップスバラードがいくつか加えられた。

 最終的に「荒城の月」に決まった。

 練習は午後からやることになるらしい。

 午前中は油彩がを描き、それだけで終わった。



 数日後、新聞各紙にテロ組織による襲撃事件が一面に出ていた。起きてから三週間近くたってからの発表とはずいぶん遅かった気がする。

 国防省発表によると、ベネズェラ共和国出身の二十人あまりのテロリストによる犯行らしい。軍の機密資料の奪取が目的だったことにされている。

 一応犯行日から発表まで時間がかかったことについて説明がなされていた。それによるとテロ組織による犯行か否かの判断をつけるためだったとされている。


 実際のところ、被害者である正鳴たちにも詳しいことは知らされていない。

 彼らがなにを目的に襲撃を行ったのか、それすら不明だ。

 軍のほうは民間会社、この場合、三菱重機械工業の内部に外国の工作員が紛れ込んでいたと睨んでいる。憲兵隊は被疑者をすでに確保しているそうだが、実際犯人かどうかの事実確認の最中らしい。


 正鳴としては頂けないのが三井家屋敷への襲撃だ。幸い軍の行動のほうが早かったために大事になってない様子だが、屋敷の敷地内で銃撃戦になっている。

 なぜ三井家に襲撃が行われたかが問題だ。もちろんビジネス的には中核企業として三井ビルディングが動いていた。

 その中核を潰して誰が得をするかだ。


 あちらの世界なら日本の産業の芽をつぶすのにアメリカ合衆国がやったといわれれば不自然さがない。だが、大日本帝国とアメリカ合衆国は軍事同盟をしており、潰した際のデメリットのほうが国益上大きい。なぜなら、軍事同盟の条項で相手の軍事技術の開示を求めれる条項がある。双方が納得した上でなければ開示されないが、欲しいなら開示請求すればいい。

 となると、そのときに損失をこうむる対象が怪しくなってくるのだ。

 つまり、アメリカ合衆国の軍事産業複合体だ。マクドネルダグラス社やロッキード・マーチン社、コルト社、スミス&ウェッソン社、そしてボーイング社などの層々たる軍事会社の横断組織だ。


 軍のほうではヨーロピア連邦の組織のほうを被疑者としていた。

 ヨーロピア連邦のほうは条約締結で大日本帝国との国境線が画定しているため、国内のテロ組織を潰すのに手一杯という感じがしないでもない。エルサレムの件のせいで活発にイスラム過激派組織が暗躍している状況なので、ここで新たに火種を抱えたがるとは思えない。

 ただし、ここに宗教のことを考慮するとそうでもなくなる可能性はある。

 ヨーロピア連邦はローマ・カトリック信者の比率が多い。ローマ・カトリックの教皇庁の見解では科学の進展は更なる戦争の悲劇を増やす原因とされている。確かに科学の進展で戦争がおこるととんでもない人数の死者がでる。

 ただ、こちらはもっとも古い神である和幸のお膝元らしいのでローマ・カトリックが強引な策をするのは考えにくい。

 となると、ローマ・カトリックに対立する魔術結社の存在が問題となる。

 かれらの存在が、古き神に対立する和幸のいうところの出来損ないの神々の使徒ならば十分にありえる。

 彼らは地球の文明を自分たちの手の中に押し込めておきたいと考えているそうだから、それを脱する技術の進展には抑制をかけてくる。

 エネルギーを簡単に計算できるから正しいとされた量子論の罠が代表的だ。実際は動力学計算でしか厳密な値は得られないし、飛び飛びの値をとるにしてもそこに幅がある理由を量子論は説明できない。それ以上の思考の進展を量子論はとめてしまうのである。



 ただアメリカ合衆国のほうは敵にまわしたくないなというのが正直なところだ。交渉でまとまるならそれが最善である。

 ヨーロピア連邦の魔術組織が相手なら、打てる手としてはローマ教皇庁への支援要請くらいだろう。

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