幼稚園・年少生/夏休み編・肆
今回は割とまとまった文字数で投稿できました。
三井家の報告会が終わると、そろそろ二学期が見えてくる時期になってくる。
啓信幼稚園では、絵日記と冊子のテキストが宿題に出されていた。幸い、テキストについては避暑に軽井沢に出かけたあともやっていたのですでに仕上がっていた。
絵日記の方も話題に事欠かなかったおかげでなんとかすべてのページを埋めることはできた。
周りではすでにツクツクボウシが鳴いていて夏の終わりを告げていた。夜にはコオロギや鈴虫の鳴き声が聞こえる。
この日の夜、屋敷のテラスで正鳴はジュースを飲みつつ虫の鳴き声を聞いていた。
あちらの世界とこちらの世界でもそれは変わらない様子だった。こうしていると自然と向こうの事が思い浮かぶ。
こちらに来ていろいろ気づかされたことがある。一番大きいのは「貧ずれば鈍ずる」という言葉の意味を嫌というほど目にしたことだ。
あちらで窮々と生活していたのでは気づかなかった事が数多くあった。
一番大きいのは教育レベルの差だ。一般人がいくら頑張っても、お金と手間を十分に掛けた上流階級の子女にはほとんど及ぶことがないということだ。
もちろん稀にその壁を突き抜けてくる天才はいる。しかし、それは才能に恵まれたほんの一握りだけだ。
これが一部の上流階級の選民思想につながっているのも仕方がないなと思わざるを得なかった。
一般庶民は、お金持ちの子息はなぜか才能がないと思い込んでいる人が向こうでは多かった。しかし、才能という点においては皆団栗の背比べだ。
決定的な差になるは幼少期の教育だ。ここで差がかなりつくことになる。
正鳴は前世の知識や精神をもっているから、そこの部分が猶更よく分かった。
三つ子の魂百までとはいうが、生まれた瞬間から三歳児までの間の、上流階級の教育の密度のすごさは実際体験してみてよく分かった。
向こうで自分が自分の子供たちに十分な教育を与えれなかったことにかなりの後悔を感じた。もちろん、森家と辻家の締め付けがあり、どうしようもなかったのもまた事実だ。生活すらままならないようにされていたから当然ではある。郵便局の退局のあと退職金で魚屋をやり始めたら、森家のつてで、真向いの家が魚屋をし始めて、売れなくなったという出来事もあった。
露骨にそういうことを森家や辻家は嫌がらせてしてくるのである。
それと同時に森家や辻家は、日本の上流階級の暗黙の了解をいくつも破ってくる相手だというのも良く分かった。
余裕がないと余裕があるときには合理的に判断できても、余裕がなくなると不合理な判断をしてしまうのも「貧ずれば鈍ずる」の言葉のうちにあるだろう。
なぜ国を発展させようとすれば一般教育レベルの底上げが必要なのかもそれでよく分かった。
お金が無くて教育が行えなければ、その教育を受けれなかった人々の血筋はずっと貧困者のままだ。これが貧困層の固定化を生み、不平不満の温床となり、いずれは社会不安や社会不満の始まりとなる。
ピーター・フェルディナンド・ドラッカーの著書を最近よく正鳴は読んでいる。それのなかで成熟した社会では労働者は知識労働者へ変貌すると書かれている。
しかし、それは成熟した社会に社会が移る必要性がある。
単純労働の機械化や労働者の知的レベルを上げなくてはいけない。そうでなければ知的レベルをあげることができなかった労働者は失業者となるだけだ。
機会の均等を図る意味では、最低レベルの教育とされる義務教育の開始年齢の引き下げは必要不可欠だろう。低年齢での教育の重要性は先に述べたとおりだ。これが各家庭に委ねられているのは機会の均等の意味では害悪でしかない。
ドロップアウターの生まれる最大の原因がそこにある。
ドラッカー全集を読みながら、正鳴はこれから起こるだろう事に思いをはせた。
今、富田家と三井家の合弁会社の作っている光子コンピューターは、媒体が電子よりはるかに小さい光子を使うため、回路の集積化が進むことになる。ただ、電子とは全く違う部品や回路製造を行わなくてはいけないので手間がかかる。エネルギーリソースが電力であるため、それにあわせた電子回路も必要になってくる。ただし、これは現段階である。将来的には光エネルギーそのものをリソースとして扱うことを目標としている。
それは和幸のもたらした知識のなかに確かにあった。
手元にある悠一に言われて提供しなかったノートには兵器の模式図が掛かれていた。それにはプラズマレールガンと書かれていた。
プラズマ気体を制御して発射する一種のビーム発射装置であるが、これは後背からのレーザー制御を着弾地点まで行うものであり、大気中や水中でも減衰しないという特質があり、さらに着弾地点でプラズマ気体をレーザー制御による多段励起を行わせて核融合を引きこさせるという代物だ。
これはエネルギーを大量に必要とするため、エネルギー生産技術も必要とされるが、同時に、いずれ起るであろう、地球外との戦争において必ず必要とされる兵器であるらしい。
それというのも、地球外の宇宙船は位相速度という地球にまだない概念で重力制御を行っており、これにより疑似的にだが空間を歪曲させて推進する機構を用いているからだ。
そのため、実弾兵器は衝突することがなく、歪曲面を滑るように移動して後ろへうけながされるだけになる。
位相速度については、基本としては互いの相対速度が速くなればなるほど物体同士の干渉能力が低下し、一定以上になると衝突すらしなくなるという、相対速度非干渉化の原理という物理法則による。
ところがプラズマ気体はそれ自体が様々な方向へベクトルの運動量をもって存在している。このため一定以上のベクトルが相手の位相速度と一致すれば、歪曲面に干渉して撃ち抜くことが可能になる。これがいみするところは、戦術核による攻撃が有効であることも示している。しかし、核ミサイルは様々な問題があるのと、高速で動く宇宙船をとらえるのは無理に等しい。
そこでレールガンを利用した高速ビーム兵器が必要とされるようになるわけだ。
これは相手に攻撃を当てれるという最低限のレベルでしかない。これを小型化し、命中精度をあげる機構を構築していくことも必要とされる。
その命中に関する部分や収束や核融合を演算するのに光コンピューターは必須なのである。
ただ、この兵器は強力であるため、地上の戦争に用いられればとんでもない事になる可能性もある。
宇宙において、星系や銀河を消滅させる砲もあるが、基本的にこのプラズマレールガンの発展形でしかない。
同時に対人用のビーム銃の基礎でもある。
基本的な射撃武器すべての基礎となる兵器なのである。
「どうした?ああ・・・・その兵器の件か。」
正鳴が気づくと横には会社から帰ってきた悠一の姿があった。
「正直、できるものならすぐに研究したいところだよ。」
悠一は苦笑していた。
「俺としては手に余る代物だな。星を消滅させる兵器にもなり得るわけだろう?砲弾が水でも使える点はリーズナブルだが・・・・。軍需産業にとってはその点が気にかかるところじゃないのか?」
そのセリフに正鳴も頷くしかなかった。
この兵器が実用化されれば、砲弾の需要が極端に落ち込むことになる。それは軍需産業に定期的な収入を与えているビジネスが無くなることを意味している。
将来の為に必要不可欠な兵器ではあるが、そういった利害関係の複雑さから手を出しにくいのも事実だ。
現在こちらの世界で実用化されているレールガンは、タングステンの合金の砲弾を射出する形のもので、砲弾の値段として加工が簡単な面では安いが、タングステンが合金の材料であることがボトルネックになっている。
ある意味レアメタルに分類できる金属元素だからだ。
高速で射出するため、摩擦熱で砲弾が融解するまでが射程距離である。これを伸ばすのには融点が高くしかも頑丈なタングステンの合金を用いるしかないのである。現状では高価な兵器である。
もっとも射程距離が短くていいなら鉄でも代用はできる。
プラズマ型レールガンに対してこちらは固形型レールガンに宇宙では分類される。
「孫に教えてもらった、この兵器だけど・・・・手を出すなら早いうちがいいと思うんだ。ななこの親戚が三井重工業をやってるから、そこに丸投げしてもいいはずだよ。いまは忙しいからすぐにとはいわないけど・・・」
正鳴がそういうには理由がある。地球が平和でもその外が平和であるなんてことはあり得ないからだ。協定で直接地球に手を出してくる可能性は低いが、それでもいざという時に対処できる力は必要である。
和幸曰く、地球の文明が一定水準以上にならないように抑制している勢力が太陽系内に存在しているということだった。その勢力は地球の人類の事を下等生物扱いしており、和幸達、古き神々と対立している関係があるそうだ。
和幸からすると、惑星内の空間情報システムなるものの再構築は最低限必要なことであり、それをするにはそれを扱えるように再び人類がそのレベルの技術力を手にする必要があるそうだ。
いまの人類は空間情報システムのシステムアシストなしには生きれないような状況にあり、それを改善しないとどうしようもないという事らしい。
思考構築や危険回避についてのシステムアシスト前提に生態が構成されており、それに加えて因果応報と呼ばれる仕組みがそのアシストの程度を決めている側面があるそうだ。
システム的に善と規定される行為をすればアシストを強く受けることができ、逆に悪と規定される行為をするとアシストの程度が低下し、さらにペナルティーもうけるように作られているらしい。
蛇足だが、その地球人類を下等生物扱いしている勢力は、この太陽系の最初の文明を作り出した日本人の祖先が地球に来た後で、そこに入り込んだ外部の勢力により作り出された遺伝子改変人種の勢力だそうだ。
彼らは「文明は温室でしか育たない」という宇宙の常識を信じず、「過酷な条件であればあるほど強くて合理的な文明ができる」と信じているそうだ。
それゆえに、地球の人類に対し「試練」と称して、様々な天変地異を与えているそうだ。
和幸は秩序の守護者と呼ばれる通り、そういった彼らの「試練」の後始末をずっと続けてきたそうだ。
天変地異は文明にとってマイナスしか生まないというのが和幸の持論で、実際その通りで、彼らの試練のあとは大抵無秩序が生まれて、人類同士の激しい争いが生まれるそうだ。
いろいろ意見はあるが、適度に限定的な戦争をして殺し合いをしているうちはまだ健全で、惑星全体が戦争に巻き込まれると文明の維持すら無理になるケースが多いそうだ。
惑星全体が戦争になる場合、和幸としては文明の崩壊を食い止めるのに、一方あるいは両方へ調整のための干渉を行うそうだ。最悪、片方に肩入れすることもままある。
しかし、事が日本人に関わることになると、それが余計やっかいになるそうだ。それというのも空間情報システムのシステム運用において、日本人の肉体や精神からのエネルギー供給や相互干渉が無ければ、地球全体の他の人類に対するシステムアシストが維持できないそうだ。
これがシステムアシストなしで生きているような人類ならよいが、地球の人類はすでにそうでなくなっており、それにより枷がつけられている状態だそうだ。システムアシストがなくなると認知症に近い状態に人類は置かれる。外部情報の認識すらできなくなるそうだ。
そうであるのに日本人を消滅させればそのシステムアシストの枷から解放されると考えていたいたり、逆にそれを失わせることで、人類を低レベルな文明に永久に抑え込めると考えている勢力が太陽系内の別惑星に存在するそうだ。
そして次におこる第三次世界大戦はそういった勢力によりお膳立てがされており、日本人の血脈が断絶するように仕組まれているそうだ。
それはあちらの世界でのことだが、つまり、「中華人民共和国とその同盟国」のグループによる「先進国+インド等を中心とする非同盟諸国」のグループとの戦争である。
この戦争は一朝一夕では終わらず、それを仕組んだつもりになっているイギリスの一部グループも制御できずに滅び去ることなりなるそうだ。
そもそも人類を因果応報の枷から解放するには、それの前提となる人類全体の精神構造の改変が必要になる。そうでなければ因果応報のシステムを解除すれば文明の維持すら困難になる。
もちろん、因果応報のシステムにはいろいろ問題点がある。それは条文で規定されたロジックである以上、抜け道的に相手を嵌めるのに利用されたりする側面がある事だ。
わざと果たせない誓約を相手に課したり、嘘はつかないが真実を喋らないなどがこれに当たるだろう。そんなことでアシストのレベルを低下させられたり、ペナルティを受けるのはたまったものではないだろう。
最もそういった抜け道を利用している魔道あるいは邪道の連中が今回の戦争の首謀者である。
彼らは自分たちさえよければそれでよく、文明の維持発展といったことに全く興味がない。それゆえに他の惑星にいるろくでもない連中に利用されているのである。
ちなみに日本人を壊滅させても、因果応報のシステムは残る。しかし、今以上にひどい状態でそれが残るのである。
結局それで、地球外の連中も困難に見舞われるのである。範囲が太陽系全体に敷かれているからだ。あとで慌てて日本人の遺伝子の復活に彼らが四苦八苦するのが手に取るようにわかると和幸が言っていた。
システムの正しい方向への改変が行えない時点で、日本人が壊滅すれば、彼らにはお手上げなのである。日本人の肉体情報遺伝子と同時に遺伝記憶遺伝子の双方がカギになっているからだ。彼らに日本人の遺伝子を復活させれる技術力はないそうだ。
それがあるなら、少子高齢化で限界コロニー化するようなことに彼らはなってないだろうと和幸は言っていた。戦争を仕組んだ連中は血族交配などで劣性遺伝がかなり出てきており、出生率の低下をさらに生んでいるそうだ。
クローニングや合成した因子から作った隔世遺伝者との交配でどうにか子孫を維持しているが、壊滅も時間の問題だそうだ。
話を聞いた正鳴としても笑うしかない。
戦争や天変地異を仕組んでいる連中にしても生き残るに必至であるのは事実だが、そこに始まりの人である日本人への蔑視が存在しているのには笑うしかない。ある意味、自分たちの元となった人類因子にたいする妬みの感情に近いのだろう。
自分たちを悪い人類から改変して良い人類として作り出したのは先祖の正しい選択だったとそれに固執しているそうだ。
因子の全体を知らずに、因子をゼロから作り出すこともできずに改変を行った時点で馬鹿としか言いようがない。
キリスト教が遺伝子改変に否定的なのもある意味当然なのである。
ある程度調べる分にはいいが、しったかぶりで改変してしまうとろくでもないことになるのである。
これは動植物についても同様である。動植物があまりに人間に都合よく作られていることに気づかないだろうか?動植物も過去の人類が植民するのにこの地球を作り出したあとで持ち込んだ代物なのである。野生化したり、あるいは品種改良でいろいろかわってしまっているが、原種自体が人間にとって都合のよいように作られているのだ。
正鳴がそのことを悠一に話すと、悠一は考え込んでしまった。
「・・・・正直地球外の存在のことまで考慮にいれれないな。存在の証明は困難だろうし・・・。そんなことを言えばキチガイ扱いされるのがおちだ。」
まさなりとしても頷くしかない。
「現状ではね。ただ、こちらの世界でもそれは同じだろうって孫が言ってたから・・・・準備はしておくに越したことはないだろうね。宇宙進出が始まり、彼らが定めた一線を越えつつあるあるからね。」
悠一ははぁとため息をついた。
「文明を抑制し戦争を仕組む存在か・・・・厄介だな。」
悩みはつきないのである。
次の日、ななこが富田家へやってきた。
どうやら千葉にあるアメリカ資本の遊園地へのさそいらしい。
正鳴は前世でも今世でも話は聞いていたが行ったことがない。すぐに行けるものではないだろうと思っていたが、そこはすでに年間フリーパス券を用意しているから大丈夫とのことだった。
遊園地は駐車場に入ることは無理だったので、遊園地の手前で降ろされていつもの楓、智子、ななこ、正鳴の四人と警備の何人かと入場する事になった。
若干だが警備の人員が増えている。
この間の事が影響しているのだろうなと正鳴は思った。
遊園地は二か所に分かれており、新設の海側のほうとも使えるフリーパス券だそうだが、その値段を聞いて正鳴は唖然とした。
平均的なサラリーマンの月収に相当する値段だった。
「なんだかなぁ・・・・・今更ながらそこまでお金かけて楽しめるのかなぁ・・・。」
正鳴の言葉に智子が若干呆れていた。
「正鳴君、ちょっと庶民的すぎ。その感覚を持ってるのは悪くないけど・・・こういう風に遊びに行くときは気にしたら負けだぞ?」
そんなものかと正鳴は思った。
正鳴たちは幼稚園児なのでメインになっているジェットコースターの類や絶叫系には乗れない。そのかわり観覧車などに乗ったりして楽しんだ。
ティーカップという乗り物系のアトラクションに乗ったときに、ななこが珍しくはしゃいでハンドルを回しすぎたおかげで若干正鳴は酔ってしまった。
吐きこそしなかったが、正直気持ち悪くなった。
「正鳴君大丈夫?」
ななこにそう言われると大丈夫としかえない。
しかし、保護者は気づいていたようで、智子がななこを叱った。
「ななこ。正鳴君が酔うほどまわしちゃだめでしょ?そういう楽しみ方もあるでしょうけど、相手が気分わるくなるようなことをしちゃだめよ?」
「正鳴君、ごめんなさい。」
謝る相手をこういう時に間違わないのがななこのすごいところだなと正鳴は思った。
「大丈夫だよ。ななこちゃん、気にしないで。」
その日は夜のパレードまで見て、ホテルに宿泊した。
ホテルはずいぶんサービスが行き届いていた。
次の日、智子と楓ともにお茶会が午後からあるとかで、午前中に土産物を見繕ってから、すぐに家に帰った。
次の日、悠一が若干疲れた様子で午前中に家に帰ってきた。
富山県高岡市の財閥本部で富田家の総会があったそうだ。宗家であるため悠一は色々調整や、根回しをしていたそうだ。
富田家の件とは別件だが、まさなりが依頼していた兵器の件は三井重工業に秀直氏が仲介してくれることになったそうだ。
「ただ、向こうの担当者が収益につながるか懐疑的でね。研究予算をつけるのが精々で、設計までいくか正直いまの時点では断言できない。かといってうちの重工業部門でどうにかなる代物でもないしなぁ。一応うちの重工業部門と造船部門で研究はしてみることにはなった。」
造船と聞いて正鳴は首を傾げたが悠一が説明した。
「うちの造船部門は一応海軍の下請けをやってるから、兵器開発をするとなるとお国から兵器開発の許可を得ている造船部門が噛まないといけないわけだ。めんどうだがな。」
「とういうことは艦載兵器として研究するって方向性?」
「そうなるな。三井家の三井造船みたいに戦艦やら空母やらの大型艦船はとりあつかってないから精々軽巡洋艦クラス用だな。」
「いきなり無茶だなぁ。小型化しないといけないし・・・エネルギー源の発電機の効率化どころか、下手をすると小型核融合炉の開発までしなきゃならないじゃないかな。」
「まあな。軽巡洋艦クラスに積めるように研究しろっていったら担当者は泣きそうだったよ。」
「戦艦用としても、核分裂炉で賄えるエネルギー量にできるのか微妙だね。」
「熱核融合炉の研究は日本産業コンツェルンが進んでいる。そっちとの提携話を秀直さんに依頼しておいた。ただ原子炉はいろいろ問題が大きいから、ディーゼルエンジン発電機で当面はどうにかできるように研究させる予定だ。」
正直かなり無茶だなと思たが、正鳴は黙っていた。研究で端緒をつかむことが大切だからだ。
その日は、悠一といろいろ話をして過ごす事になった。