表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
歴史の狭間の中で  作者: 高風鳴海
第一章<新しい世界での生活>
11/18

幼稚園・年少生/夏休み編・壱

インターバルが長かったにもかかわらず短めなので、あとで付け足す予定です。

 夏休みが見えてきたところで、正鳴は楓から三井家の別荘地に案内されることを聞かされた。長野の軽井沢だそうだ。


 軽井沢は明治維新の後に外国人の別荘地として整備された事でよく知られているが、どうやらあちらの世界ではアウトレットモールが作られて、商業的にも活況を呈しているらしい。


 こちらの世界でもあちからからは遅れてはいるが、三井家がアウトレットモールを作る計画が進んでおり、海外ブランド、国内ブランドの店が立ち並ぶことになるそうだ。

 どうも正規品を必要とする上流階級向けに、タグを切り離したアウトレット商品以外に正規品も並べるつもりらしい。


 軽井沢の立地条件は一般化しつつあるあちらより上流階級向けの志向が強い土地になっている。

 さらにそこから離れるが三井家のプライベートエリアが長野県内にいくつかあり、軽井沢のあとにそちらにも寄る予定を智子が立てているらしい。

 三井家本家の関係者との接触があるのかと身構えた正鳴だったが、幸いな事に本当に商売抜きの避暑になると智子からあとで説明された。




 その日、正鳴は一般庶民の感覚と差がわからないからと、楓に頼み込んで、郊外のスーパーにやってきていた。

 物価がどの程度か知るためだ。

 楓とスーパーに売られていた品物を眺めていたが、桃山紅茶という名前を見かけることになった。リプトンやフォートナムメイソン等の有名どころのブランドに混ざってその紅茶は売られていた。

 先日の一件があったので、楓も目をひそめていた。

 スーパーで美味しいからとやや嫌がりながらも森系列の会社のクッキーを買ったあと、自動車に戻った二人はふっと息を吐いた。



 そもそも李家が成り上がる原因となった、アヘン密売は、イギリス政府が紅茶ブームによって中国からお茶が運ばれるが、イギリスからの売り物がないことに対する短期的な対策として作り出したものだ。清からの主要な輸入品はそのほかに絹や陶磁器もあった。

 長期的にはインドやセイロンでお茶を栽培して、中国からの輸入量を減らす方策をとることを計画していたイギリス政府だったが、ティー・クリッパー船によるお茶の運搬競争、カティサークの話が有名だが、それが予想外に過熱しており、国内からお茶の代金として出ていく資本や貨幣・紙幣を放置すれば、すぐに不況になる恐れがあったからだ。

 それで、インドやアフリカの植民地で栽培の容易な罌粟を作り、それからアヘンを取り出して中国への輸出品にすることを急いだわけだ。

 そしてこの中国での販売網を取り仕切ったのが李家だったのである。

 その関係で李家は紅茶の一部販売網をロスチャイルド財閥から分け与えられるまで成長した。



 アヘン戦後もアヘンの密売は続けられ、それが李家の強い力となっていった。

 イギリス国内でアヘンの売買が禁止されるとともに罌粟の栽培も禁止されることになると、今度は中国での栽培を開始し、それと同時にロスチャイルド財閥のつてを伝って南米へ進出することになった。

 アメリカ合衆国でのいくつかの華僑同士による勢力争いに勝利したのもこの時期である。アメリカ合衆国における医療分野での大麻の使用を喧伝したのも李家で、医療分野の有力者の関係者にもかなりの影響力がある。


 李家の躍進が進んだ時期は、あちらの世界でいう日本での幕末から太平洋戦争の時期である。この間、李家は長崎方面に影響力を持っていた辻家に接触し、薬物の売買のほかに、いくつかの日本の中華街の設立にも出資を行っている。


 森家との関係は辻家経由で北陸の森家から千葉の化学薬品を扱う森コンツェルンへの経路でつながりができた。


 最初のころはまだあちらの世界でも辻家・森家とも李家とはズブズブの関係にはなっていなかった。

 ズブズブの関係になったのはシベリア出兵のあと、中国進出の前後からである。満州で李家は清王朝の官吏のつてから張作霖の軍閥を使ってアヘンの売買を黙認させた。

 そのあとの満州事変によるオイル禁輸で財政的に危機を迎えていた森家はここで李家の支援をうけることになりほぼ引き込まれることになる。


 その関係で森家は神経毒の開発を太平洋戦後も続けることになり、日本国内外の非合法組織への供給を行い続けることになる。


 森家の開発した神経毒のいくつかは暗殺に用いられるほか、健常者をアルツハイマーに似た状態に置くものや、認知症を引き起こさせるもの、心筋梗塞を起こさせるもの、精神失調をおこさせるもの等があるが、いずれも残留物が見つかりにくいものばかりである。


 一部の上流階級での相続争いなどで使われていくつも悲劇を日本に生みだしている。


 そのため裏の世界で森家はそれなりの影響力を誇ることになるが、その一方資本関係から李家に半分支配されているとも言える状況なのである。


 若年者に違法薬物を広めている教師がいるのも森家・辻家の関係からである。レッドヘッドと彼らは呼ばれている。その名前の由来は、もちろん共産主義が関係しているからである。



 あちらの世界のことを思い出した後、正鳴はふっと息を吐いた。

 どちらにせよ、今こちらの世界の李一族も歴史の流れを見れば必ず麻薬や大麻を取り扱っていて、それで収益を上げているはずである。

 違法薬物の流通には必ず貿易商社が少なからず関わる。それを考えれば、表向きは関わってないにせよ、富田海上運送の運ぶ荷物に紛れていないはずがない。

 財閥のトップである以上、無関係、知らなかったでは済まされない問題だ。


 それと同時に相手である李財閥は世界的な財閥企業である。迂闊な手はこちらがつぶされる原因になりかねない。「離間の策」や「内応の策」等は歯止めを利かせなければモラルハザードや信用崩壊を生み出す中国の兵法書だが、「己を知り、敵を知れば百戦危うからず」の言葉は物事の基本なのは確かだ。


 今は大日本帝国の企業として桃山貿易の企業名を向こうは使っている。まずは表面的な財務状況から調べるのが吉だろう。企業日報という株式や業績にかんする書籍を書店によって正鳴は買うように楓に求めた。あちらでいう四季報にあたる書籍だ。


 家に帰ってそれに出ている会社概要を眺め、それと同時に、関連企業についても調べるように楓に頼んだ。

 李財閥についてはどうにも嫌な予感がするのだ。表向き大日本帝国では紅茶の会社だと思われている。

 あちらの世界でも森家や辻家は配下に置かれていた。建前的にだが李財閥はロスチャイルド財閥の傘下という事になっていた。しかし、裏に関わる企業の上、経営者が白人ではなく漢民族であることから差別待遇を受けていたはずだ。

 李財閥はロスチャイルドの汚れ仕事を任せられているということだが、さすがに世界の御大であるロスチャイルドに喧嘩を売るような馬鹿な真似はできない。

 どこかで線引きが必要である。


 あちらではおそらく日本が滅ぶ原因となる森家辻家の動きを封じさえすれば日本が国として生き残る勝利条件になるはずだ。ただ、日本国内の中国びいきを生み出している李家の影響は排除せねばならない。


 こちらでも桃山貿易はアニメーションの会社に出資していることがわかっている。純粋にロスチャイルドの傘下として動いているなら問題はないだろう。だが中国人や違法薬物のバイヤーとして動いているならば問題だ。

 特にこちらではイギリス王室がカナダに移転して政権を作っている以上、グレートブリテン島の奪還は悲願のはずである。

 イギリス貴族の集団であるロスチャイルド財閥としてもそれは目標になっているはずだ。ただ、ロスチャイルドがヨーロピア連邦にも利権を確保している以上無理やり事を進めるのは損失が大きくなるので財閥しては求めていないはずだ。

 ユダヤ商人主体のハンザ同盟とロスチャイルドの対立云々が書かれている本が巷にはあるが、競争はしてもそれほど先鋭化はしていないと思われる。



 調べていると突然あちらの世界の知識があふれ出した。

 どうやた和幸の手伝いらしい。 


 向こうの世界ではロスチャイルド内に李家の強引な手法に怒りが蔓延しているということらしい。向こうで中華人民共和国の武器をアフリカ諸国の反政府組織と政府の双方に売りつけて、紛争を作り出して、その代金として現地の鉱山などの利権を李財閥が確保したというのだ。

 もともとそれはロスチャイルドの別の財閥家が保有していたもので、勝手に向こうの勝利者である新政府が中華人民共和国と李家に譲り渡したらしい。


 武器の密売でかなり李家は収益をあげているそうだ。

 そのうえ国際連合事務総長最有力候補をイラクで爆殺した情報まであった。これにより韓国人の事務総長がたち、中華人民共和国に有利な方向へ国際連合を誘導しはじめたそうだ。

 これは武器の密売取り締まりの責任者でもあった故人を抹殺するという一石二鳥の策だったそうだ。


 こちらの世界では全会一致の規約が改正されたたちで実質的に国際連盟が存続しているので微妙な線である。アメリカ合衆国主導による国際連盟の組織改革が行われて、トップダウン型の組織になっている。

 事務総長は大国の三国理事会が決定することになっており、ほとんどアメリカ合衆国の主張が通る形だ。

 いいのか悪いのかは判断に迷うところだが、世界平和には寄与しているのは確かだ。



 なにはともあれ、あちらのアフリカの状況を考えれば、こちらでも李家が何らかの暗躍を進めているはずである。

 カナダに渡った、イギリスのロスチャイルド財閥の関係者は、アフリカにある植民地の経営の強化を進めているのが現状だ。

 農奴に近い扱いの安い労働力をつかってプランテーションを拡大している。商業作物としてはコーヒーとカカオが有力商品となっているようだ。現地の住民の多くの食生活はジャガイモやサツマイモを主食としているらしい。地域によってはトウモロコシの粉からつくったパンケーキが主食になっていたりはするが、小麦や米は地域の特性なのか作られていない。

 アフリカ大陸北部地域、サハラ砂漠周辺はヨーロピア連邦の領土となっている。それより南がイギリスの植民地だ。この地域ではガーナ休戦協定という条約がイギリス連合王国とヨーロピア連邦の間で結ばれている。



 ドイツが作り上げたヨーロピア連邦がなぜドイツ語読みのオィロペーア連邦ではなく、フランス語読みのヨーロピアになったかというのは、国名を決めるときにドイツ人議員の多くがフランス語読みをなぜか支持するという逆転現象がおきたからだ。

 花の都パリの吸引力だと言われているが、服飾文化に興味があったドイツ親衛隊の隊長が支持したことがおおきかったとされる。


 イギリスとドイツ間の休戦協定がヨーロピア連邦設立の時期と重なることから、おそらくドイツがイギリスとの休戦のために、フランス貴族をドイツ側へ引き入れるのに国名をフランス風に変えた可能性が高い。


 あちらの世界情勢からすると、おそらく李家は造反分子をアフリカ内に仕込ませているはずである。これをどうにかしなければ、内乱や紛争があちらこちらで起きるはずである。


 いまは桃山と日本語読みに名前を変えているが、中国の独立勢力を支援している可能性も高い。

 此方の世界ではすでに国民党は解散されているし、蒋介石も戦争犯罪人として処刑されている。蒋介石の死刑がきまったのは北都裁判と呼ばれている。あちらの世界の東京裁判が中国側でおきたと考えれば考えやすい。

 北都は北京から改名された名前で、再開発が進み、大日本帝国の第二の都市になっている。当初は最初の北京の名前だったモンゴル政権時代の大都がいいのではという意見もあったが、わかりづらいという意見があって北都になっている。

 南京はこれをうけて南都という名前になっている。洛陽は洛都、長安こと西安は西都となっている。都道府県のあつかいでこれらは府の県庁所在地扱いになっている。北都府、南都府、洛都府、西都府といった具合だ。


 香港とマカオはそれぞれイギリスとヨーロピア連邦の植民地として、大日本帝国から租借する形になっている。これはイギリスとの戦争を回避しようとした時の長谷部幸三内閣の決定によるところが大きい。

 結局その五年後にインドの独立派支援のためにインドシナ攻略にかかり、マレー半島で日英は衝突することになる。結果的にシンガポール要塞攻略でかなりの犠牲を払うことになった。この戦争中においてはアメリカ合衆国は不干渉を貫いている。

 シンガポールを抑えたことで、インド独立派への物資支援が行われて、インドの独立運動は成功することになる。

 ただ、この件で、インドとマレー半島に利権を持っていたロスチャイルド財閥の不興を買う羽目になり、それの補てんとして戦後に種だねの支援をイギリス王国へ大日本帝国政府が行う羽目になったのは皮肉としかいいようがない。

 ロスチャイルド財閥がアメリカロビーを動かした結果で、外交的には失敗だったと教科書には書かれている。


 これらの情報から、李家がロスチャイルド財閥の主流派の不興を買うタイミングが李家排除の行動を起こすべきタイミングだと正鳴は考えた。このタイミングをミスればロスチャイルドが李家の保護に動いて、アメリカ合衆国が動くことになり、勝ち目は薄い。


 李家の排除を行えば、森家や辻家の排除も容易になる。あるいは国賊行為を阻止するのが目的である以上、排除ができなくても無力化できるはずだ。

 富田家としては森家や辻家との因業の決着をつけたいところではある。

 和幸の話では、和幸が富田家に転生した何度か目の時に森家と辻家の裏切りにあって殺されて、そのときに末代まで祟ってやると宣言していたそうだ。

 祟りがどの程度の意味があるかはわからないが、どうせなら神の祟りで祟り殺してほしいところである。

 森家にも転生しようと思えばいくらでもできるらしいが、転生すると余計なしがらみが多すぎて身動きがとれないそうだ。李家に頭を押さえられていることを考えればさもありなんである。





 幼稚園の夏休みが始まり、初日の朝にななこから電話があり、午後に遊びに来るそうだ。

 智子も来るのだろうと思っていると、楓に今日はななこだけだと言われた。

 そこでふと気が付いた。今の正鳴の部屋は玩具らしい玩具がほとんど置かれていない。あるのはオフィス家具と本と書類の山だ。

 これではななこを喜ばせることはもとより、一緒に幼児らしく遊ぶこともできない。

 そのことを楓に相談すると、それならプレゼントを含めて縫いぐるみと絵本でも買いに行きましょうという話になった。

 連れていかれたのは定例のごとく新宿の三井デパートで、ウサギや猫、熊、馬のぬいぐるみを幾つか買い求めることになった。


 絵本を探して同じ新宿にある紀伊国屋書店本店に向かい、そこで絵本を探したが、この間、英語の絵本をななこが読んでいたことを思い出して、普通の絵本のほか、英語の絵本やドイツ語の絵本などを買い求めた。

 そのほかに玩具としてトランプやチェスを買い求めた。



 家に帰って、プレゼントにする縫いぐるみ以外の封を開けていると、悠一が正鳴の部屋に入ってきて、部屋の様子を見て肩をすくめた。

「たしかに幼稚園児の部屋じゃないな。仕事部屋だな。」

 縫いぐるみの置き場所などは正鳴が決めていったが、その間、仕事の話を悠一としていた。

「とりあえず、アメリカ合衆国のロビーづくりは始めてる。通らなかった三つのうちの一つはどうにか特許を通せそうだ。問題があとの二つだな。」

「そうなるとロビイスト経由で議員に渡りをつけて、直接献金するしかないかもね。」

「そこまで露骨にやって大丈夫か?」

 悠一の言葉に正鳴は肩をすくめた。

「今回の騒ぎの全貌を眺める限り、カーネギー財団も興味を示しているらしいし、思いっきり動かないと取り込まれるだけだよ。あっちの世界のトロンと同じ目にはあいたくないでしょ?」

 悠一は渋い顔をした。

「世界の技術革新のために協力をお願いします。これはアメリカ合衆国の利益になりますと伝えればいいんだよ。あと合弁会社の工場をアメリカ合衆国で先に立ち上げる譲歩をすれば労働系の議員も落とせるはずだよ。」

 しばらく悠一は考えていたようだが、頷くと部屋を出ていった。


 こちらの世界おいて、もあちらの世界においても、アメリカ合衆国の議員にとって有権者の職場を増やすことは避けられない命題といっていい。


 自動車産業で成り立っていたボストンやデトロイトが自動車業の衰退で、街の存続が危うくなる状況まで向こうの世界では進んでしまっていた。

 街が消えるというのは比喩ではない。

 当然のごとくそのために大量の失業者が生まれている。


 根本原因は、性能が良くないのに値段が高いアメリカ車というイメージがついてしまっていたことも影響している。

 日本式の自動車販売の仕方と製造の仕方をすれば解決する問題だったが、ビッグスリーはプライドがあり、なかなか解決しようとはしなかった。代わりに政治的圧力をかけるばかりだった。

 消費者の目線を無視してブランドイメージだけで生産をしていたのが最大の癌だった。


 結局、日本の自動車企業が直にビックスリーの工場や設計現場に指導を行うという前代未聞の方策がとられて回復の兆しは出てきたが、やはり消費者の目線に立つということの重要性がしめされたといっていいだろう。


 しかし、ビックスリーはアメリカ合衆国での生産をことごとくやめて、賃金の低いメキシコに工場を移転してしまった。

 そこに豊田自動車がアメリカ合衆国で工場を作るという状況になってしまった。ようするにアメリカの雇用をアメリカ企業ではなく日本企業が確保するという状況になったわけだ。


 この間に日本企業はいろいろ叩かれてきたが、ようやくそれが収まったのもアメリカ合衆国の企業風土や政治風土をようやく理解したからだ。


 

 この間アメリカ合衆国政府は金融で資金を確保する形へシフトしてしまって、国内の生産業からの税収はあてにしない方向に動いてしまった。これがアメリカ合衆国の貧困層を増やすことにつながってしまった。


 国民を富ませるには生産業は必須なのである。機会平等がアメリカ合衆国の理念である以上、それを取り戻すことは急務だろう。



 一方の日本は、消費税の多重課税で卸問屋が成り立たなくなり、中抜きせざるをえなくなった。流通が確保されたからどうにかなった状況だ。水平平等や垂直平等などの税制論議はあるが、基本消費税の多重課税は海外では行われていない。

 産業の抑制を図ることで貿易摩擦を低下させるというのが消費税の影の目標の一つだったわけだが、いまの人口減少の状況では無理がある。

 産業を活性化するには消費税の単一課税化がひつようなる。



 一方こちらの世界では豊田自動車や三菱自動車、日本産業自動車、松田自動車、鈴木自動車、昴などが大日本帝国の自動車産業でしのぎを削っているが、シベリア方面の悪路の対応において三菱と昴が一歩リードしている状況のようだ。そのため若干大陸の自動車販売において豊田自動車は遅れた形になっている。

 アメリカ合衆国への輸出で、こちらの世界でも貿易摩擦の分野のひとつになっているのも事実だ。

 ヨーロピア連邦の国営企業のフォルクスワーゲンもアメリカ合衆国の自動車市場に進出を行い、しのぎを削っている。フォルクスワーゲンの語意の国産車の枠を超えてきているといっていいだろう。




 午後になって高級車リンカーンに送られてななこがやってきた。

 ななこは手土産にひよこサブレの折詰を持ってきた。


 ななこを部屋に案内すると、奈々子は縫いぐるみをみて驚いた顔をしていた。

「まさなり君の部屋って縫いぐるみがいっぱいあるね!」

 そして正鳴がそれを手渡すとぎゅっと抱いてから、なでたりして喜んだ顔をしていた。

 そして、ふとテーブルの上にチェスが載っているの気づいてななこがこれやろって伝えてきた。

 実は正鳴にとってもチェスはほとんどしたことがないゲームだった。

 ななこには正直にあんまりうまくないよと言ったが、ななこは大丈夫と胸をたたいて保証してきた。

 どうやら従兄弟の二人がよくやっているが、ちっとも教えてもらえずに、いつかは自分も指してみたいと考えていたらしい。

 四苦八苦しながら二人はチェスに取り組み始めた。

 結局二勝三敗の成績でななこにまさなりは負けてしまったが、疲れていたので二人ともそこでチェスの練習はやめた。

 ちょうどその時に女中の沢川さんがおやつとお手拭き、紅茶を運んできたのでおやつを食べながらななこと幼稚園でのことを中心に会話を楽しんだ。





 その日の夜、和幸からまた連絡があった。

 なんでも予言システムとやらで、予見された未来でアメリカ合衆国が北朝鮮を武力で叩こうとすると李家が何度もそれを金と違法薬物の力に物を言わせて押し戻すことが繰り返され、この間にどんどん中華人民共和国は軍事力を高めていき、アメリカ合衆国民が我慢できなくなった時点で開戦するととてつもない被害をアメリカ合衆国と日本に齎すそうだ。


「いやもう最悪だよ。日本もアメリカも中から食い破られてて、まともに自浄作用や組織維持ができなくされてるんだから。早期に開戦するほうが確実に被害が少ないだろうね。もちろん国内をある程度抑えてからでないと戦争前に大統領が言いがかりで弾劾されるの間違いなしだよ。」


 和幸によるとアメリカ合衆国の財閥やイギリス系のロスチャイルド財閥らは早期決戦を予定していて、一気に北朝鮮と中華人民共和国を抑えるために切り札の人物を大統領に据えることなるそうだ。

 あちらの世界はいろいろ大変みたいである。


 和幸自身は戦争は嫌いだが、必要のある戦争は必ずあるというのが持論だそうだ。

「戦争は人死にを生み出すけど、貯め込みすぎるともっと酷い死者をだしたり被害を出すのが文明の衝突なんだよ。必要性はあるけど、どんな形で誰を味方にして戦うかはその時代の人に委ねられている。神ですらそれは操作できるものではない。」

 和幸によると、平和だけで過ごせる世界は一見よいように見えて、外敵に対する備えがないから、非常に危険なのだそうだ。外からの文明に滅ぼされる一番のケースなのだそうだ。

 神の立場からすると争いあえとはとても言えないけど、和せる事だけを望んでも文明的には滅ぶという事になるそうだ。


 関係ないが、和幸は今の一部の宗教関係者に闇の存在と勘違いされているそうだ。名前の一つが闇を切り裂く光、秩序の守護者なのにえらい扱いだとぼやいていた。

 最近の一部の神や聖職者は、フォーマットの違う魂のデーターがあるとそれを上手く観察できずに、闇扱いするそうだ。

 名前の一つはイギリス王室の守護天使扱いをうけてるくせにイギリス王室に冷淡だなというと、和幸は肩をすくめていた。

「この惑星系における始まりの人類は日本人の祖先なのは確かなんだから、魂のシステムもそれに合わせて作られている。日本人が抑え込まれると、最悪、魂のシステムが機能不全に陥る。優先すべきはどちらかといえば日本にならざるを得ない。」


 あちらの世界では中華人民共和国や漢民族、華僑によるワンサイドゲームで白人とともに日本人も滅ぼされる方向に向かわされているそうだ。

 話し合いで決着つけれる状況は過ぎてしまっているが、国内問題を抑えきれてないから開戦できない。これが曲者だ。

 李家が表と裏双方で世論とメディアとアメリカ合衆国ロビーを動かすから朝鮮民主主義人民共和国と中華人民共和国と開戦したときに手遅れになる。

 中華人民共和国が勝てば、地球は次第にディストピア化して、文明が滅ぶ。

 中華人民共和国と李家を中心とした華僑のネットワークで、重管理社会が構築されることになるそうだ。

 ここにインターネットと人工知能が併用され、生まれから死ぬまで完全にひとは家畜以上に管理される存在になる。

 漢民族の一部の氏族を最上位とした、高次階層型社会になる。これがどれだけそれ以外の人種、民族にとって地獄か今の時点では理解されないことが多いだろうなと正鳴は思った。


 和幸いわく、予言の情報を流すことで、人民解放軍による核ミサイルによる先制攻撃戦略を何度かつぶしたが、それが良くなかったのかもしれないと本人は悩んでいた。



 ディストピア化のあとは官吏の管理への不満からの無知な民衆による反乱の乱発であり、それが文明を悉く破壊せしめることにつながる。


 和幸曰く、こちらの三大超大国並立の状況は文明的には非常に良い方向らしい。戦争が直に起きなくてもそれに対する備えは行われ、地域紛争で実戦を超大国の兵士が常に経験し、戦争の遂行能力は維持されているからだそうだ。


 なぜ戦争をできる状態にしないといけないかは、太陽系外の勢力が来た時にある程度の反撃を行えるからだ。一方的に蹂躙されないからだ。

 そのためにすでに何千年も前から人類に手を貸している神々がいるのだ。

「じいちゃん、俺は不滅だけど不死じゃないからな。何度となく死ぬ経験はしてきてるけど、いいものじゃないからな。もっとも魂の封印装置でも俺は束縛されないし、できないから金星の悪魔勢力の看守連中はお手上げだろうな。辻の家の奴が悪魔と契約してて、情報空間内の金星ドメインにきたことあってさ。俺が作った封印情報システムに俺を放り込みやがったんだよな。あれは低階層のドメインに魂の記録がされている連中を抑え込むのにつくった代物なのにさ。あのシステム領域の再構築やセキュリティの強化もしないといけない。」


 高天原は太陽にある太陽制御コントロールユニット群の居住区のことを指しているそうだ。どういう理屈かしらないが、こちらの世界の太陽にも高天原に相当する太陽制御コントロールユニット群があるそうだ。


 ひょっとして地球外の存在と関わる必要が出てくるのではと正鳴は正直うんざりしていた。

 そして長い夢から覚めると避暑地に出かける朝になっていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ