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歴史の狭間の中で  作者: 高風鳴海
序章
1/18

プロローグ

歴史を振り返って、本当にその歴史は正しいのかという疑問のもと書いてみた作品です。

ラノベ風の転生ものにしているのでそれほど四角四面の文学的な作品ではありませんが、いろいろ考えて書いてみました。


 ここは我々の存在している世界とは異なる歴史をたどった世界。大日本帝国が日本国にならずに西暦二千年を超えて存在している世界である。


 そもそもの原因はなんだったのか。海軍将校たちは上官の命令で1932年、昭和七年5月15日に首相官邸にて犬養毅首相の警護を命じられた。

 それというのも陸軍憲兵隊の東条英機を中心とするグループがクーデターを企てている事が内務省特別高等警察から四月三日の時点で連絡されていたからだ。


 我々の世界では表向き海軍将校が犬養毅を暗殺したことになっている。しかし実際は警護に向かった海軍将校に率いられた警護隊の奮戦むなしく犬養毅は殺され、その犯人としてその警護隊の将校たちが責を取らされた。

 これは内務省特別高等警察まで陸軍憲兵隊が掌握したことによる影響である。

 しかし、この世界ではそれはなく、東条英機らの内務省特別高等警察の掌握までは行えなかったために陸軍憲兵隊の東条英機らは海軍司令部の指揮のもと逆に捕縛されてしまったわけである。


 これらの影響はさらにほかの件に波及する。関東軍傘下の八路軍に参謀として辻政信が派遣されることなく1939年5月11日のノモンハンでの衝突は八路軍の圧倒的勝利で終わる。

 我々の歴史では東条英機の子飼いの陸軍憲兵隊出身の辻政信は大本営参謀の肩書をもとに大兵力により勝利を確定視されていたこの紛争に投入され、手柄を得ることを目的としていた。しかし残念なことに彼には補給の概念もち必要戦力を分析し行っていた八路軍の将校たちの意見は理解できず、戦力の逐次投入でシベリア進軍を予定していた兵力のほぼすべてを壊滅させてしまったのだ。


 我々の歴史と異なる原因はいくつかあるが5・15事件のクーデターの本当の意味での失敗が最大の要因といえるだろう。


 歴史のバタフライ効果は実に恐ろしいといえるだろう。




 そして関東軍からの十分な補給物資を得ることができた八路軍はシベリアに進軍し、バイカル湖を周辺をまずは制圧。これにより独自に補給経路を確立することに成功し、補給路の延伸化の問題を一部であるか解決した。




 外交的にはこれにより対ソビエト社会主義共和国連邦対策として、朝鮮半島北部の領土確定と満州進出の財政的支援を行ってきたアメリカ合衆国との密約の履行が可能になる。

 つまり満州に鉄道を整備したうえでそれをアメリカ合衆国に引き渡すという契約である。

 我々の歴史では、陸軍が政治を握ったためにこの履行が行われず、アメリカ合衆国との太平洋戦争に突入することになる。

 また、中華戦線における蒋介石政権へのアメリカ合衆国による武器供与は行われないために一部内陸部を除きほぼ大日本帝国が制圧に成功することになる。


 それと同時に、毛沢東らの旧八路軍の中国人部隊へのKGBの接触による関東軍からの離反は起らず、中国共産党の発生すら行われていない。

 勝ち馬に乗ることだけを命題にしている漢民族の民族性からの帰結である。



 これが我々のいる世界の本来辿るべき歴史だとしたら諸君はどう思うだろうか?

 民主主義が行われない日本などと唾棄する人もいるかもしれない。しかし、戦前の日本は陸軍憲兵隊が政権を掌握するまで、精神論での軍拡を肯定するような状況ではなかったのである。大正デモクラシーに続く、昭和デモクラシーが進みつつあり、同時に婦人参政権の確立も叫ばれていた時代だったのである。



 また、一方で財閥による商工業の独占を問題視する人もいるかもしれない。しかし、我々の世界では実際には財閥の解体は完全にはおこなれたわけではない。ブルジョワジー階級と共産主義者から呼ばれている階級は温存されている。

 それと同時にそれは国を動かすしっかりとした経済の歯車として動いている。富裕階級は今現在、メディアなどで操作されているような自堕落で退廃的な存在ではないのが現実である。幼少の時から英才教育とは聞こえがいいものの非常に窮屈な生活をさせられ、そのうえで経営者として適性がなければ容赦なく捨てられ、社会的に封殺させられるのが富裕層の常である。


 ではなぜ財閥を悪しき存在とアメリカ合衆国による占領軍統合司令部は喧伝させ、また再独立後も喧伝工作を継続させたか。それは日本の商工業の競争力を削ぎ、それと同時に技術革新を抑え込むためである。

 本来の零式艦上戦闘機の性能を代表とした日本のモノづくりの精神とその開発力をアメリカ合衆国は危険視したからである。 


 アメリカ合衆国にそこまで日本が敵視された最大の原因は満州開発の利権の秘密条約の不履行である。約束を守らない上に、牙をむく相手など誰が信用するだろうか。


 しかし、それにより日本は徹底的にアメリカ合衆国の経済的植民地とされているのが現状である。



 昭和天皇は戦争の責任をすべて自分にあると公言されたが、これはある意味トップにあった存在としての矜持でもある。だが、そこに最大の問題がある。東条英機や辻政信ら、陸軍憲兵隊の面々は一部のA級戦犯を除いて、赦免されてしまったのが現実である。

 現実にアメリカ合衆国との戦争を引き起こした中心のグループが日本の政治中枢にのこってしまったのである。

 そしてそのことを指摘すれば、すべて昭和天皇の言葉をもとに責任回避されてしまうのである。


 中華人民共和国の中国共産党が重ねてA級戦犯への追及を求めたり、靖国神社における合祀を非難するのも、八路軍時代の関東軍からの補給物資の打ち切りなどの仕打ちの酷さが根底にある。それを行わせたのも陸軍憲兵隊派閥の連中である。


 ちなみに八路軍の名前の由来は八岐大蛇からきている。シベリアを方々に食い散らす部隊としての意味である。日本書紀や古事記でスサノオノミコトに討伐される悪役を軍名の題材にされたのは中国人部隊があることへの侮蔑の意味も含まれているのはある意味当時の陸軍内部の力関係の嫌らしさである。



 ちなみに満州事変を起こした石原莞爾もこの陸軍憲兵隊のグループに属している。表向き東条英機とは不仲であったように一般には喧伝されているがそうではない。平成における政党の変遷における東京方面の派閥の動きをみていればそれはある意味あきらかであるわけでが、ここでは詳しくは述べないでおこう。



 我々の世界の日本の歴史はいくつもの真実が隠されている。私は共産主義は大嫌いだが、同時に、それに染まったとはいえ旧八路軍軍属である毛沢東らへの弔意としてこれを記す。

 彼らが本来歩むべきだった歴史が失われたこの世界への嘆きでもある。

 私は八路軍の兵站担当将校だったが、関東軍の将校へ補給品の未到達への催促に新京へ向かった時に捕縛され、本土へ強制送還された。当時の有力者の一族であったために処刑こそされなかったが、除隊させられて今に至る。

 今の中国共産党に義理はないが、前の世代にはある故これを記すわけだ。



 統制派と皇道派の派閥争いなんぞ嘘っぱちである。あれはすべて陸軍憲兵隊によるデマゴーグとプロパガンダの結果にすぎない。真実ではないのである。彼らは戦後もその活動を精力的に行ってきていた。エイズの緑十字事件も彼らにより引き起こされたといっていい。



 そして私は今、本来の歴史をたどった世界との境界にいる。この上なく皮肉だ。

読んでいただき誠にありがとうございます。

どうぞ末永くお付き合いいただけるとありがたいです。

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