「音……」「衝動……」「透過性……」
音……
くだらなく耐えている絶え間ない電子音
しかたなく放置している不安な雨垂れ
乱される暖かな生活の声と
病んだ身体の中で巣食う速い脈拍
カーソルの点滅がテンポを強制するから
ヘッドホンを着けた
流れこんでくるお気に入りは
軽やかにこころを浮かべる
一体わたしたちのテンポは何で決まるのだろう
身体のリズムに従っているばかりではない
社会のテンポに背を押されまたは足踏みを強制されている
季節の切れ目は思うがままにいのちを揺さぶり曖昧さを突きつける
選べない音の海の中で 知らず等しく浸されている足元
孤独の波は何時の間にか 膝上を越えようとしている
こんなにも共有できる孤独な音……音……
それ故にわたしたちは一人なのだ
衝動……
広がりつつある波紋の始まりを取り出して集めて
ドーナツの上に並べたら ふるふる震えて
ついに空白へ飛びこみ始める
空白に放たれた波紋は広がらずに留まりその場でじりじり焦げはじめる
透過性……
喚きと嘆きが綱渡りをして鉢合わせした
お互いはお互いを透過し合う
通り抜ける時 通り抜けられる時
吠える夜の獣の悲しみが ありふれた朝に生き残った無念が
混ざり合い こころの思わぬ鍵のない扉をバタバタと開ける
お読み頂いてありがとうございます。