第三十九話
眠りから目を覚ますと、三人が立っていた。
「お目覚め?」
俺に気付いたリンカが声をかけてくる。
「え~と俺はどうしたんだっけ?」
俺は今現在置かれてる状況を良く理解していない。隣には由香梨がいつの間にかいて寝てるし。
「たぶん、緊張の糸が切れて気が緩んだのね。揺すってもまったく起きなかったわよ。それは由香梨も同様みたいだったけど。だから私達は先に空間の統合と修繕をやってあなた達が目を覚ますのを待ってたってわけ」
確かにフルーネとの戦いが終わった後気が緩んでしまったのは覚えてるがそのまま寝てしまうとは情けない限りだ。だけど由香梨も無事だと言う事はジャッカに勝ったということだろう。
そう思っていたら、どうやら由香梨も目を覚ましそうだ。
「ん……あれ、真にリンカ達もどうしたの?」
擦りながら体を起こすのを失敗して勢い良く後ろに倒れる。
「由香梨さん、大丈夫ですか?」
それを支えたのはホタルだった。マントの中に手を入れ、出すときには水筒を持っていた。すぐに蓋を外してコップに中身を注ぐ。中にはコーヒーが入っていて、湯気と共に芳醇な香りが辺りに満ちる。
それを少し傾け、口を付ける由香梨。どうやら落ち付いて、眠気も飛んだらしい。
「ふ~……ありがとホタル。真も無事だったんだね。良かった」
心の底から安心したと言わんばかりに息を吐き続ける。目が覚めて思考も正常化したようだ。
「そっちも無事見たいで安心した。それでリンカ達はいつの間に?」
「あんた達がぐっすり熟睡してる間に、空間が分裂してたのは分かったから。真の方にコウを、私が由香梨の方に行って無事を確認した後、魔法を使って統合したのよ。でそれが丁度済んだ頃合で目を覚ましたってわけ」
「そっちは大丈夫だったのか……て聞くまでもないな。傷一つ、汚れ一つ付いてないし」
「んにゃ~結構大変だったのは大変だったよ。そこそこ強い奴と数が配置されてたし、ここまで時間喰ったのはそれだけ苦戦したということだし。ま、僕にかかれば問題ないけどね」
コウが胸を張り自信満々に宣言する。
「はいはいそうですね」
リンカはうざったそうにばっさり切り捨てた。
「だけど二人共無事で良かった。それじゃ今日は二人が〝刻み始める歯車〟で戻してみようか」
「そうね。最後まで全部やった方が達成感も一塩でしょ」
リンカも賛同し、俺達の腕を握り、引いて立たせる。
「眩暈、立ち眩みなどありませんか?」
心配そうに顔を覗きこんでくるホタル。
「大丈夫だよホタル」
笑って安心させる由香梨。
「そうですか。良かったです」
ホタルは安堵の表情を浮かべ、下がる。
「じゃあ二人共最後の締めよ。しっかりやりなさい」
俺達は前に出る。その時由香梨が俺の手を握ってしっかりと掴む。俺も強く握り返し止まったままの世界を見据える。
「〝刻み始める歯車〟は過去を振り変えながら名を言えば出来るから気楽にやってみなさい」
過去を振り返る。それは俺がここにいる理由であり、戦う根源でもある、だから俺は歩き続けなきゃいけない。
〝刻み始める歯車〟
俺と由香梨の声が重なって響く。どこかでガチャと言う様な機械音がした気がした。
「呆気ない物でしょう。それじゃ一回学園に戻って検査よ。念のためにね」
こうして俺達の最初の戦いは終わり、世界の裏の真実を知り、その辛さを実感出来た。だけど辛さだけでなく喜びも楽しみを知ることが出来た。だから俺はそれを教えてくれたフルーネの事を忘れはしないと心に刻む。
これが俺達の物語の最初の一ページ。
ちなみにこの後、どこかで聞きつけてきたクラスメイトと共にパーティーと称して騒ぎまくり、リンカに説教されたのはまた別の話。
エピローグ
【私はあなたに会いたい
あなたは私に会いたい
それが私の願い それはあなたの願い
闇の帳が降りる時 私はあなたに出会うでしょう
光の世界が終る時 あなたは私に出会うでしょう
私が鍵を あなたが錠を
闇の祝福を受けた二人は出会い真実の扉を開ける】
暗闇の中、少女は一人虚空を見据えて詠を唄う……。
エピローグ
私はあなたに会いたい
あなたは私に会いたい
それが私の願い それはあなたの願い
闇の帳が降りる時 私はあなたに出会うでしょう
光の世界が終る時 あなたは私に出会うでしょう
私が鍵を あなたが錠を
闇の祝福を受けた二人は出会い真実の扉を開ける
暗闇の中、少女は一人虚空を見据えて詠を唄う……。
第一部はこれにて終了となります。第二部はただいま鋭意執筆中ですが私の執筆スピードがとてつもなく遅いため相当お待たせしてしまうと思います。ですが半年かかろうが、一年かかろうがこの作品は必ず完結いたしますので気長に待っていただけると幸いです。




