第三十四話
教室のドアを開いた瞬間、クラスメイト全員が俺達に詰めかけてきた。
「二人共大丈夫だった!?」
「怪我はしてないか!?」
「災難だったね。良く生きて帰って来た!」
心配してくれるクラスメイト、ここまで纏まったクラスは向こうでもないだろう。向こうになくてこっちにはある物はとても温かくそして優しい。
「大丈夫だよ。怪我はしたけどリンカ達のおかげで助かった」
「うん。だから委員長そろそろ離れてくれると助かる」
いつの間にか委員長が由香梨を抱きしめていた。
「たはは、ごめんごめん。でも二人共無事で良かったよ」
笑いながら由香梨を解放する。
「真、襲ってきた敵はどうなった? リンカ達が殺ったか?」
人波を掻き分けて亘が前に出てきた。
「いや、リンカは俺達の事を心配してくれて敵に止めを刺さずに逃がした」
「そうか……今度は必ず俺がお前達を守ってやる」
それだけ言って亘は自分の席に戻っていく。
「亘があんなにも素直になるなんて珍しいな」
俺の肩を組み、信がそう言っている。
「亘は不器用で自分の思ってる事を表現できないだけ。そうだろ?」
「ああそういうこった。真の理解力が高くて助かるぜ。あいつあんなんだから誤解されやすくてさ。そのつどフォローに回されて大変なんだ」
「……本当にこっちの奴らはいい奴ばっかだな」
「当たり前だろ。こんなお気楽な奴らが集まってるところだがいつ戦場に出て戦うはめになるかも分からねえんだしな」
「一番お気楽な奴が何を偉そうなこと言ってんだよ!」
周りから信に向けてヤジが飛んでくる。
「うるせえよ。てめえら」
それに笑って答える信。すると後ろから、
「あんた達、入り口で固まってんじゃないわよ」
リンカが俺達の後ろで手を腰に当て半眼になって仁王立ちしている。
「さっさと席に着きなさい」
すぐに蜘蛛の子を散らす様に逃げ去っていく。俺達もその流れで席に着いた。
教壇に立つリンカ。その脇に当然のように控えるコウとホタル。
「みんな知ってる通り昨日真と由香梨が襲撃された。襲撃者はフルーネとジャッカ。〈雷〉と〈水〉の〈自然魔法〉を操る魔法使いよ」
黒板をスクリーンにフルーネとジャッカの画像が映し出される。
「フルーネはこの金属の棒で接近戦を得意とし補助的に魔法を使う戦術で一方ジャッカは水を使ってフルーネのサポートをし、遠距離攻撃を好むみたいだったわ。二人のコンビネーションは十分警戒する必要がある。可能なら各個撃破するのがいいわ。フルーネの方は手傷は負わせたからすぐにこちらに来ることはないと思う。それでもいつ襲ってくるかなんて分からないからそれぞれ対策は考えておくように。何か質問は?」
「はいは~い」
委員長が高らかに手を上げる。
「私達が勝てる様な相手なの?」
「無理」
リンカはばっさり切り捨てた。
「りょうか~い。じゃあ恥も外聞もなく逃げる方法を考えとけばいいのね」
それでも朗らかに答える委員長も委員長だが。
「俺は仲間を傷つけたそいつらをぶち殺したいんだが」
「落ち付け亘。その話し俺も乗るぜ!」
「落着くのはあんたもだバカども。あんた達がこの中じゃ強いのはちゃんと分かってるけどそれはこの学園の中だけ。戦うのは私達の仕事よ。あんた達は引っ込んでなさい」
リンカの言葉に亘は舌打ちをしそっぽを向く。信も苦い顔をしてる。
「それじゃ授業を開始する。今日は……」
気持ちを切り替えた様にリンカが授業を始める。
それから一週間、授業ではリンカから魔法の基礎と〝魔法の矢〟を習い、朝練ではコウから〝強化〟と実戦剣術を習い、委員長や信、亘とはどうやって委員長の料理を回避するかを全力で思案し結局はホタルに助けてもらったり。そんな平穏な日々を過ごしていた。心の中でこの平穏が続く事を祈っている俺と紗姫を速く助けたいと焦る俺がいたが必死に押し殺し、この平和を堪能していた。けどやはり俺の運命を管理する神様とかいう存在は試練を課すのが好きらしい。
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