第二十六話
「コウ、このプリントコピーしてきて」
私はパソコンを叩きながら授業で使うプリントをコウに渡しながら言い付けるが、コウは椅子の背もたれにだらしなく預けたまま一言。
「嫌」
と宣いやがった。
「あんたも少しは仕事らしい仕事しなさいよ。実戦訓練以外全く働かないんだから。雑用ぐらいしてくれてもいいでしょ」
「僕は戦闘専門なんだから。教師の仕事なんてかったるい事は性に合わないよ。」
だらけた格好のまま動く気配がないコウ。仕方なく私は作業していたパソコンから顔を上げ、席を立ち職員室に隣接してるコピー室に入る。
「それにしてもあの二人案外すんなり受け入れてくれたわね。紗姫の事も魔法の事も色々と」
椅子に座ったまま私に付いてきたコウに話しかける。
「これは僕の予測なんだけど二人の中に流れている紗姫の魔力がなんらかの形で働いてるんだと思うんだよ。紗姫の心が皆と仲良くして欲しいってね」
「それが本当なら紗姫は二人の事大事に想ってたのね」
「そうじゃなきゃ自分の魔力を分け与えたりしないんじゃない?」
「紗姫は優しかったから……初対面でも助ける為ならしてしまいそうな気がするわ」
「ハハ、そうかもね。自分の事よりも僕達の心配ばかりしてた気がするよ」
コウは本当に可笑しそうに笑い、私もその紗姫の姿を思い浮かべて紗姫ならやりそうだと笑みを浮かべた。そんな朗らかな空気の中、やはり無粋な連中はとことん無粋らしく私の体に走った悪寒。私は思わずため息を吐いていた。
「いつもいつもなんで来るのかしら。いい加減諦めてくれると私も楽ができるってのにな」
「来る者は拒まず、害なす者には死を。でしょ」
「そうだけどね」
ガラッ勢い良く扉が開き、滅多に慌てないホタルが掛け込んできた。
「お二人共急いで用意してください! 真さんと由香梨さんが〝別界〟に引きずり込まれました」
「チッ明らかに二人の魔力を狙って来たわね!」
「リンカちゃん! 飛ぶよ!」
「ホタル、開けて!」
【輪転せよ 輪転せよ
力を示せ 意思を示せ
それが我等の証となる
さぁ勝鬨の声を上げよ
開け 導け
我等は死ぬための戦いを始めるのではなく
我等は生きる為の戦いに赴くのである】
〝〟
私達の足元に魔法陣が展開され狭間の世界に飛ぶ。風が私達の体を包み込み優しく持ち上げ運ぶ。こじ開けた空間の狭間を突き進む。空間の狭間には常に砂嵐の様に世界の残滓が舞い上がり、視界を狭め、行く道を阻む。舞い上がる風はその風で世界の残滓を切り開き、〝別界〟に向かう。だがその途中私は紫のノイズを見つける。
「……?」
疑問がすぐに確信に変わったのは一瞬だっただけどその一瞬が命取りになってしまった。気付いた時には私達を覆う様に雷の檻の中に囚われていた。
「「「!」」」
そして瞳を焦がす紫光が世界を埋めると私達は予定とは別の場所に飛ばされていた。
「やられた……罠を張られてたなんて……」
「あの二人に僕達が付いてるって知ってて張ってたみたいだね。なかなか豪勢な罠じゃないか」
コウはとある方向に向けて指を指す。コウが示す方向には〝犬蛇〟を初め、ライオンの姿をし体中から血を滴らせ闊歩している〝血晶獅子〟
「うざすぎる……ホント勘弁してくれないかしら……ホタルどう逃げられそう?」
「出来るとは思いますが時間がかかると思われます。その間にあの使い魔に邪魔されることは間違いないでしょう」
「殲滅してから脱出した方が結果的に速いと思うよ」
「そうね。そうしましょう」
「そうこなくちゃ! 暴れるぞ~‼」
「本来の目的を忘れないでくださいよ。コウさん」
「分かってる。三十秒で片づける!」
「ならその宣言通りに終わらしてよね! 二人が待ってるんだから‼」
私とコウが先陣を切って使い魔の群れに突っ込む。一秒でも早くこの世界から抜けだし二人の元に辿り着くために……。
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