第十八話
教室を飛び出して一番障害物の多そうな場所を探した俺達は六角形の校舎に囲まれた中庭の植え込みに囲まれた一角に身を潜めていた。植え込みを背にして貸し与えられた銃を構え緊張の糸を緩めずに周りを警戒する。
「この歳になって鬼ごっこをする事になるとはな」
「でも遊びじゃないよ」
由香梨も緊張しているのだろうその声は固い。
「二人共そんなだとまともに戦えないよ」
俺の後ろ植え込みの中からそんな声がした。俺はすぐさまその場から飛び退き銃を後ろに向かって構える。そこには植え込みから顔だけを出した間抜けな姿の委員長がいた。
「ども、委員長事こと神代明菜で~す」
片手を上げながら這い出てくる委員長。ともう一人その後ろから長身痩躯な体に若草色の髪と翡翠色の双眸の男も植え込みの中から這い出てくる。
「何で俺までこんな間抜けな登場しなきゃならないんだ」
とぶつぶつ呟いてるが委員長は聞こえてないのかはたまた聞き流してるのか無視して俺達に話しかけてきた。
「いや~二人共探したよ。隠れるのうまいね~」
「だが委員長にはバレちまった。また場所を変えないとな」
「それなんだけど私達と一緒に行動しない? 人数が多い方が逃げやすいのよね。逃げるにしても戦うにしても」
「俺達はまだ魔法を使えないぞ。使えるにしても支給されたこれだけだ」
俺は銃を軽く持ち上げ示した。
「平気平気、この学校の教育方針は実戦あるのみというスパルタ教育だからにまずは慣れる事から始めないと。援護とかの練習にもなるからぜひ組んでくれると嬉しいな」
「どうする由香梨?」
「私は委員長達と一緒に行動した方が良いと思うよ」
「よし。委員長よろしく頼む」
俺と由香梨は揃って軽く頭を下げる。
「うんうん良かったよ受け入れてくれて。そうそうこっちのノッポの男の子は朝崎信君教室で戦ってた亘君と一緒で私の部下だよ」
「お前が勝手に言ってるだけだろうが!」
信は委員長に怒鳴るがまた無視。
「信君、二人に自己紹介したら?」
しかもこういう始末。信も諦めてるのか大きな溜息を一つ付いてこちらに向き直る。
「朝崎信だ。このネジの外れたバカと教室で戦っているだろう亘とは腐れ縁でさ一緒に紗姫さんに助けられた。感謝してもしきれないだから俺は必ず紗姫さんを助け出したいと思ってる。それはお前も一緒なんだろ?」
信はそういいながら俺に手を差し出してきた。その手をしっかりと握り声に覇気を込め言い切る。
「当たり前だ」
信は力強く握り返し笑みを浮かべた。
「それじゃそろそろここから移動しようか。多分亘君は捕まってる頃だろうし獣は次の獲物を求めて行動を開始してるだろうしね」
「そいつが勝ったって可能性はないのか?」
「「ない!」」
「そんなはっきり言わなくても……」
「甘い! 甘いわ由香梨。リンカの恐ろしさはあの兄妹の中でも群を抜いて恐ろしいのよ。あのドSにかかれば人の精神をぽっきり折る事なんて造作もない事なのよ!」
「なんかテンション可笑しくなってないか?」
「ああ、あいつはクラスの中でもリンカから酷い目に合わされたからな」
容易に委員長がリンカに弄られている姿が想像できた。まだ由香梨にポツポツと語ってそれに逐一相槌を打っている由香梨も若干顔を青くしているように見える。
「おい! 明菜そろそろ移動しないとお前を狩りにリンカが来るぞ」
耐えかねた信が委員長の肩に手を置いて正気に戻す。
「ハッそうだったすぐに移動しましょう。こっちよ」
先頭を進む委員長にさっきまでの怯えた様子はなかった。頼もしいのか頼もしくないのかイマイチ掴めない俺だが今は彼女に付いていくしかない。
「それでどこに隠れるつもりなんだ?」
「校舎の裏手の方に森があるんだけどそこに開けた更地があってしかも御誂え向きに木々に隠れる形で小高いとこがあるのよ。そこに隠れてリンカを遠距離から狙撃して仕留めるわ」
「私の立てた作戦はこうよ……」
委員長は俺達にその策を話し始めた。
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