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一欠片の軌跡  作者: 皇 欠
二章~忘れられた出会い 新しい出会い~
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第十七話

「まさかこんな簡単に魔力を引き出してくるとは思わなかった。なら予定を変更しないと行けないわね」


私はすぐに真の首に手刀を当て、気絶させた。


「真!?」


由香梨がすぐに真に駆け寄り体を揺さぶる。


「気絶させただけよ。安心しなさい。それにしても魔力だけであの圧迫感恐ろしいものがあるわね」

「真さんにそれだけの才能があっただけとは言い切れないですよね。やっぱり」

「一概にないとは言い切れないけど紗姫をあんな風にした奴に対する憎しみが凄まじい事だけは確かよ」

「僕も驚いたよ。あれだけ純粋に憎しみだけで構成された魔力を見たのは初めてかもしれない」

「まぁ私も奴と対峙したら我を失うかもしれないけど」

「「「勘弁して下さい」」」


コウと教室の隅に避難していた全員が声を揃えて言ってきた。ちなみにホタルはニコニコと笑みを絶やさないがその額から冷や汗が一滴垂れるのを私は見逃さない。


「あんた達私を何だと思ってるのよ?」

「「「鬼」」」


私の顔に青筋が浮かんだのが分かった。


「あんた達、痛い目見たいようね」


無意識の内に低くなった声、私はその声が相手にどういう効果を与えるか把握している。すなわち絶大なる恐怖。私が狙う獲物達はようやく自分達の失言に気付いたのか顔を青ざめさせ始める。


「リンカ、ちょっと落ち着こうね。その鬼も裸足で逃げ出すような笑顔を辞めてくれないかな?」


委員長が皆に押されて前に出て話しかけてくる。


「あら、可笑しいわね鬼は私じゃなかったかしら?」


じりじりともう下がれないだろうが委員長はグイグイと押してどうにかして私と距離を取ろうとしている他のクラスメイト。その無駄な努力に更なる氷の笑みを張りつけて一言。


「さぁ狩りを始めましょうか!」


そう言って私の傍らで我関せずという顔をしていたコウの顔面を掴んで委員長に向かって投げ込む。


魔封壁(パールム)


すぐさま反応した委員長が前に障壁を張り、(コウ)をガードし後ろにいるメンツは蜘蛛の子を散らす様に逃げ出す。ある者は正攻法に廊下に逃げ出し、ある者は窓から脱出を図ろうとする。


「お前ら、私から逃げられると思うなよ?」


足に魔力を集中する。もう体の延長となるまで昇華した形なき私の体、魔力を纏った私こそが本当の私。


「ホタル、真と由香梨は任せたよ。魔法を学ばせるには実戦を見て体験するのが一番早いからね」

「お任せ下さい」


床を強く踏み込み真っ直ぐに飛ぶ。そのタイミングに合わせて向こうもこっちに突っ込んできたバカがいた。赤茶けた髪は緩く波打ち気の強そうな髪と同色の眼、好戦的な顔付きの口元からは八重歯が覗いている。こんな喧嘩っ早いバカはこのクラスには一人しかいない。いつの間にか握られている剣に合わせるように魔力を纏わせた手刀でガードし文句を言ってやる。


「亘あんた邪魔よ。あんた達三人は一番厄介だから最後に回そうと思ってたんだけど」

「あんただったら五分で捕まえて来れるだろうがその間俺が暇だから相手してもらうぜ」


亘の左手が閃く。いつの間にか実体化させたのか、短刀を握りこんでいた。私はその攻撃を右足からの蹴りで短刀の側面に当て弾き飛ばし、同時に撃ち込む体制を整えていた拳で亘の胸を殴りつける。だが肉を叩いたはずなのに殴った感触は金属の壁を殴ったような鈍い痛みが帰って来ていた。

だが元々の目的である離れることは出来ていたから上出来としておこう。


「出現のスピードと場所の制約がうまくなったんじゃないかしら」

「俺だって遊んでるわけじゃない」


カラッ、私が殴ったポイントから小さい手のひら大の盾が落ちた。簡素な造りだがそれは盾以外の何物でもない。


「魔力纏ってなかったら拳が砕けてたわよ」

「罅一つ入らない癖にいけしゃあしゃあと言えるものだ」

「う……ん……」


どうやら真が目を覚ましたみたいだ。手加減したとはいえこの短時間で意識を取り戻すとはしっかり体は鍛えてるみたいね。


「起きたかしら真?」


視線は亘に合わしたままそう問いかけてみる。


「真? 大丈夫?」


ずっと寄り添っていた由香梨が真に声をかけた。


「え……っと……俺どうしたんだ?」


真は私になにされたか気付いてないようだ。ならそれは知らないまま――。


「リンカさんが手刀で気絶させたんですよ」

「何故に速攻バラすかな!? ホタル!」

「別にリンカさんは何も悪い事をしていらっしゃるわけではないのですから良いではないですか?」

「いやまぁそうだけどさ……」

「真さん、リンカさんを攻めてはなりませんよ。リンカさんもしたくてしたわけでないのですから」

「どういうことだ?」


説明が足りないホタルに困惑した真は補足を求めるように由香梨を促した。


「私にもよく分からないんだけど、真の魔力が暴走したのをリンカが止めてくれたみたい」


由香梨が補足した説明は大体的を得ているものだった。由香梨が検討外れの答えを返すのではないかと冷や冷やしていたが満足いくものだったので良かった良かったとほっと安心したのも束の間、殺気が一気に膨れ上がり、私の胸に向かって鋭い切っ先が飛んでくる。すぐさま手を払い軌道をずらす。


「あっぶな、今の完璧に殺すタイミングだったわよ!?」


亘に非難の声を上げるが、冷ややかな声で言い返してきた。


「戦闘中はどんな事があっても気を抜くべからずと教えてくれたのはお前だったよな」


上げ足を取られた格好の私は二の句を告げなくなってしまった。


「確かに言ったわね。でも……」

「所でリンカともう一人は何をしてるんだ? 喧嘩か?」


言い返そうとしたタイミングで真がそんな事を言うから私は言うタイミングを失っちゃったじゃない! と心の中で叫んだ。


「リンカさんは授業をしてらっしゃるのですよ。この学校でのメインの授業となる実戦をしてらっしゃるのです。もちろん座学もありますがこちらの方に力を入れてるのは確かです。さてそれは何故だと思いますか?」

「そりゃ、戦う運命にあるからだろ」


真は何を今更と言うようにあっけらかんと答える。わずか短時間でかなりこっちの世界に毒されてるわね。


「正解です。私達はあの空間に入ってしまったら戦いを強制されます。ですが必ずしも戦い倒す必要はないのです」

「どういう事?」


淡々と進むホタルの説明。真も由香梨も相槌うちながらしっかり聞いている。良い生徒だ。あいつらに染まって欲しくないな~と物思いに耽っていたら何もない中空から剣が降って来た。


「あれ私そんなに隙だらけだった?」

「ああ。だから俺も座標変更しての術式が組めたんだろうが」

「ならもっと確実に殺れる方法を使わないと」

「俺は近接格闘が好きなんでな」

「そうでしたね」


軽口を挟みつつまた斬り合いを再開する。


「あの空間を敷かれれば私達魔法使いは必ず察知出来ます。つまり援軍が来るまで逃げのびれば援軍と合流して戦えばいいのです。私達が真さん達を助けられたのも敵に殺されてなかったらからですしね。今リンカさんが行ってる実戦も端的に言えば鬼ごっこですし」

「なんかシュールだな」

「いえこれが一番大事なのですよ。自分よりも強い敵に出会ったらどうしますか? 真正面から戦いますか? 奇策を弄して奇襲で倒しますか? それでも埋まらない力を持った敵が現れたらもう逃げるしか生き残る方法はありませんよね」

「うん、確かにそうかも」

「今リンカさんが行っている実戦は敵に発見され迎撃しながら距離と時間を稼ぐという物です。ルールは簡単、鬼であるリンカさんに捕まらないように逃げて、隠れて、迎撃する事です。ということでお二人にも参加していただきます。準備はよろしいですか?」


二人が驚くのを視界の端で捕えてた私は苦笑いを浮かべ、ホタルに注意を促す。


「ホタル私に言っといて自分をしないわけはないわよね」

「分かっていますよ。リンカさん本当に心配症なのですから。お二人はまだ魔法を使えませんのでこちらをお渡しします」


ホタルは制服のポケットから二丁の小型の拳銃を取り出した。黒光りするその姿は限りなく本物の様に見えるが俺は一応ホタルに聞いてみる。


「これって本物か?」

「いえ、これは形だけは銃ですが中身は学生証と同じで魔法機能を組み込んだものです。主に攻撃用の機能です。使い方は簡単で引き金を引けば〝魔法の(ルークス)〟が撃てるように設定されています。ただ矢に使われる魔力は勝手に体から銃に吸収されますので使いすぎには気を付けてください。もちろん防御に学生証を使われても構いませんがまぁいきなりでは多分使えないと思います。変に気負わずリラックスしてリンカさんから逃げ切ってください。何か質問はありますか?」

「捕まったとなる判定はどうなる?」

「リンカさんにタッチまたは魔法によって捕縛されたら捕まったと見なします。他には?」


やる気のある声で真はホタルに問いかける。


「逃げられる範囲はどこまでだ?」

「それは学生証のマップに表示されますのでのち程ご確認ください。なお他の教室はダメですよ」

「よし、それだけ分かれば十分だ。行くぞ由香梨!」

「うん!」


真と由香梨は勢いよく教室を飛び出していった。


「さて一分経ったら追いかけますか」

「の前に俺の相手をしっかりしていけ」


亘は機嫌を損ねたようで鋭い眼光で睨んできた。


「もちろん、亘はここでゲームオーバーよ」

「ああ、まだお前には勝てないだろうが五分は持たせてやるよ!」


亘は実体化させたナイフを二本私に放ってくるがそれをステップだけで回避し、魔法を発動する。

術式起動


〝十からなる水を纏いし魔法の(アーバ・ス・ルークス)


私の周囲に十個の水玉が出現し矢となって亘を襲わせる。


「お前俺をなめてるだろ!」


亘は激昂し、両手に日本刀を出現させ、矢を全て叩き落とし斬りかかってきた。


「いや、私あんたみたいに速い術式ないし、まぁそれでも直情馬鹿なあんたのあしらい方は熟知してるわよ」


私は床に残っていた水に魔力を通し形質を変化させ液体から気体に変え一気に蒸発され視界が白に塗り潰される。一瞬の目くらましただが私にとっては十分な時間。


「タッチ」

体を低い体勢のまま突っ込み亘に触れる。


「ジャスト一分、亘まだまだ甘いけど成長してるわよ」

「次こそ勝つからな!」

「励みなさい。それじゃホタルいってくるわ」

「いってらっしゃい、リンカさん」

「さて今日は何分逃げのびられるかな」

 

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