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プロローグ

初投稿です。温かい目で見てやってください。

毎日がつまらない。


大きな不満があるわけではない。家はそれなりに裕福な方だし、欲しい物はたいがい手に入った。


小さい頃から英才教育と呼んでも差し支えないものを施され、言語は4つ話せるし、一流の大学にも合格した。


友人は多い方ではないが、一人でいるのを好むので大して寂しいと感じたことも無いし、趣味と言える旅行は、親の脛をかじって20

歳そこそこながら30カ国以上を巡らせてもらっている。

本を読むのは大好きで、神話や歴史小説、ファンタジーやライトノベル、ネット小説から物理学や心理学に至るまで乱読していたが、大学生になって急激に読む量が少なくなった。


もう一度言う。大きな不満は無い。


しかしながら、なんというか、自分の未来が見えないのだ。


もちろん一流大学に進んだ以上は良い職に就き、金を貯めて早く仕事を辞めて世界を回るという漠然とした夢はある。

しかし、具体的にといわれると・・・。


自分が何をしたいのか、将来どうなりたいのか。そんなビジョンが見えてこない。


目的が、持てないのだ。


今の自分はからっぽの人形だ。


ただ毎日を漠然と生きている。


朝起きて、顔を洗って、食事をして、本を読んで、ネットをして、風呂に入って、寝て、の繰り返し。


ときどき旅行に行ったり友人と遊んだりしているが、根本的な問題解決にはいたらない。


自分は何のために生きているのか。。。



夏休みという長期休暇で、一人でいることが多いと、こんなことばかり考える。


「くだらないな。本当に、くだらない」


彼はそうつぶやくと、再びベッドに顔を埋めた。


地方から大学に通うために上京してきて2年。先月2度目の引っ越しをすませ、キャンパスへのアクセスが格段に良くなったワンルームマンションの一室。それが彼の城であり、領域だった。


(俺はそれなりに優秀だ。自分で言うのもなんだがな。だが、何事にも本気になれない。何故だ?そして、他人に興味が持てない。人の顔なんてすぐに忘れるし、名前も覚えられない。やっぱ社会不適合人間一歩手前だよな・・・)


夏休みもそろそろ半分をすぎようとしている。来週から友人とアメリカ旅行に出かけるし、明日から大阪に旅行する予定を立てているが、この1カ月は何も、本当に何もしなかった。24時間20日くらい、ひたすら怠惰な生活を続けてきた。


(勉強しなくちゃいけないってのはわかってるんだがな。短い人生こんな無駄な時間を過ごすことはあってはならない。特に上を目指す人間ならば・・・)


そんなことを今まで何回考えてきただろうか。そして、同じ結論に至り、しかしやはり怠惰な生活を送る。


「はあ、いっそのこと全然違う世界に行けばいいのにな。でも、俺がいなくなったら母さんが悲しむだろうな・・・。母さんだけはな」


友人たちは、彼が死んでも驚きはするだろうが、悲しみはしないだろう。その程度の友人でしかない。


そして、そんな関係しか築けていないのは、偏にかれがそのような関係を望んだからだ。


「まあ現実的に考えて、俺が中世とかファンタジーの世界に行って、何ができるかって話だよな。言葉は違う、人種は違う、身分はない、村人Aで終わりだよな」


彼は自分を知っている。自分が大した存在ではないと。彼のステータスはこの現代の日本にいるからこそある程度保たれているのであり、彼自身には特に価値のない、とるに足らない存在にすぎないということを。


「それでも、どうせなら・・・。あと60年くらいたって、死ぬ直前になったら、神とかが俺を連れて行って、今の歳でファンタジーの世界に連れて行ってくれるとかなら行ってみたいけどな」


彼は自嘲の笑みを浮かべながらそんな夢のようなことを呟く。


そんなことはありえないと。自分はこの世界で生きていく。そして、人の上にたつのだと。


それが自分が一番楽しく生きていける、最善の道だと信じて。


「寝よ」


今日もまた一日、何もしない怠惰な生活を送って、彼は眠りにつく。


明日もまた、今日と同じ一日が続いているということを疑わずに。

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