第1話
五大列神とは、世界で最も強いとされる5人を順位づけして表されたものである。
選考に人の手は加わっておらず、世界により自動で最強の5人が順位づけされ、神と付く二つ名と紋章が本人の意思に関係なく与えられる。
五大列神の紋章は世界各地に存在する石版に刻まれ、実質それが世界TOP5の実力を持つ者たちを示すランキング表となる。
世の戦士たちは五大列神に名を連ねるべく、日々己を研鑽していた。
◆◆◆
そこは深い森の中。そこに立てられた小屋が真上から日を浴びる。
「ふぁ〜あ、また真昼間まで寝てしまった…」
そこに住む耳の尖った少女はあくびをして体をのけぞらせ、胸元の紋章が顕になる。
そこに刻まれた龍の意匠は日を反射して銀の輝きを放ち、彼女が紛れもなく世界で2番目の実力を持つことを示していた。
◆◆◆
俺の名前はマリア。こ・の・世・界・で・は・ありふれた名前であるらしい。
“この世界では”と言うように、俺には別世界の記憶がある。
有り体に言ってしまえば、この世界にエルフの少女として生まれ変わった前世男のTS転生者だ。
そして、俺はこの世界に訪れてからもう時期500年になる。
姿形は変わらないものの、500年もこんなしょっぱい森の中で引きこもってしまったのだ。
いくらコミュ障の俺といえでも、そろそろ外に出て人と関わりを持ち人生を彩るべきだ。
俺はようやくそう決心し、荷物をまとめる。
「意外と少ないな」
俺はまとめられた荷物を見てそう言った。
必要なものはその都度作成したり採取したりしていたからだろう。荷物はトランク一つで足りるほど小さくまとまった。
「500年間ありがとう、我が家」
俺は整理されて空っぽになった長年の相棒に抱きつき、別れを告げる。
もしここが残っていれば、俺はまたこの家へ戻ってきてしまうかもしれない。
俺は魔法で静かに家を破壊し、背を向けて歩き出した。
「50年前の地図だけど、あまり変わっていないといいな」
俺は森の道を進みながら、50年前に王都で購入した古ぼけた世界地図を開く。
地図には大陸の両端から、それぞれ王国が東へ帝国は西へと勢力を広げ大陸を東と西で半分ずつ分けるようにして、王国と帝国の領土が記されていた。
俺は冒険者登録をするため、ここから一番近い大都市である王都へと向かった。
◆◆◆
翌日。
俺は一晩の野宿の後王都へと到着し、冒険者登録のため冒険者ギルドの王都支部を訪れていた。
「あまり変わってないね」
ある冒険者は酒を片手に噂を話し合い、ある冒険者は素材の効率良い収集方法について話し合っていた。そんなギルドの光景は変わっておらず、俺はどこか懐かしさを覚えた。
「はぁ?これが1000Gなわけねーだろ! ドラゴンのツノなんだぞ!?」
「そう言われましても…」
俺が受付に向かうべくギルドの奥へと進むと、黒髪の少年が受付に張り付いて職員を困らせているのが分かった。
他の受付窓口には少年を避けて列ができていて、このままではいつまで経っても冒険者登録ができそうにない。俺は少年に立ち退くよう促すため声をかけた。
「あの、後ろが支えてるので早めに済ませてもらえますか?」
「アイツ、勇者のガキに突っ掛かりやがったぞ…!」
「なんてやつだ、前みたくボコボコにされるぞ…」
俺が少年に声をかけると、横の受付に並ぶ冒険者がヒソヒソと話した。
「あぁ?俺は見ての通り取り込み中なんだ。受付なら他に並びな!」
声を荒げて答えた黒髪の少年に、俺はムキになって更に声を荒げて対抗する。
「なんですか、その態度!あなた、そうやって15分はゴネているじゃないですか!」
「俺はかの勇者様なんだぞ? 勇者様はお前に構ってやれる暇じゃねぇんだよ!さっさと横の列にでも並びな」
少年は勇者勇者と、自らが勇者であることを強調するように言った。
勇者?この世界での多くを森で過ごしていた俺には、その言葉の意味が分からなかった。
「なんと横暴な!大体勇者ってなんなんですか!!」
「おまっ、勇者を知らないのか!?よっぽどの世間知らずなんだな、お前……。 勇者ってのはな?」
自称勇者の少年が呆れたように言い、続けた。
◆◆◆
現在から12年前。
この大陸に存在する2つの大国、王国と帝国はそれぞれで信仰されている宗教の神からそれぞれの国へこうお告げがあった。
『時期に勇者の称号を持つ人間が生まれる。やがて勇者は国が保有する世界最高の戦力になると約束するが、それはもう一つの大国にも言える。我が国の勇者を、世界最高の勇者に育て上げるのだ』
と。
王国の王と帝国の帝王は自国の勇者を世界最強の勇者へと育て上げるためある計画を考え始めた。
いくら国の頭脳と呼べる集団といえど、世界最強の力を持つ人材の育成方法など知りえるはずがない。
そのため、両国は世界最強を示す最も代表的な例である五大列神を頼る方向に計画の舵を切り、最終的には
“五大列神に挑ませて訓練させ、あわよくば五大列神を打ち倒し序列3位を獲得させる”
という方針にまとまった。
それは偶然にも王国と帝国で共通の計画であったため、王国の勇者と帝国の勇者は同じ目標に向かって努力することとなった。
そして、勇者たちは今年で15になる。
ついに成人である年齢を迎えた勇者たちは、既に国1番に匹敵するであろうその実力を更に鍛えるため、それぞれの国の王たちから五大列神に挑むことを命じられ、五大列神を見つけ勝負を仕掛けるため旅を始めたのだった。
◆◆◆
「そして、この俺こそが王国の勇者、レオ様だ! 五大列神を探して旅をしている!」
小説家になろうでも、TSモノが盛んになりますように。




