表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
孤児の私を救ってくれた“外交官”は、本当は帝国皇太子。 そのくせ溺愛してくるなんて……ヒドイです!  作者: 風谷 華


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

6/14

第5話「帝国での保護」

視界の端が、ふわふわしている。

……あれ?

私、いつの間に……こんな豪華な天井の木彫りを眺めるような人生に?

気づくと、ふかふかのベッドの上だった。


背中が沈む。包み込まれる。

(あっ……これ……絶対、高いやつ……)

ぼんやりしていると、

扉の向こうから足音が近づいてきた。


コン、コン。

「リア。起きているか」


低くて、どこか優しい声――ゼクスだった。

扉が開く気配。

入ってきたゼクスは、外交官の黒い礼装のままだった。

髪が少し乱れていて、疲れているように見える。


(え……徹夜……した……?)

「……特使殿……?」

「ゼクスでいいと言った」

「ゼクス様?」

「ゼクスだ」

「お言葉に甘えて、ゼクス」

なんだか、くすぐったい。


彼はベッドの端に座り、私の額にそっと触れた。

「熱があるな」

「へ、熱……? 

 あ、あの……

 ここ、ガルゼイン帝国の大使館ですよね……?」

「そうだ。お前を保護した」


私は慌てて身を離す。

「ま、待って! 近づいちゃダメです!

 魂喰い病かもしれないんです!

 アクアリアでは……発症したら即隔離で……

 人に移したら……私……」

勘違いされても仕方がない。

私が“移した側”だと、皆思っている。


でも――

ゼクスは肩をすくめ、あっさりと言った。

「ガルゼインでは隔離はしない」

「……え?」

「魂喰い病は“血液”でのみ感染する。

 触れただけでは移らんし、

 ましてや話したり、同じ部屋にいる程度で感染はしない」

「血液……だけ……?」

「そうだ。古いアクアリアの法律とは違う」


(え……

 じゃあ……私……

 ゼクスを危険に晒してない……?)


胸にあった巨大な岩が、

少しだけ軽くなる。

……でも、もう一つ疑問が。

「ゼクス……どうして、そんな……?」

普通、こんなに詳しくないはずだ。

本職は外交官だし。

ゼクスは少しだけ視線をそらし、

気まずそうに鼻先を触った。


「あー……その……

 俺には“真実視”がある」

「……真実……?」

「魔族の血統に稀に現れる固有能力だ。

 嘘、虚偽、不自然な点――

 “矛盾”を見抜く目だ」


「……え、え、それって……

 すごいじゃないですか……!」

「すごくない。

 発現したせいで、昔からめんどくさいことばかりだ」

(めんどくさい真実暴き能力……

 確かに、黙っているほうが平和かもしれない……)


ゼクスは続ける。

「だから分かった。

 カミーユ嬢の涙は嘘だし、告発は虚偽。

 医師は買収されていて、証拠も捏造だ」

「…………」

「お前は……

 何も嘘をついていなかった」

その言い方が、どうしようもなく優しい。

胸がぎゅっとなる。


「……でも……

 私、自分が病気で……

 カミーユに移したかと思って……

 ゼクスに近づくのも怖くて……」

「リア」

ゼクスは椅子を引き寄せ、

ゆっくり、でも容赦なく距離を詰めてくる。


「俺は……お前に近づかれて困ることはない。

 血液を飲ませてこなければな」

「の、飲ませ……!?

 そんなことしないです!!」

「知っている」

ふっと笑う。


その表情に、心臓が跳ねた。

(あ……この人……

 笑うと……ずるい……)


ゼクスは紙の束を机に置いた。

びっしりと記録や符号が記されている。

「カミーユ嬢の医療記録を調査した。

 発症タイミングが不自然だ」

「不自然……?」

「魂喰い病は“移した側”が先に発症する。

 記録上の彼女の症状は、

 本来なら“お前より後”に出るはずだ」

「…………」

「つまり――

 お前は“移した側”ではなく、

 “移された側”だ」


言葉が、心に刺さる。

痛くて。

でも、どこか救われる。

(だって……

 もしそれが本当なら……

 私……カミーユを傷つけてない……?)


「な、なんで私……?」

震える声で問いかけると、

ゼクスは真剣な瞳で見つめてくる。

「お前が“生贄に選ばれた”からだ」

「…………え?」

「カミーユ嬢は……お前を五年間、

 “利用するために育てていた”可能性が高い」


心が、冷たくなる。

手が震える。

息まで痛い。

(そんな……

 そんなの……信じたくない……

 だって、カミーユは……

 私の……たった一人の親友で……)


ゼクスは、震える私の手をそっと包んだ。

「リア。

 今は、信じられなくていい。

 だが――真実は必ず暴く」

「…………」

「そして、

 その間……俺を頼れ」


灰色の瞳が、静かに揺れる。

「お前は一人じゃない」

堰が切れたように、涙が溢れた。

「……ゼクス……

 ありがとう……」


私は泣きながら、

ようやく少しだけ息ができた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ