さよならおかえりゴールデンマン
めちゃくちゃ雑な一発下ネタ作品なので一応注意。
ある日、俺のある部分が家出した話をしよう。
……いや失敬。出だしから比喩的表現が過ぎた。
分かりづらかっただろうから、正直かつストレートな形に言い直そう。
ある日、俺の金玉が消えた話をしよう。あ、片方だけな。
……いや待ってほしい。ふざけているわけではないので、逃げようとしないで聞いてくれ。
中学二年生のある休日の朝、俺がいつものように目を覚ましてベッドから這い出た時、違和感を覚えた。最初は寝起きだったこともあって、あまり自覚はなかったんだが……なんとなくトイレで自分のソレに触れた時、確信したのさ。片方の玉が無い、とな。
おいやめろ。コイツ普段から朝一で自分の股間をまじまじと触るタイプかよ、みたいな表情で見るな。ドン引きするな。非常事態だったんだから仕方がないだろ。
……分かってくれたか? ならいい。
とにかく、当時は混乱もしたが恥ずかしさもあって親にも誰にも言えなくてな。まあ、違和感は多少あったが痛みはなかったし、日常生活に支障はなかった。とりあえずは問題なさそうな気がして一旦放っておくことにしたのさ。
で、ここからが本題というか、なんというか……言っても信じられないだろうから、話し半分くらいで聞いてほしい。
あ? 今の時点で真剣に聞く気はない? そりゃそうか。じゃあ勝手に話すぞ。
ゴールデンマンっていただろ? ほら、十年くらい前にテレビでもよく映ってた、うちの町の名物ヒーロー。
そうそう。時々出てくる怪人倒したり、人助けしてたヤツ。目立つ金色のマントとフルフェイスヘルメットが特徴のアイツだ。ファンクラブというか、後援会みたいなのもできてたよな。
実はアレの正体な。消えた俺の片玉なんだわ。
いや待て、救急車の手配をするのはやめて。精神的なアレじゃないから。俺は正常なのでお待ちくださいお願いします。
……落ち着いたか? いや『こっちのセリフ』じゃなくて。俺は落ち着いてるから。
まあ、世迷言だと思うのはその通りだと思うよ。実際、俺もこんなこと話して信じる奴の方がおかしいと思うしな。
ただ、コレを見たら少しは信じて貰えっかな? ……そうだ、ゴールデンマンの被ってたヘルメットだよ。
よくできた模造品に見えるだろ? でもな、これ本物なんだよ。
証拠と言っちゃなんだけど、全力で叩こうが落とそうが傷一つ付かねえ。マジモンのヒーロー装備ってやつさ……うおっ、危ねえ!? 確かめるためっつってマジで殴り掛かるやつがあるか!
まあいいや。言った通り、傷付いてないだろ? 信じなくてもいいけど、とりあえずは聞いてくれる気になったみたいでよかったよ。
続けるぞ。どうしてゴールデンマンが俺の玉だと気が付いたかというと……高校生の入学式の朝、他ならぬヤツ自身が俺に言ってきたんだよ。
「キミは……我が半身をその身に残す者か!」
……うん、意味が分からないだろ? 俺もそう思って通報しようとしたけど止められた。
で、話を聞いてみると……あいつがこの世に生まれたタイミングってのが俺の片玉喪失事件日と同じ日でな。生まれる前のぼんやりとした記憶についても聞かされたんだが、俺の記憶とも合致してたんだよ。不思議なことにな。
話してるうちに俺の方もなんとなく『コイツは俺の一部だったんだな』なんて分かるようになってきてさ。そのまま話が盛り上がって入学式には遅刻した。金玉と話して遅刻。ええ、金玉遅刻新入生ですとも。
それからアイツとは時々会って話すようになったんだよな。放課後とか休みの日とか、買い食いしたりカラオケ行ったりした。アイツ、金玉のくせに話し方は尊大だし、無駄に行動がイケメンなんだよな。金玉なのに。
ただ、なんだかんだでアイツは有名人……有名玉? だから、話しかけられたりするんだわ。そういう時は邪魔にならないように俺だけ横に避けて、あいつは俺に迷惑が掛からないようになるべく他人のふりをしてくれてた。
ああいう時はお互いに何も言わなくても行動できるもんでさ。芯から繋がった連携が取れるっつーか……芯っつーかチン……いやなんでもねえ。
とにかく、再会(?)してから仲が良かった俺達なんだが……しばらくしてからあることが起こってな。それっきりさ。
ああ、うん。そう、それだよ。
二年前に起きた、大怪獣との戦い。
あの時、アイツは相討ちする形で消えていった。
実はあの日、俺も現場にいたんだよ。
いたっていうか、巻き込まれたというか……協力してたというか。とにかく、あの高層ビルよりデカい巨大怪獣との大立ち回りの中で、大学生だった俺も少しは働いてたって話だよ。
すごい? いや、すごくねえよ。本当にすげえのはゴールデンマンだった。
俺はただ、あいつが戦う中で二次被害が出ないように皆を誘導してただけだからな。まあ、あいつがどの方向に怪獣を吹っ飛ばすかとかすぐに理解できたお陰で被害も抑えられたし、あの時ほど俺達の連携能力に感謝したことはないね。
話を戻すぞ。とにかく、そんなこんなで人助けに回ってた俺は被害地区のど真ん中にいたわけだ。
最後まで救助に遁走してたお陰で最後に残った一般人は俺だけだったらしくてな。そこでアイツの最期を見届けたよ。
大怪獣はゴールデンマンに消耗させられて、力を圧縮させた小さな形態に変化した。それから最後の力を振り絞って、相討ち覚悟の突撃さ。
そう、偶然居合わせた俺に向かってな。
後から気が付いたが、あの時点で怪獣はほとんど目が見えてなかったんだろうよ。それで偶々視界に入った人型の影……俺を脅威であるゴールデンマンと勘違いして、突っ込んできた。
まあその辺の憶測はいいとして……ともかく俺は死を覚悟して、思わず目を瞑ったよ。そりゃ怖かったからな。マジで。
だが、目を瞑ってからいつまで経っても痛みは無い。それどころか衝撃もない。
不思議に思って目を開けたら……
……あいつが、ゴールデンマンが目の前で貫かれてた。
正確には、あいつと怪獣がお互いの胸を貫き合ってた。俺の目の前で、守るように背中を見せてな。
相討ちの瞬間ってやつだ。それに立ち会ったんだよ、俺は。
当然だが、俺はその場で呆然として動けなかった。
当たり前だよな。友達だったり金玉だったりヒーローだったりするやつが、目の前で死ぬ直前の状態になってんだから。まず頭に何も入ってこねえよ。
ただまあ、何も言えない俺とは違って、あいつは俺に話しかけてきた。
「案ずるな。我は在るべき場所へと戻るだけだ」
そう言って、あいつは光の粒になって消えていった。……このヘルメットだけを残してな。
これだけはどうにか持つことができたが、そん時はショックで何も考えられなくてよ。どうやって家に帰ったんだか覚えてねえんだが、とにかく帰って寝た。
で、その次の日なんだが──
──朝起きたら、俺の金玉が元に戻ってた。
友達兼ヒーローを失ったかと思えば、補填するように俺の袋は両玉完備のパーフェクトモードに……痛い、殴るのはやめろ! まだ話は続くから!
……そうだ。その時、俺はようやくあいつが最期の言葉の意味を理解したんだ。
あるべき場所に戻る。俺の元の場所に戻ってきたって話だよ。
それを自覚したと同時に、あいつが中学の時に離れてからの記憶とか、経験? なんかが俺の頭の中に浮かんできたんだよ。
離れた場所であの姿のまま目覚めて、しばらくは野山で過ごして。
偶然見かけた人間を怪人の手で改造された猪から守って。
そのまま怪人なんかと戦うようになって。
そんな成り行きで戦うようになったのに、まったく嫌な気分にはなっていなくて……。
……金玉とか関係なく、あいつはたしかにヒーローだった。
そして、その記憶を受け継いだ俺は、文字通りあいつの1つになっちまったんだ。まあ玉は2つなんだが……すいません、冗談です。
ん? ……なんでこんな話を突然したかって?
まあ、そりゃアレだ。……分かるだろ。
今、外じゃあの時の怪獣が復活したって大騒ぎだ。今はまだ死人こそ出ちゃいないが、怪我人は大勢出てるしこれからどうなるかは目に見えてる。
それでまあ、俺が……ってことだよ。
……いやまあ、色々言いたいことは分かるよ。無茶だとか、俺じゃなくてもいいだろとか。
でもさ、やっぱ俺は……というか、俺の中のあいつが、行かなくちゃいけないって叫んでんだわ。
ああ、うん。分かってる。
心配すんな。ちゃんと戻ってくるって。
なんせ俺たちが戦うのは2度目だからな。勝ち筋なんて見え見えだっての。
──じゃ、行ってくるわ。
「さぁ、ゴールデンマン、参上だ!」




