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サイドストーリー『山を買った父』その2

ウチの親父さん、本当に子供たちが楽しんで手伝っていると、自己催眠でも掛けていたのかと疑います。休みの日は、ほぼ朝から晩まで山仕事か庭造りでした。おかげで色々覚えましたが、さらに田舎の子たちの知識には全然かなわなくて、高専時代に山に行ったら「ほれ、そごさ〇〇有るべ」と叱られたりしました。


第二部:池をつくる


第六章 また始まった


「池を作るぞ」 父がそう言ったとき、僕はすでに達観していた。どうせまた、何か運ばされるんだろう。東側に開けた敷地の奥、太平川の土手とその向こうに見える明田富士山――その借景を背景に、確かに良い庭ができそうな気はした。 でも当時の僕は、そんな風流よりも、どれだけ重いものを持たされるかの方が気になっていた。


第七章 姉の変化と僕らの余白


姉は中学生になり、多感期の入り口に立っていた。以前のように親分ぶることもなくなり、僕ら“しもべ”には少しだけ自由な時間が生まれていた。 その余白に、父の新たな計画が滑り込んできた。 「さ、石運ぶぞ」 ゴロゴロゴロ。トラックから落ちてきた石は、岩だった。 (おっと、アブナイ) 父は嬉しそうに言った。「これは小砂川の石で、うんぬんかんぬん…」


第八章 ヤグラと設計図


そこからは、まるで土木工事だった。ヤグラを組み、岩を吊り、少しずつ動かしていく。父の頭の中には、すでに完成図があったらしい。 「その平べったい石は、滝の流れの出口に置いて…」 「紅紫檀の枝がかぶさるようにして…」 「赤い立石は滝が落とせるようにして…」 語る父の目は、どこか職人のそれだった。 僕はただ、岩の重さと父の情熱に押されながら、黙々と手を動かしていた。


第九章 借景の向こうに


太平側の土手と、明田富士山。父が見ていたのは、ただの風景ではなかった。 それは、庭という名の舞台装置であり、家族の記憶を刻む背景だったのかもしれない。 池はまだ完成していなかったが、父の中ではすでに水が流れ、石が濡れ、紅紫檀が風に揺れていた。


第三部:里山の王国


第十章 庭という宇宙


年を重ねるごとに、父の計画は着実に形になっていった。庭の脇にはメタセコイヤが空へ向かって伸び、奥にはぶどう棚と果樹園が広がった。そこは“官地”と呼ばれる、何でもできる自由な空間。誰のものでもないようでいて、父の手が入ることで、確かに“我が家の庭”になっていた。


椎茸の原木栽培も規模が拡大し、採取の手が回らないほどだった。菌を打ち、井桁に積み、水をかけ、寒冷紗をかけたあの日々が、今や収穫の季節を迎えていた。


第十一章 池に泳ぐ夢


池には錦鯉が泳いでいた。 「この五色のは〇〇円、この金色のは〇〇円」 父は楽しそうだった。値段の話をしながらも、目は鯉の動きに釘付けだった。まるで、池の中に夢が泳いでいるようだった。水面に映る空と、鯉の尾の揺れが、父の心を映しているように見えた。


第十二章 山の王国


山の方も、変わっていた。泊まれるように山小屋が建ち、畑ができ、沢には壺掘りをした釣り堀までできた。かつて僕と弟が間伐材を運んだあの林は、今や甥っ子姪っ子の遊び場になっていた。


山小屋の前ではバーベキュー。煙が上がり、笑い声が響く。4家族に増えた一族が、里山を囲んで集まる。そこは、ただの土地ではなく、記憶と関係が育まれる“交流の場”になっていた。


第十三章 父の風景


父は、風景をつくっていたのだと思う。 木を植え、石を運び、池を掘り、鯉を放ち、山小屋を建てる。すべてが、家族の時間を包むための舞台装置だった。 そしてその風景は、僕らの記憶の中で、今も静かに揺れている。

Xにポストした記事の転記ですが、これを肉付けしたいと思っています。いつか・・・ですが。

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