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ピンクカプセルが紡ぐ未来  作者: つきや
Pink Capsule Universe 01:君と僕の子供たち
5/30

PCU-01-04 メッセ攻撃 + お見合い②

親友、玲の反応は???




「……はぁ、また変な奴ばっか。出産組専用アプリ、地獄だなこりゃ」


 アプリを閉じようとした瞬間、メッセ通知がピコンと鳴った。


《新着メッセージ:玲》


「……は? なんでお前」


 玲とは中高一緒だった。

 学校にいるときも、放課後もなんだかんだと連んで、いまもこうして気に掛けてくれる。


『お疲れ、婚活は順調? どうせ地雷踏んで帰ってきたんだろ。そろそろ俺とマッチしとけよ』


「は? 冗談キツいんだけど」


『冗談じゃねぇよ。俺なら、面倒な会話も、契約も、子育てプランも省略して、すぐ幸せにできるぞ。オプションで愛情多め』


 達希が声を出して笑う。


「なんだその通販みたいな口説き文句」


『ほら、ピンクカプセルの期限、忘れてないよな? 3カ月なんて、あっという間だぞ。どうせなら俺が服用期限ギリギリで回収してやるよ』


「回収すんなよ! 言い方!!」


 玲の顔が浮かび、妙に熱を帯びてくる。


『お前、選ぶ相手間違えんなよ。結局、俺が一番お前のこと知ってるだろ?』


 ……うるせぇな、知りすぎなんだよ


 気づけば少し微笑んでしまい、メッセージ画面を閉じられなくなっていた。


 ……こいつ……本気で言ってんのか、からかってんのか、わかんねぇのが一番タチ悪い


 画面の玲のアイコンが無邪気に笑っている。 





 数日後。

 バイトの帰り道、ポケットのスマホが震えた。


『出産組優待パック・第二陣マッチング完了:5名』


 画面を見た瞬間、達希は胃がキリキリと痛んだ。

 前回のトラウマが即座に蘇る。

 けれど、通知を無視する勇気もない。


 ……どうせまた、クセしかないヤツらだろ


 そう毒づきながらも、アプリを開く。

 案の定、並ぶ顔写真は第一陣よりもさらに濃いメンツだった。



 ── 一人目、金髪ピアスのパリピ男。

 待ち合わせ場所は、まさかのクラブ。

 音楽がガンガン鳴り響く中、彼はノリノリで踊っていた。


「達希くーん! 飲も飲も! 出産ピンク組はテンアゲでいこうぜ!」

「……話、できる?」

「考えるより感じろ〜! 人生パリピベイビー!」


 即・退散。



 ──二人目、超絶マザコン。

 会った瞬間から「《《ママ》》」「《《ママ》》」「《《ママ》》」。

 食事中もママに逐一LINE報告。


「うちのママ、達希くんのプロフィール見て超気に入ってさ! 出産組は、ママみたいな理想の家庭像が大事だよね!」


「……無理だ。」

 コーヒーも飲まずに店を出た。



 ──三人目、超年上、還暦目前。

 年齢を二度見したが、会えば納得の落ち着きっぷり。

 話題は年金と健康診断。


「君のことは息子のように思えるよ」

「こっち結婚前提の話なんですけど」

「年の差は、愛で埋まるさ!」


 距離は、むしろ広がるばかりだった。



 ──四人目。また、あの顔。

 カフェの席で待っていたのは、同じ高校だった童顔キラキラ系のクラスメイト。


「……お前、またかよ」

「二巡目まで一緒とか、運命? てか地獄?」

「だな……」


 会話は弾まない。

 ただ別れ際、彼がぽつりと漏らした。


「……俺、本気で出産組、選ばなきゃいけない理由、あんだよ。」


 その一言が、妙に胸の奥にひっかかった。



 ──五人目、顔面偏差値S級モデル。

 あまりの完璧さに、思わず声が漏れた。


「え、実在したの……?」


 しかし、会話は冷めきっていた。


「僕は確率重視だよ。家族も恋愛も、統計的に選んで合理的に進めるべきだろ?」


 達希は、心のどこかがポキッと折れる音を聞いた。




 その夜、家に帰るなりスマホを放り投げ、布団に顔を埋めた。


「もう無理……」


 しばらく天井を見つめていたところで、スマホがブルッと震える。

 画面には玲からのメッセージ。


『今日も撃沈?』


 すぐに指が動く。


『地雷しかいねぇ!!』


 送ったあと、ベッドの上で寝転んだまま、大きく息を吐いた。


「……恋愛って、どこに落ちてんだよ」


 視線が、机の上のピンクカプセルの箱へと向かう。

 そしてカレンダーの“《《期限日》》”に目をやった。


「残り……2カ月と10日。」


 無意識に天井を見上げ、つぶやく。


「好きなやつ、どこかにいませんかーーー!!」


 夜空にむなしく響く、心の叫び。


ーー次回、お見合いで2回もマッチングしたあの人が?!

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