PCU-01-03 お見合い①
週末。
達希は指定されたカフェへ向かった。
テーブルには、すでに一人目の男性が座っていた。
──爽やかイケメン。
プロフィール通り、雑誌から飛び出したような整った顔立ちに、白シャツがよく似合う。
笑顔も営業スマイルのように完璧だ。
「はじめまして、高月さん。プロフィール、見ました。すごく、いいですね」
「……あ、どうも」
慣れた手つきで差し出された名刺には、大手企業の名前。
話をしてみると、彼は“出産組”との結婚契約をビジネスの延長くらいに考えているようだった。
──なんか違う。
そう思った頃には、もうコーヒーも飲み干していた。
二人目──年上ダンディ。
スーツに渋い時計、香水も上品。
会話も落ち着いていて、優しさが滲み出る。
「出産組の方とは、穏やかな家庭を築きたいですね」
「穏やか……ですか」
だけど、その優しさの中には、妙な“支配欲”が透けて見えた。
口調も手つきも、妙に“親切すぎる”のだ。
──これも違う。
胸の奥が冷めたまま、二軒目の店を出た。
三人目──筋肉バカ。
見た目はガチガチのスポーツマン、開口一番。
「俺の子供、絶対健康だぞ!」
「は、はぁ……」
プロテインバー片手に、育児プランまで筋トレとルーティンで語り出す。
人生の全てがジム基準。子育ても筋トレ理論で鍛えるつもりらしい。
──無理無理無理。
筋肉の話題が止まらないまま、強制終了。
四人目──童顔キラキラ系。
カフェに現れた彼は、写真よりも実物の方が幼く見えた。
目の前で「よろしくね」と微笑む顔を、達希はじっと見つめる。
……やっぱり、こいつ
同じ高校の隣のクラスにいた、例のあいつ。
思い出した瞬間、向こうも気付いた。
「……あれ? 達希、だよね?」
最悪の偶然。
お見合い席で、クラスメイトと再会するとは思わなかった。
お互いバツの悪い沈黙。
「マジで、お前、種付け派……?」
「……ああうん。達希は出産組?」
同じ学校出身で、見合いで出会う。
似たもの同士のはずなのに、なぜか会話がすぐ途切れた。
──なんだこれ、気まずすぎる。
五人目──どう見ても詐欺師。
スーツは微妙にサイズが合っておらず、腕時計は偽物感が漂う。
笑顔も営業トークもどこか安っぽい。
「君の幸せを保証するよ! 一緒に素晴らしい未来を築こう!」
胡散臭さが、もはや服を着て歩いてるレベル。
何か契約書を出される前に、逃げるように店を出た。
……一巡したあと、達希は自室のベッドに突っ伏した。
「……どいつもこいつも、まともじゃねぇ」
ため息まじりにスマホを見れば、アプリには冷酷な文字。
──お見合い第一陣終了。次回マッチング準備中。
「勘弁してくれよ……」
ピンクカプセルの服用期限まで、残り2ヶ月と24日。
──次回は親友、玲の反応とお見合いパート2?!