PCU-01番外編② 家族
<待望の双子、ついに登場!>
「だめ、もう無理……!」
達希の額に汗が浮かんでいる。何時間も続く痛みに耐え、深く息を吐きながら、手を握りしめていた。
「大丈夫、達希、しっかり呼吸して。もう少しだ」
玲が優しく声をかけ、晴翔が達希の手を握る。三人の間に張り詰めた空気が漂っている。達希が苦しそうに顔をしかめながらも、目を閉じ、もう少しで終わると信じて必死に耐えていた。
「はあ、はあ……もうすぐだよ。頑張れ、達希」
その瞬間、医師が入ってきて、温かい言葉をかける。
「達希さん、準備は整いました。双子の誕生です、もうすぐですよ」
達希は深呼吸してうなずく。
「行くよ、もう少し!」
そして、数秒後——
「もうすぐ! あと少しだよ!」
痛みと共に、達希は力を振り絞り、双子が誕生した。
「おお……双子だ! 本当に双子だ!」
玲と晴翔が歓声を上げる。二人の赤ちゃんが元気よく泣きながら、達希の胸に抱かれた。
「よし、名前決めなきゃな!」
玲が興奮気味に言う。
「翔太と玲太……どうかな?」
達希が笑顔で提案する。
「翔太、玲太……ぴったりだな! 兄弟感がすごい!」
晴翔も嬉しそうに言う。
双子の赤ん坊は、元気よく泣きながら達希の腕の中でふるふると動き、家族が増えたことを実感した。
「翔太、玲太。これからよろしくな。」
達希が小さく呟きながら、赤ちゃんたちを見つめる。
その瞬間、部屋に暖かい空気が流れ、家族という絆が確かにここにあった。
<三人と四人、ひとつの午後>
春の日差しが、窓からそっと差し込んでいる。
新しい家に引っ越してから、初めて迎える静かな昼下がり。
リビングの大きなソファには、達希が横になり、腕の中には生まれたばかりの双子——翔太と玲太。
ふたりは並んで、ちいさな胸を上下させながらすやすやと眠っている。
その横には玲。
達希の肩に頭を預けたまま、自分の子——次男の光を膝の上に乗せ、同じくうとうと。
床には晴翔。
子どもたちのもうひとり、長男の飛翔を抱き枕のように腕に乗せて、半分寝落ちした顔。
「……静かすぎて、逆に怖い」
玲がぽつりとつぶやいた。
「わかる。でも……幸せすぎるから、寝落ちしそう」
達希は双子の小さな手を指先で撫でながら、微笑んだ。
誰も声を荒げず、誰も泣かず、時間だけが静かに流れていく。
子どもたちの寝息が、まるで子守唄みたいに心地よかった。
「……あと何人、増えるかな」
晴翔が、眠たげな目のままぼそっと呟く。
玲が小さく笑った。
「さあな。たぶん、まだ足りない」
「お前ら、どこまで俺に妊活させるつもりだよ……」
達希は笑いながら、腕の中の翔太と玲太をぎゅっと抱きしめた。
暖かい陽だまりの中で、家族はひとつに重なり、
静かなお昼寝は、幸せの形そのものだった。
<湯船に浮かぶ、幸せの数>
「全員入った? 沈んでない?」
玲が湯船の中で子どもたちを一人ずつ数える。
四人のちびっこたちは、お湯の中でぷかぷか浮かんだり、きゃっきゃと水を叩いたり大はしゃぎ。
翔太と玲太の双子は、湯船の縁につかまりながらお互いの顔を見てにこにこ。
飛翔は達希の膝の上に、光は晴翔の腕の中に、きゅっと納まっていた。
「……これ、もはや戦場じゃね?」
玲がタオルを絞りながら呟くと、達希がふふっと笑う。
「でも、お湯の中だと大人しいね。かわいすぎて溺れそう」
湯気の中、達希の頬はすっかり緩んでいる。
晴翔は光の髪にそっとお湯をかけながら、
「この人数で毎日お風呂、筋トレよりキツイぞ」と、ぼやくくせに、どこか楽しげだ。
玲が湯船の縁に肘をかけて、にやりと笑う。
「じゃあ、まだ増えても余裕ってこと?」
「……やっぱ俺、また妊活か」
達希はお湯越しに二人を見て、肩をすくめる。
「そりゃ、そうだろ」
玲と晴翔が声を揃えて即答する。
湯船に浮かぶ子どもたちの寝顔は、どこまでも平和で、
手を伸ばせば届く距離に、「しあわせ」がぎゅうぎゅう詰まっていた。
「……次は、どんな顔して生まれてくるかな」
達希が小さくつぶやくと、玲と晴翔は互いに目を合わせて笑った。
湯気の向こうの未来には、
まだ見ぬ家族が、きっと待っている。
<寝息のハーモニー>
「よーし、おやすみタイムだぞ~!」
玲の声に、ちびたちは一斉に「やだー!」と枕の上で転がり回る。
飛翔と光は布団の端で、お互いの手を繋いだまままだまだ元気。
翔太と玲太の双子は、達希のお腹の上に乗っかって小さくあくびをする。
「ほらほら、もう遅いよ。パパたちも寝不足になるってば」
晴翔が絵本を閉じて、子どもたちの額にひとつずつキスを落とす。
玲は布団の中に手を差し入れて、光と飛翔の手をぎゅっと握る。
「おやすみって言うまで、寝かせねーからな」
そう言いながら、顔は完全にデレデレ。
達希は寝息を立て始めた翔太と玲太の髪を撫でながら、優しく囁く。
「おやすみ。明日も元気に遊ぼうね」
やがて、部屋の中には子どもたちの穏やかな寝息が広がる。
布団の中、玲と晴翔と達希は、肩を寄せ合って、静かに目を閉じた。
「……明日は誰がミルク担当?」
「晴翔な」
「また僕……?」
くすくすと笑い合いながら、三人もまた、子どもたちと同じ寝息のリズムに包まれていく。
小さな寝顔たちと、大きな愛情。
これが、何よりの幸せだった。
番外編、まだまだ続く……
番外編、あと1つ!最後です!