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ピンクカプセルが紡ぐ未来  作者: つきや
Pink Capsule Universe 01:君と僕の子供たち番外編!

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PCU-01番外編① 達希×玲×晴翔が帰ってきた!

 髙月達希は、小川玲と結城晴翔という二人の伴侶を得て、

 すでにそれぞれの子を一人ずつ産んでいた。

 

 そして今、達希のお腹には、二人の子を同時に宿している——双子だった。



**




「おい、引っ越し当日に子供産むとかやめろよ?」


 玲が苦笑いで達希の腹を覗き込む。


「……予定日は来月だって言ったじゃん」


 達希はソファに座りながら、お腹を軽くさする。すでに双子の命が、そこにいた。


「システムの野郎、ホント手際いいよな」


 晴翔は、段ボールに囲まれた新居のリビングを見渡してぼやいた。


 大人三人に子供二人を抱えての生活に手狭になったマンション。

 システムは躊躇なく、庭付き一軒家を無償で支給してきた。


【子供四人、家族ユニット規定クリア】


 それだけの理由で。


「家もらえるなんて、ほんと夢みたいだよね」


 達希がぽつりと言うと、玲は鼻で笑った。


「夢じゃなくて現実。現実がバグってんだよ」


 荷ほどきをしながら、子供たちはまだ慣れない部屋を動き回る。

 泣いたり笑ったり転んだり、床を這いずり回ったり。


 晴翔は、庭に面した窓から外を見た。

 そこには、まだ何も植えられていない小さな芝生。


「……ここさ」


「ん?」


 玲が振り返る。


「木、植えようよ。何か、シンボルっぽいやつ」


「いいじゃん。名前入りの表札と一緒にな」


 玲も晴翔の案に乗っかる。



「名前、何にする?」


「三人分……ってか、苗字バラバラだけど?」


「そこは家族割引でまとめてよ」


 達希は笑った。


 日が暮れても片付けは終わらず、夜には子供たちがいつものように泣き始めた。

 それでも、不思議と疲れた顔の三人の目には、笑いが浮かぶ。


「引っ越しただけで、なんか……家族が増えた気がする」


 玲の言葉に、達希が静かにうなずいた。


「ここで、もっと増えるよ」


 システムの通知は、また静かに新たな予定を知らせてくるだろう。

 でも、その音を待つ前に。

 三人はもう、自分たちで決めていた。


「家族は、ここから増える」


 そしてまた、朝は戦争になる。

 泣き声と笑い声が混じり合い、

「家」は、いつの間にか「家族の居場所」になっていく。





 引っ越し初日の夜。

 まだ照明も足りず、カーテンもつけてないリビングは、蛍光灯の冷たい光が広がっていた。


 段ボールは積み上がったまま、食事はコンビニ弁当。

 それでも、子供たちの寝顔を囲んで、三人は床に座り込んでいた。


「広いくせに、落ち着かないな」


 玲がポツリとつぶやく。


「家具も、まだ前のままだもん。そりゃそうだよ」


 達希はペットボトルのお茶を飲みながら、お腹をさすった。


「それにしても、うちってこんなに静かだったっけ?」


 晴翔は寝かしつけた赤ん坊の隣で、少しだけ体を伸ばす。


 確かに、今夜だけは妙に静かだった。

 窓の外も、聞こえるのは風の音だけ。

 都心のマンションとは違う、郊外の夜。


「……システムさ、こんな家くれても、俺たちに何求めてんだろ」


 玲が天井を見上げる。


「子供だろ」


 晴翔が即答する。


「それは、分かってるけどさ。もっと、何か」


 三人はしばらく黙ったまま、寝息を立てる子供たちを見守った。

 自分たちが選んだ「家族」の形が、これで良かったのか。

 それとも、これから変わっていくのか。


 達希はぽつりとつぶやく。


「……変わんないよ、きっと。明日も、朝から戦争」


 玲も晴翔も、それを否定しない。

 窓の外は真っ暗で、どこまでも静かな夜だった。


 でもその静けさの奥で、三人はもう知っていた。

 この家で、これからもっと泣き声も、笑い声も、増えていくってことを。


「家族って、そういうもんだろ?」


 玲のつぶやきに、誰かが返事をするでもなく、

 三人はそのまま床に体を預け、夜を迎えた。


 新しい家、新しい夜。

 システムが用意したのは「家」だったけれど、

 居場所を作るのは、きっと自分たちだと達希は思って目を瞑った。





 新しい家に引っ越して初めての週末。


 三人はホームセンターに出かけ、庭に植える木を選んだ。

 玲が選んだのは、しっかりとした幹を持つ、少し背の高い桜の木。


「いつか、花が咲いたら、みんなで見よう」


 その言葉に、晴翔がにこりと笑った。


「春になったら、花見もできるか」


「その時には、また増えてるかもね」


 達希が冗談めかして言うと、玲も晴翔も笑った。


 家に帰り、三人で庭に出ると、手際よく土を掘り始めた。


 どこかぎこちない手つきで土を掘る玲を、達希が見守る。


「お前、もっとちゃんとやれよ」


「うるさいな、得意げに言うなよ」


「ほら、こっちだよ、バランスよく掘れって」


 晴翔が手伝いに入ると、すぐに三人で協力し始めた。


 やがて、土を掘り終わると、桜の木をそっと植えた。

 その後、達希がひとしきり水をやり、「これでいいかな?」と首をかしげる。


「うん、いい感じ」


 玲は満足そうにうなずく。


「この木、ずっとここで育てていくんだよね」


「もちろん」


 達希が言うと、晴翔もその横でうなずいた。


「これが、家族の証みたいなもんだな」


「……そうだな」


 玲が少し照れくさそうに言う。


「この木が、俺たちを見守ってくれるんだ」


 その後、三人は庭の木の前に並んで、少しだけ静かな時間を過ごした。

 何も言わなくても、桜の木が立っていることで、確かな「家族」感が感じられる。

 やがて、夕日が差し込み、木の影が伸びていった。


「いつか、この木の下で、みんなでご飯食べような」


 玲がぽつりと言うと、達希が笑った。


「その時には、もうちょっと人数増えてるだろうけどな」


 晴翔も笑って、頷く。


「増えても、いいよな。たくさん、笑おうな」


 三人はしばらく、静かに桜の木を見つめながら、温かい気持ちに包まれていた。


 いつか、この桜が花を咲かせ、家族が集まって笑い合う日を、三人は心から楽しみにしていた。


 その日が来る頃、きっとまた、別の新しい「家族の形」ができているのだろう。





 引っ越しも少し落ち着いたある夜。


 家のリビングには、まだ箱から出しきれない荷物と、四人分のベビーグッズが所狭しと転がっている。


 子供たちの寝息が響く中、三人はちゃぶ台を囲んで、ペンを握っていた。

 テーブルの上には紙と、びっしり並ぶ名前の候補リスト。


「次、双子だしさ。どうせなら響き揃えたいよな」


 達希がぽつりと言う。玲は腕を組んで、ペンの先を唇に当てた。


「……どうせ俺たちの子供は、またシステムに名前登録されんだろ」


「でも、最初に呼ぶのは俺たちだからな」


 晴翔は、ペンをくるくる回しながら、壁に貼った家族写真を見上げた。

 そこには、バタバタとした引っ越しの日に撮った、三人+二人の子供たちの姿が映っている。


 ぐしゃぐしゃの髪、よだれまみれの赤ん坊、眠そうな顔。

 だけど誰もが笑っていた。


「……この写真、家族っぽいよな」


 玲がぽつりと言った。


「名前、何にしよっか」


 その一言から、深夜の名前会議が始まった。


 シンプルな名前がいいとか、読みにくいのは嫌だとか、誰がどの子を呼ぶ時に言いやすいかとか。

 ああでもないこうでもないと語り合っているうちに、もう日付が変わっていた。


 窓の外、まだ芽吹いたばかりの桜の木が、風に揺れている。


 春にはまた、新しい命が増える。

 この家には、まだまだ「空き」がある。

 いや、きっと「空き」を埋めていくんだろう。三人で。


 玲が、ふと真剣な声で呟いた。


「次は、俺が妊活してやってもいいぞ」


 その言葉に、達希と晴翔が顔を見合わせ、吹き出す。


「やる気満々すぎだろ」


「お前、どんだけ大家族に憧れてんだよ」


「……悪くねぇだろ?」


 玲は照れ隠しに鼻を鳴らし、ペンを置いた。

 夜は静かに、更けていく。


 名前をつけるたびに、写真が増えていく。

 その一枚一枚が、家族の「しるし」になっていく。


 桜の木も、子供たちも、そして三人も。

 きっとこれから、ゆっくり、しぶとく、幸せになっていく。

番外編はあと2つ!

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