PCU-01番外編① 達希×玲×晴翔が帰ってきた!
髙月達希は、小川玲と結城晴翔という二人の伴侶を得て、
すでにそれぞれの子を一人ずつ産んでいた。
そして今、達希のお腹には、二人の子を同時に宿している——双子だった。
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「おい、引っ越し当日に子供産むとかやめろよ?」
玲が苦笑いで達希の腹を覗き込む。
「……予定日は来月だって言ったじゃん」
達希はソファに座りながら、お腹を軽くさする。すでに双子の命が、そこにいた。
「システムの野郎、ホント手際いいよな」
晴翔は、段ボールに囲まれた新居のリビングを見渡してぼやいた。
大人三人に子供二人を抱えての生活に手狭になったマンション。
システムは躊躇なく、庭付き一軒家を無償で支給してきた。
【子供四人、家族ユニット規定クリア】
それだけの理由で。
「家もらえるなんて、ほんと夢みたいだよね」
達希がぽつりと言うと、玲は鼻で笑った。
「夢じゃなくて現実。現実がバグってんだよ」
荷ほどきをしながら、子供たちはまだ慣れない部屋を動き回る。
泣いたり笑ったり転んだり、床を這いずり回ったり。
晴翔は、庭に面した窓から外を見た。
そこには、まだ何も植えられていない小さな芝生。
「……ここさ」
「ん?」
玲が振り返る。
「木、植えようよ。何か、シンボルっぽいやつ」
「いいじゃん。名前入りの表札と一緒にな」
玲も晴翔の案に乗っかる。
「名前、何にする?」
「三人分……ってか、苗字バラバラだけど?」
「そこは家族割引でまとめてよ」
達希は笑った。
日が暮れても片付けは終わらず、夜には子供たちがいつものように泣き始めた。
それでも、不思議と疲れた顔の三人の目には、笑いが浮かぶ。
「引っ越しただけで、なんか……家族が増えた気がする」
玲の言葉に、達希が静かにうなずいた。
「ここで、もっと増えるよ」
システムの通知は、また静かに新たな予定を知らせてくるだろう。
でも、その音を待つ前に。
三人はもう、自分たちで決めていた。
「家族は、ここから増える」
そしてまた、朝は戦争になる。
泣き声と笑い声が混じり合い、
「家」は、いつの間にか「家族の居場所」になっていく。
引っ越し初日の夜。
まだ照明も足りず、カーテンもつけてないリビングは、蛍光灯の冷たい光が広がっていた。
段ボールは積み上がったまま、食事はコンビニ弁当。
それでも、子供たちの寝顔を囲んで、三人は床に座り込んでいた。
「広いくせに、落ち着かないな」
玲がポツリとつぶやく。
「家具も、まだ前のままだもん。そりゃそうだよ」
達希はペットボトルのお茶を飲みながら、お腹をさすった。
「それにしても、うちってこんなに静かだったっけ?」
晴翔は寝かしつけた赤ん坊の隣で、少しだけ体を伸ばす。
確かに、今夜だけは妙に静かだった。
窓の外も、聞こえるのは風の音だけ。
都心のマンションとは違う、郊外の夜。
「……システムさ、こんな家くれても、俺たちに何求めてんだろ」
玲が天井を見上げる。
「子供だろ」
晴翔が即答する。
「それは、分かってるけどさ。もっと、何か」
三人はしばらく黙ったまま、寝息を立てる子供たちを見守った。
自分たちが選んだ「家族」の形が、これで良かったのか。
それとも、これから変わっていくのか。
達希はぽつりとつぶやく。
「……変わんないよ、きっと。明日も、朝から戦争」
玲も晴翔も、それを否定しない。
窓の外は真っ暗で、どこまでも静かな夜だった。
でもその静けさの奥で、三人はもう知っていた。
この家で、これからもっと泣き声も、笑い声も、増えていくってことを。
「家族って、そういうもんだろ?」
玲のつぶやきに、誰かが返事をするでもなく、
三人はそのまま床に体を預け、夜を迎えた。
新しい家、新しい夜。
システムが用意したのは「家」だったけれど、
居場所を作るのは、きっと自分たちだと達希は思って目を瞑った。
新しい家に引っ越して初めての週末。
三人はホームセンターに出かけ、庭に植える木を選んだ。
玲が選んだのは、しっかりとした幹を持つ、少し背の高い桜の木。
「いつか、花が咲いたら、みんなで見よう」
その言葉に、晴翔がにこりと笑った。
「春になったら、花見もできるか」
「その時には、また増えてるかもね」
達希が冗談めかして言うと、玲も晴翔も笑った。
家に帰り、三人で庭に出ると、手際よく土を掘り始めた。
どこかぎこちない手つきで土を掘る玲を、達希が見守る。
「お前、もっとちゃんとやれよ」
「うるさいな、得意げに言うなよ」
「ほら、こっちだよ、バランスよく掘れって」
晴翔が手伝いに入ると、すぐに三人で協力し始めた。
やがて、土を掘り終わると、桜の木をそっと植えた。
その後、達希がひとしきり水をやり、「これでいいかな?」と首をかしげる。
「うん、いい感じ」
玲は満足そうにうなずく。
「この木、ずっとここで育てていくんだよね」
「もちろん」
達希が言うと、晴翔もその横でうなずいた。
「これが、家族の証みたいなもんだな」
「……そうだな」
玲が少し照れくさそうに言う。
「この木が、俺たちを見守ってくれるんだ」
その後、三人は庭の木の前に並んで、少しだけ静かな時間を過ごした。
何も言わなくても、桜の木が立っていることで、確かな「家族」感が感じられる。
やがて、夕日が差し込み、木の影が伸びていった。
「いつか、この木の下で、みんなでご飯食べような」
玲がぽつりと言うと、達希が笑った。
「その時には、もうちょっと人数増えてるだろうけどな」
晴翔も笑って、頷く。
「増えても、いいよな。たくさん、笑おうな」
三人はしばらく、静かに桜の木を見つめながら、温かい気持ちに包まれていた。
いつか、この桜が花を咲かせ、家族が集まって笑い合う日を、三人は心から楽しみにしていた。
その日が来る頃、きっとまた、別の新しい「家族の形」ができているのだろう。
引っ越しも少し落ち着いたある夜。
家のリビングには、まだ箱から出しきれない荷物と、四人分のベビーグッズが所狭しと転がっている。
子供たちの寝息が響く中、三人はちゃぶ台を囲んで、ペンを握っていた。
テーブルの上には紙と、びっしり並ぶ名前の候補リスト。
「次、双子だしさ。どうせなら響き揃えたいよな」
達希がぽつりと言う。玲は腕を組んで、ペンの先を唇に当てた。
「……どうせ俺たちの子供は、またシステムに名前登録されんだろ」
「でも、最初に呼ぶのは俺たちだからな」
晴翔は、ペンをくるくる回しながら、壁に貼った家族写真を見上げた。
そこには、バタバタとした引っ越しの日に撮った、三人+二人の子供たちの姿が映っている。
ぐしゃぐしゃの髪、よだれまみれの赤ん坊、眠そうな顔。
だけど誰もが笑っていた。
「……この写真、家族っぽいよな」
玲がぽつりと言った。
「名前、何にしよっか」
その一言から、深夜の名前会議が始まった。
シンプルな名前がいいとか、読みにくいのは嫌だとか、誰がどの子を呼ぶ時に言いやすいかとか。
ああでもないこうでもないと語り合っているうちに、もう日付が変わっていた。
窓の外、まだ芽吹いたばかりの桜の木が、風に揺れている。
春にはまた、新しい命が増える。
この家には、まだまだ「空き」がある。
いや、きっと「空き」を埋めていくんだろう。三人で。
玲が、ふと真剣な声で呟いた。
「次は、俺が妊活してやってもいいぞ」
その言葉に、達希と晴翔が顔を見合わせ、吹き出す。
「やる気満々すぎだろ」
「お前、どんだけ大家族に憧れてんだよ」
「……悪くねぇだろ?」
玲は照れ隠しに鼻を鳴らし、ペンを置いた。
夜は静かに、更けていく。
名前をつけるたびに、写真が増えていく。
その一枚一枚が、家族の「しるし」になっていく。
桜の木も、子供たちも、そして三人も。
きっとこれから、ゆっくり、しぶとく、幸せになっていく。
番外編はあと2つ!




