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鋼の精神の持ち主…。


くるみ先輩はくすくすと可笑しそうに笑う。

かと思うと、まるで人格が入れ替わるかのようにこちらを蔑むような視線に変化した。


「宙が、15万倍の感度…?」


「そぉだよ?宇宙一繁殖力があるくせに、欲深すぎて相手を廃人にしちゃうようなセイブツなんだよ☆」




マジ…?


宙の顔をじっと見つめると、表情こそブレていないが耳まで真っ赤になっている。

そしてその眼光はくるみ先輩を突き刺さんばかりに鋭く、そんな顔をされていても先輩はケロッとしていた。


「俺は自分をコントロールするのには長けている方だ」


「あはっ!まあ確かに普通のラウグルーヴ星人はそこの寝っ転がってる金髪くんよりも激しく相手を求めるもんね♡」

「そうなの…!?」


「それをそこまで隠せるってことは君は凄まじい執念ともいえるような努力を積んだんだろう。まさに、鋼の精神ってやつだね」


宙の表情がますます険しくなる。


「独占欲だけを糧として生きるお前たちとは違う、自らの欲求を抑えなければ真の平和は訪れない。俺はこの星を守るためにここに来た」


かっこいい…けど、こんな平然とした顔で感度15万を隠し持ってるのか…そんなの…情報量が多すぎてなんて声をかけたらいいか………。


くるみ先輩はきゅるんっと目を潤ませてパチンと両手を叩く。


「でね、僕の星の人達はみ〜んな地球が欲しくてたまらないの。でも僕は地球に何てまるきり興味無いんだヨ☆」

「何が目的だ?」


くすくすと笑うくるみ先輩はまるで百面相のよう。

こんなにも不気味な人がこの世にいると思いたくない。


「僕の“独占欲”は『生徒会』何だぁ」




生徒会???



生徒会ってあの生徒会だよね?



何度思考をめぐらせても他の生徒会には辿り着かず、あの生徒会だと納得した。


いや、何かもうちょっと『地球〜』とか『この学校』とか、そういう大きい規模のものに独占欲があるんじゃないの…?

生徒会に独占欲って…ちょっと拍子抜けというか…?


「だからね、僕の独占欲の邪魔になる奴は消さないと」

「まってまって…!邪魔しなかったら消されないってこと?」


思わず前のめりになって口を挟んだが、宙に後ろに下がるようにジェスチャーされる。

先輩は乾いた笑いを零した。


「ははっ、むりむり。だって君たち宇宙人なんて生徒会の邪魔でしかないじゃん?今日だってみんなの頭改造してバレてないだけでさ!もしバレてかいちょーがストレスで倒れでもしたらどうすんの?アンタたち責任取れんの?!!」


空気がビリビリと重くなる。


でも、つまりくるみ先輩は生徒会と会長に迷惑をかけなければ許してくれるかもしれない…


いや、そんなに簡単にいくものかな?

こんなラスボスみたいな雰囲気で…


「こんな面倒なの、今のうちに排除しなきゃね…」


ゆらりと体を揺らす先輩は正気では無く、今にも襲いかかってきそうだ。

宙も戦闘態勢をとり始めた。


「覚悟は出来てるよね?」


「っ…」


このまま何も言わない方が良いかもしれない…

でも、一か八か…!



くるみ先輩は両手を前に突き出し、鬼の形相で叫んだ。



「しねぇええええ!!!」






「なるほど!先輩は会長の事が好きなんですね!」


ピタ、と動きが止まる。



静まり返る現場に、緊張の空気が走った…。


そんな沈黙が1分ほど続いた頃だろうか?先に口を開いたのは先輩だった。





「なっ…!」


瞬間、バラの花が咲き乱れるようなエフェクトが沸き上がり、真っ赤な顔を両手で抑えたくるみ先輩がいた。


「なあーーーっ!?!?!」


恥ずかしそうにプルプルと震える先輩。

思わずポカーンとなる。


「や…僕は…そんなんじゃない!!かいちょーはただの…憧れだもん!!!」





つ、ツンデレーーーーーー!?!?!



ちょろい…この先輩ちょろい!!



恥ずかしそうにくねくねと体を揺らし、目を潤ませる先輩。

その姿は先程までと打って変わって演技をしているような感じでもなかった。



「先輩は、会長のためにこの学校の治安を守ってるんですね」


ズキューンと矢が刺さるような感覚がくるみを襲う。


「そ、そんなんじゃない、とも、言いきれない」

「凄いですねえ〜」

「やめてよっ!恥ずかしいよぅ!」


「くるみ先輩、私たちは生徒会に楯突くつもりなんて毛頭ないんですよ。生徒会の皆様も一番危険視しているのは地球に害を及ぼす宇宙人でしょう?」

「うん…」


「それなら、私たちはむしろ生徒会の意思に沿ってるんですよ〜」



「すげぇな…熟練の詐欺師のようだ…ゲフッ」

「お前、起きてたのか」

「何か、状況がヤバすぎてジッと固まってた…」

「そうか………」


「え?敵じゃないってこと?」

「そうですよ!ここにいるメンバーはみんな味方です!(多分ね…)」


くるみ先輩はとてとてと私に近より、両手をギュッと握ってきた。


「ほんとう?」


わぁ…かわいい〜!


「この人達にはあとでキツ〜く叱っとくから、どうか許して貰えませんか?」


う〜ん、と先輩は喉をうならせたが、こくりと頷いた。


「分かった」


「ありがとうございます!」


「許しちゃったよ…あの宇宙人、独占欲が無い物事には恐ろしく無頓着だからな…」

「欲が満たされれば無害なんだろうな」

「お前は無害とは言いきれないがな」

「お前よりコントロールは出来ている」

「ムムム…腹の立つ野郎だぜ…!」



「本当に危ないのは、地球を滅ぼそうとする宇宙人だもんね。華ちゃん、もし何かあったら僕に言ってね?すぐに殺してあげるから♡」

「あ、ありがとうございます…」


この人が味方になって良かった………!



「まあ、利用価値はありそうだしね…(ぼそ)」


「何か言いました?」

「え?何のこと〜?☆」



パンパンと制服を伸ばす、くるみ先輩。


「それじゃあ僕はもう行くね?華ちゃんは良いとしても、アンタら二人は二度目はないからね?」


「す、すいませんでした…」

「肝に銘じる」


「もうおいたしないでね!ばいばい!」




かくして、一連の騒動は幕を下ろしたのだった。





「それより、宙、感度15万倍って本当なの?」


ポン、と三神くんの肩に手を置く宙。


「え。。」






ビリィッ!!!!!



「グッ…ぁあぁあああンッ...!!///」

「三神くーーーん!!!」


ドサ、とその場にしゃがみこむ三神くん。

己を抱きしめてプルプルと子犬のように震える。


「こ…こんなの、初めてだ!!///」

「三神くん…」


「クソ!!好きな女の前で俺を使って感度を証明すんじゃねえ!!!」


「好きな…女?」



三神くんはハッとした表情の後、泣きそうになり、震える声で細々と喋る。


「俺…華が好きなんだ…」


「えぇっ!?宙じゃなくて!?!?」

「何でそんな勘違いするんだよぉー…!」


ピーと耐えきれず泣き出す三神くんの背中を優しくさする。



なんやかんや色々あったけど、背景お母さん、私宇宙人の友達が出来たみたいですーーー。


ピリッ


「…」


背後で、宙が見たことも無い表情で三神くんを睨んでいた事は、私の知る由もなかった。
















「ふんふんふ〜ん」

「佐藤、何か嬉しそうだな?」

「えっ!?」


生徒会の仕事の後片付けをしながら、思わず鼻歌をしてしまった。


はぁ…先輩ってこんなに強くてこんなにスタイルも良くて、こんなにキリッとしてて…


はぁ〜〜〜美人。


かいちょーは神様が創った最高傑作のような人だ。

我が星の隊員としてこの国に潜入し、貴女を初めてみた時に雷が落ちたかと思うような衝撃だった。


それまで、僕には独占欲なんて無くて、周りからは落ちこぼれの劣等生だと言われて育ったのに…。


「今日も仕事が早くて助かる。いつもありがとう」


「かいちょーもそろそろ仕事を切り上げないとダメですよ〜?」


「はは、これだけやったら終わる」


「そう言って、いつも真っ暗になるまで居残りしてるの知ってますからね?」


「おっと…あはは!やはり君に隠し事は出来ないな」


僕をこんなにも信じて、評価してくれる。


かいちょーは知らないんだろうな、僕が宇宙人だってこと。


本当は、今すぐにでも監禁して、僕だけのものにしたいけど…僕の好きな先輩にはずっと笑顔でいてほしいから。


この独占欲で、かいちょーに嫌われるような事があったら、舌を噛み切ってやる。


「そういえば、最近一年の方に視察しに行ったんだが」

「えっ?かいちょーも行ったんですか?」

「かいちょー(も)?」

「あはは…!そ、それでそれがどうしたんですか?」


「いや、一年の短髪の女の子に話しかけたんだが…」


僕は、華ちゃんだ、とその時は軽く思っていた。


「その子がどうかしましたか?」


「手に宇宙人を持っていてな」


「手に…は?」


かいちょー、今何て…?


「その子は隠していたつもりだったかもしれないが、手の中に宇宙人がいたんだ」


「…」


戦闘態勢をとっている自分がいた。

かいちょーと戦いたい訳ではなく、今まで叩き込まれた訓練が自分をそうさせた。


たらり、と冷や汗が落ち、心臓が鳴り止まない。


「視えるんだよ、宇宙人ってやつが」


「かいちょ…」



フッと目の前が真っ暗になった。

違う、かいちょーの手が僕の目を塞いだんだ。


「2年前、宇宙人が地球に攻めてきた時、君は中学生だったね」

「…」

「私はこの学校の生徒の個人情報を把握していてね、君は桜中学という田舎の中学校を卒業したと聞いていたから、桜中学の卒業写真を見てみたんだ」

「…」


「だが、そこに居るはずの人物は映っていなかった。佐藤胡桃という人物はいなかったんだ」


僕は、誰もそこまで調べることは無いと油断していたんだ。


「なあ、君は一体いつから地球人を名乗り始めたんだ?」







まさか、こんなことになっちゃうなんて…。








信じられなくて、辛くて、悲しくて、



かいちょーなら僕を信じてくれてるって、思ってた。



ダメな僕に、いつだって優しく手を差し伸べてくれていた…。












「地球を守るためには、先人から受け継がれたこの“瞳”に従う他ない、私は正義の元に動くのみだ」





フッ、と体が軽くなり、


僕の記憶は、そこで止まったーーー。













華ちゃん…助けて…。











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