6 【カチカチ山】
あのたぬき程酷いやつは他に居ないだろう。
普段からおじいさんの悪口を言ったり畑を荒らしたりした事は聞いていたが、ついにおばあさんを殺したそうだ。
落胆しているおじいさんでは仇はうてないだろうから私がやろう、いや私にしか出来ない。
手始めにしばかりに誘ってみた、意外なことに素直についてくるではないか。
これ幸いとたきぎを背負ったたぬきのたきぎに火をつけてみると大やけどをした。
次の日、やけどのための薬としてとうがらしを練ったものを持っていき塗りこんでやる。
よく効く薬は痛いものだといい更に塗ると気絶してしまった。
数日後、たぬきの背中が治ったと聞いて一緒に魚釣りに行かないかと誘ってみる。
今度も快諾してくれたから私は木の船に、たぬきを泥船に乗せ海へ出た。
思い通りあのたぬきは海に沈んでいった!「おばあさんを殺した罰だ!」
これでたぬきがおじいさんに悪さをする事はない事を言いに行こうとしてふと思う
私の行動はやりすぎてないか?
確かにあのたぬきを痛い目をあわせることは出来たし、おばあさんの仇も討てた。
もう2度とあのたぬきにおじいさんが困らされることも無くなった。
だが私が悪いやつだと思っていたあのたぬきと同じ事をたぬきにしてしまった。
そもそもあの時おじいさんは私に仇をうって欲しいと頼んだだろうか?
悲しむおじいさんの姿を見て私の正義感が動きたぬきを沈めるまでやったが
これは解決なのか?たぬきとしっかり話し合い改心させる方法もあったのではないだろうか?
今の私はあのたぬきと同じ、いやもっと酷い畜生になってしまったのかもしれない。