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4【絵からぬけ出た馬】
あの馬の絵は本当に見事なものだった。
描いた絵が飛び出してくるなど目にしたことなど無かったから、あの小僧は仏様のご加護を賜ったのだろう。
しかし長年仏様に仕える者として生きてきたが、とんと仏様の御心がわからない。
たしかにあの小僧の絵は素晴らしい絵であり、仏様の絵を描かせ村人達に分け与えると家宝にしていた。
だがわざわざ馬を絵から飛び出させ村の作物を荒らしたそのお心はなんだったのだろう?
たしかに私はあの小僧に絵を描くのを禁じた、経も覚えず掃除もせず、絵ばかり描いていたからだ。
いずれ私の代わりに寺で経を唱えなければならない身としては絵の上達より経を覚える方が大事なことだろう。
しかし仏様は経を学ぶことより小僧の絵の素晴らしさを我々に教えなさった。
身仏の心を知るなどと傲慢なことを言うつもりは無い、結局人の身で知れることは限界があるのだから。