2 【一寸法師】
私自身で言うのもどうかと思うが、私の物語はもう都にて話が尽きないから語る事はあまり多くない。
鬼を討ち取った時に拾った打ち出の小槌のおかげで身長は伸び立派な大男となった。
私が由緒ある血筋である事もわかったため身分も得て、今では妻や両親と共に暮らしている。
しかしこの話は本当にめでたしめでたしなのだろうか?
武士になる事を両親に誓い、家元を離れおわん一つで川を下り、雨にうたれ風にふかれた末に京に到着した。
大臣の家来になった頃は武勲を挙げ皆から認められたいという野望があった。
一寸の体格や一本の針という私が扱える最大の武器を活用して鬼を退治する事が出来たが、今の私はどうだろう。
一寸だった頃の私のように知恵や工夫であの恐ろしい鬼に立ち向かえるだろうか?あの頃のような勇気がまだ自分にあるだろうか?
妻を得た、地位を得た、両親を都に呼ぶことができ、私の名も轟いた。
しかし一寸だった頃の私の方が武士としての矜持があったのではないだろうか?
私は一寸だからこそ他者が持ち得ない強さがあった。
だが人並みの身長となった一寸法師は特別でもなんでもない、そこらに居る武士の1人と同じではないだろうか。
打ち出の小槌を振ったあの時、私の、一寸法師の物語は終わったのかもしれない。