14【ちからもちの金太郎】
今でもみんなでうわさします。
「あの自慢の腕っぷしで都でも大勢投げ飛ばしているのだろう」
金太郎は本当に凄かった。
なにしろこの山のみんなで相撲をしても片っ端から投げ飛ばしあんなに大きなクマやウマ達でも敵いません。
それほど強いのに威張ったりせず、自慢のマサカリでよく母親の手伝いをしていたっけ。
橋が無くて渡れない時にはみんなのためにと木をへし折って新しい橋をかけてくれるなど本当に優しく強かった。
ところで最近山に来た新参者によく聞かれるのだ、金太郎ってどうなったのか?と。
不思議なことに山でクマ達と相撲を取ったり、自慢のマサカリを担いでいたことは有名なのに子供の頃の話しかみんな知らない。
確かに今の金太郎のことを知らないけれど、新参者に聞かれたら教えてやる
「金太郎はうわさを聞いてやって来た、都の偉いお侍さんの家来になって立派な武士になったのだよ」
ここじゃあ金太郎のうわさは聞こえないけれどあれだけ凄い人間だ!
家来になって都へ行く話を聞いた時は驚いたけれどこの村だけで収まるような器じゃない。
今頃都でも名を馳せているだろう。
でもやっぱり少しさびしいな、あんなに立派なヤツは見たことない。
大人になってもずっと一緒に暮らしたかったってのは俺達のささやかなお願いさ。