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お金のやり取り


管理人室。

管理人さんを呼んで部屋の状況を説明した後の、

事後のやり取り。


「これが報酬です」


先程よりも厚みのある封筒が手渡される。


「この度は、誠にありがとうございました」

「どういたしまして、

また何かあればご連絡ください」

「是非ともそうさせていただきます」

「では、また」

「またお会いしましょう」


管理人室を出る。

外では麗奈が待機していた。


「まだいたの?」

「い、いるよ」


高圧的すぎてさすがに可哀想になってくる。


「というか、先程話は後、と言っていたわね、

その続きを訊きましょうか」

「あ…うん、歩きながらでいい?」

「ええ」


霊美ちゃんを挟んで横並びに歩く。


「横並びは危ないわ、後ろに行ってちょうだい」

「わ、わかった」


普段どちらが悪態をついていたのか

疑いたくなる事態。


「私たちを尾行してたの?」

「それは…うん」

「なぜ?」

「おばさんに頼まれて」

「やはりあの人の差し金なのね…」


人伝に聞いただけだが、

霊美ちゃんの母親がどんな人間か分かってきた。


「まあでも、払除の名前を使わずに

営業かけたらこうなるって、見越してたのかもね」

「そうなるでしょうね」


もしかしてこの二人、

けっこういいとこのお嬢様なんじゃないだろうか。


「すみれさん」

「ん?」

「この後予定あるかしら?」

「んーないかな」

「では、私の家で報告を済ませたあと、

どこかに出かけないかしら?」

「おー、臨時収入も入ったことだしね」

「ええ」

「私も行くー」

「チッ」

「やめときまーす」

あれ?もしかして。



「おおー」


高い和の壁が、二三軒は広がっている。

奥行はもっとあるだろう。

ナチュラルに、霊美ちゃんの家に来てしまった。


「少し待っててもらえるかしら」

「あ、うん」


立派な門構えを通って霊美ちゃんは消えていった。


「あ…」

「待っていたわ」


厳格な声。

聞いていた母親像に共通するものを感じる。

壁のすぐ向こうで話し始めた。

ずっと待っていた?。


「依頼は成功したのかしら?」

「はい」

「報酬金は?」

「受け取りました」

「よろしい、今回の報酬は会計士に預けず、

好きに使ってもいいわ、

ただしあまりハメを外しすぎないように」

「わかりました」

「お行きなさい」

「はい」


門から霊美ちゃんが出てきた。


「済ませてきたわ」

「ん。で、どこ行く?」

「その…恥ずかしい話なのだけど、

そういう遊びに疎くって…

すみれさんに一任してもいいかしら?」


無垢な霊美ちゃんに私が遊びを教える。

なんだかドキッとした。


「いいよ!うーんと…

霊美ちゃんってカラオケで歌える曲ある?」

「流行りものが分からないから…国歌とか?」

「国…歌は最初に歌ったりする人もいるけど、

手札がそれだけだと厳しいね」

「面目ないわ…」

「いいのいいの、

私みたいに話合わせるために

流行りを追ってたらキリないし」

「それは…大変ね」

「うん、大変」

「すみれさん、これを受け取って」


封筒から数枚の万札を渡された。

数を見るに、おおよそ半分。


「え、い、いらないよ」

「報酬はわけないと、正しくないわ」

「私はキスしただけだし…一枚も貰えないよ。

それに私としては、

霊美ちゃんが今まで我慢してきたぶん、

報われて欲しいの。

だから少なくとも、そんなには受け取れない」

「そう…言ってくれて嬉しいわ。

お金を前にしてどういう態度を取るか、

試してしまったわ」

「えーそんな現金に見える?」


ちょっとモヤっとする。


「いえその…いいえ、言い訳はしないわ。

黙って試すなんて酷いことよね…」

『ギュ』


抱きしめる。


「すみれさん」

「不安にさせちゃった?」

「勝手に…不安になっただけよ」

「…どっかで買い物する?」

「ええ」

「なら…あそこかな」

「?」



「ここは…」


大きな駅の傍の大きなショッピングモール。


「今まで買いたくても買えなかったもの、

沢山あるでしょ?」

「それは…そうなのだけど、

まずは許可を取らないと…」

「許可取るのは買ってもらう時じゃなかったっけ?」

「あ…確かに。でもあとから何を言われるか…」

「何も買われたくないのなら

お金は預かっておくだろうし、

隠したらバレないバレない。

いざとなったら私が預かっておくよ」

「…ありがとう」

『ギュ』

「私、長年の束縛で臆病になってるみたい。

だから…すみれさんの手で引っ張って」

「うん」


あの母親の影響は、口調にも現れている気がする。

私が見つけた霊美ちゃんの第一印象は

消えてしまうかもしれないけど、

そんなのは屁でもない。


「じゃあ霊美ちゃん、何が欲しいか言ってみて」

「ええと…えっと…」


遊園地に来た子供のように、

目を瞬かせて見渡している。


「あ、あれ…」


吹き抜けから見える上階の、ぬいぐるみを指さした。


「行ってみよっか!」

「ええ!」


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