6.入学は体育館と共に
外の種目が終わったから、体育館内に入った。
今、体育館には全生徒が集まっている。
A日程:外種目→内種目→シャトルラン
B日程:シャトルラン→内種目→外種目
と言った感じだ。
だから今、シャトルランをしていた
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっっっっっっっっっっっっっっっっ!!!!!!!!!!!!!!!!!」
どうしよう。すごく帰りたい。
え?なんか1人すげぇ熱血漢がいるんだけど。
そして、その人が種目を終えた後、
「52回ぃぃぃぃぃぃぃっっっっっっっ!!!!!!」
「「「「「「「「「「おおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!!」」」」」」」」」」
やかましいわ!!
気持ち悪いっつんだよ!!
髪もっさぁ、ってしてる僕と同族な気がする男子も一緒に叫びやがって!!
そんなキャラならそんな髪もっさぁ、ってすんじゃねぇ!
てか、よく考えたら上体起こしで52回ってすごくね!?
まぁ、そんな地獄絵図になっているのは一部だけであり、他のクラスの人たちはもちろん、女子は全員なんもなく長座体前屈や反復横跳びをやっている。
「また始まったよ………」
「いつになったら終わるんだろうねー」
「ウチでもあんなでかい声出さないよ?」
「「そんなことはなさそう」」
「えー!なんでよーー!!」
どこかしらからも女子の雑談や男子の声が聞こえてくる。
だが、こんなとこでも問題を起こすのが山岸であった。
「ああぁ!!こんなとこに二色いるじゃあ〜ん!」
「うぇ、は、え?ちょっ…い、いや……!!」
二色と呼ばれた女子に山岸は近づいていくが、その女子は離れたがっている。
なるほど、メガネをかけて髪は長いクール系。
うん、イイネ!
とは思ったが、何故か菜々がある方角からすごい目線を感じるから言わないでおくとする。
いや、怖いからね?菜々さんや??
そして、呆気なく山岸に捕まってしまった二色(?)さん。
「よぉ二色ぃ〜。元気だったか?おい。久しぶりじゃねぇか。俺の女なら、俺と同じ高校に入った瞬間歓喜して俺の元に駆け寄ってくるべきじゃねぇか?」
「す、すいません………でした……………。」
「ねぇちょっと!あんた!今二色ちゃん反復横跳びやるから離れてて!」
「んあ?お前、俺に指図してんのか。ウッザ」
イラついたから。
ただそれだけの理由で再びエネルギー弾を作り出し女子を弾き飛ばそうとしてる。
すかさず僕が割って入ってやろう。
なんてったって他のやつは山岸に嫌われたくないだろうからな。
なら、もう嫌われてる僕が間に入ったほうがいい。
エネルギー弾を右手で受け止めて、二色と呼ばれる女子を引き離す。
「山岸、ステイ」
「今の俺の“指図すんな”って命令、聞いてた?」
まーた僕と山岸の間に剣呑な雰囲気が漂う。
これから1年間この状態は流石にきつい。
この後の戦いできっちり締めてあげようか。
「チッ、おい二色。お前からもなんか言えよ」
「わ、わた、私はその、山岸くん…と……あ、その、え、山岸……様と…………」
「クソッ。使えないクズ女が。もうどっか行けや」
「あっ、ひゃ、はあ、ああぁ……」
山岸は言いたい放題言った後、そのままなんもなかったかのように戻っていった。
「大丈夫?二色……さん?」
「あっ、二色で、いいです。秋元 二色」
「あぁ、わかった。僕は神咲 帝。安心して、山岸は今日で大人しくなるから」
「ふぇ?な、何をするつもりで………」
「大丈夫。安心して。オーケー?」
「お、おーけー」
「よし、じゃあ僕は体力テスト行ってくるから。なんかあったら言ってね」
「ひゃ、ひゃい……」
ふぅ。
関わってしまった以上、ああいった山岸の被害者はさりげなくフォローしておかなくては。
あれ?
僕、目立ちたくないはずなのにこの2日で獅子奮迅の活躍をしていないか?
まぁ、いっか!
人助け、大事!!
まぁ、友達作ろうとしただけなのにね………
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「よし、じゃあ僕は体力テスト行ってくるから。なんかあったら言ってね」
「ひゃ、ひゃい……」
彼は一体何者?
私の【特技】が使えなくなっていた。
私の【特技】、【未来視】。
自分が動くことで変わる、数千もの未来を『視て』、その中で最善の行動を起こすことができる【特技】。
それが、彼が近くにいてから、倍以上の未来となってしまい、焼き切れそうなほど頭が熱くなった。
彼の【特技】のせい?
そうだ。そう思うしかない。
彼の体質でこうなっていれば、彼は異常すぎる。
この高校は、【特技】を使いこなして生き抜いていかなくてはならない。
そんな生存競争の中、私は、私の天敵と出会ってしまったのかもしれない。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
さてさて。
ちょっとしたトラブルはあったものの、これから体力テストの屋内競技が始まる。
握力、上体起こし、立ち幅跳び、長座体前屈、反復横跳び、そして誰もが嫌がる20mシャトルランだ。
20mシャトルランは最後にやるらしく、今はその他の小さい感じの競技からやっていくらしい。
ペアを組んで自由に競技を選んでもらうらし…………え?
ぺ、ペア??
コミュ障は必ず「先生1人余りました枠」であると決められている、あのペア決めをここでやるのか!?
流石にそれは………僕のコミュ障っぷりが牙を剥くというか………………
「おーい、帝!ペア組もうぜ!」
そう言えばいたわ
なぜかわからないけど好かれてしまったキング陽キャがいたわ。
僕を陽キャの道に引き摺り込まんとする陽の者………いたわ!!
「ねぇねぇ、予想はしてたけど、そんなイヤな顔しなくてもいいじゃん。予想以上だよ」
「黙れ陽の者。陰の者は先生に献上されるのが定めなんだ」
「え?お前先生狙ってんの?」
「そういう話じゃ……」
「やめとけ、敵は多い」
「あ、敵いるんだ」
そう思っていたら、鼻の下を伸ばしながら先生に近づく奴がいた。
「せんせ〜い。ちょっと俺、余っちゃったんで先生とやってもいいですかぁ?」
男子からは羨望の目で、女子からは軽蔑の目で見られている。
だとしても、彼は意思が固いオーラが滲み出ている。
だが、それから自分の身を挺して先生を守ろうという輩が飛び出した。
「先生、俺も余ってたんでこいつと組みます!!」
「な!?お前、ペアいただろ!!」
男子が反論するがもう遅い。
「見え透いた嘘はやめとけ。先生が見てるぞ」
「ぐうっ、クッ………」
救世主の男子が勝ち誇ったような笑みを浮かべながら言ってやるともう1人の男子は唇を噛んで退散していった。
周囲からは称賛の視線が向けられていた。
そして、当の先生は。
「ふぇ?え?なに?なんですかぁ!?えぇ!!もうちょっと詳しく教えてください!!ねぇちょっと!!生易しい目で見てないで今のはなんだったのか教えてくださーい!」
あぁ、なんかいっぺんに起こりすぎて困惑していたらしい。
無理もない。
なんてったって、あの男子達のやりとり、およそ3秒!!
あの男子生徒のスピーディーな対応は見習いたい者である。
「え、えーっと。余った人は………山岸くん、その人がペアでいいんだよね?」
「あぁ?担任だからって舐めた言い方すんじゃねぇよ」
「は、はひっ!ずびばぜん!!」
その瞬間、このクラスの大半のやつの殺気が山岸に集まった。
逆にその嫌われようがすごいよ。
後先生、それでいいんですか………。
「え、え〜っと。それじゃあ、ペアで計測係と競技者を決めてやってください。それじゃあ開始ですっ!頑張ってくださ〜い」
「よし、僕らも競技をやりに行くとしよう」
「おぉ、そうだな!何する?まず握力とか?」
「……………上体起こしにしよう」
周りを見渡し、少し考えたところで、そう言った。
「お?さっきの暑苦しい上体起こしの熱に当てられたか?」
「ちげぇよ!ただ、他のやつは人が多いってだけだ」
「あぁ、そう言えばお前自称陰キャだったな」
「自称言うな」
そう言いあいながら、僕らは山岸から離れてまだ熱気の冷めない上体起こしをするマットの方角へ進んだ。
うらめもっ!
「今回も誰か1人嘘をついていた気がするわ……。まぁなんにせよ、あの、二色?とかいう子の【特技】、かなり危険そう。敵にまわらなきゃいいんだけどなぁ……」