57.個人戦は着替えと共に
『お待たせしました。E組の皆さんは着替えてステージ前にお並びください』
控室にアナウンスが放送されて、生徒は控室を出ていく。
「ん?みんなどこ行くんだ?」
「おい帝。まさかとは思うんだが……、説明の時、寝てたか?」
「は、ハハハ。そんなわけ無いデショ?」
純也に詰められ、帝は目を逸らしながらクラスメイトの背後を追って更衣室に向かう。
「お前って大事な時は毎っ回寝てたりするから肝心な時にポンコツな時あるよな。わかってんのか?個人戦なんて勝ち進んじゃったら、最終的に………」
「なーに話してん、のっ!?」
純也のセリフを遮って未来が間に割り込む。
その後ろから菜々もついて来る。
「いや、帝ってほんとに寝てばっかりだよなーって」
「まともに生徒会の仕事してないしね」
「してるが?体育祭前の競技の取りまとめとか本当に面倒だったんだぞ?」
帝は頭を抱えながら回想を始める。
『菜々?ここに書いてある〔サッカー〕、入れるの?』
『却下よ。人数のこと考えてるのかしら?スポーツにしか興味のない人間からの提案でしょう?却下却下』
『………さすがに言いすぎでは?』
『うるさい。元はと言えば帝くん、あなたが〜〜〜………』
……あれ?
仕事内容がきついんじゃなくて、同僚の愚痴を聞くのがキツイだけでは?
「うん。あれは大変だった、大変だったよ……」
「どうしたのかしら?そんな遠い目をして。言いたいことは言わないと伝わらないわよ?」
「特大ブーメランな?それ」
普段からこんな感じだから、まさか菜々があんなに溜め込むタイプだとは思わなかった。
少なくとも、純也への愚痴とかも含めて全て俺にぶつけるのだけは勘弁してくれ。
「じゃ、私たちは女子更衣室行ってくるから。お互いがんばろーね!帝を除いて」
「おい未来、何でそんな頑なに僕だけ省くんだ、僕なんかやった?」
やたらとキツイ未来からの当たりに愚痴を言いながらも更衣室に入る。
更衣室のロッカーに用意されている体操服を出して、自身の制服を脱ぐ。
「純也、言っておくが、手加減は無しだぞ?」
「ペア戦って聞いた時からそのつもりさ。俺は絶対……」
「あぁ、絶対に…………」
「「一回戦で負けて、個人戦なんざ早く終わらせる!」」
帝と純也の言葉が被る。
「ほぉ〜?純也くん、君の【特技】なら体育祭の無双はお手のものではなくて?君が出場してちゃっちゃと終わらせちゃいなよぉ〜?」
「いやいやいや、そんなこと言ってる君が出た方が余裕でしょ?君は生徒会副会長なんだしさぁ。それにほら、君には優劣を決めるために戦うお嬢さんがいるでしょ?戦えないと悲しいと思うなぁ〜?」
互いの主張がぶつかり合う、というより、どちらかと言うと駄々のこねあいだ。
幼稚すぎて周囲からの目が痛い………いや、E組だと日常茶飯事だからめっちゃ暖かい視線を向けられてるんだけどね。
しかし、今の言い分を聞けば大体わかるだろう。
俺の言い訳よりも、純也の言い訳の方が正しいと。
いや帝は二色と約束してるんだからせめて2回戦までは行けと。
………その通りでござんす……。
いや、でも体育祭に長く居たくないのは事実なんだよ!
体育祭のこと伝えてないはずなのに、記憶喪失後から高校に入るまで育ててくれた、おじさんとおばさんが応援に来てるんだから恥ずかしかって恥ずかしかってぇ……。
二色には適度な距離を保ってほしいし、束縛されたくない。
でも体育祭に長く出ていたくはない!
「済まないが純也、俺は俺のわがままを通らせるぞ」
「なら俺の出せる全力でそれを阻止してやるからな。絶対に俺が負けてやる……っ!」
「あーっ、わかったわかったから」
メラメラと燃え上がる二人の間に、割って入る影が一つ。
青髪の準陰キャ、竹中 蒼であった。
「なんだ、蒼。チーズケーキが食べたくなったか?俺が次食べる時は譲ってやるから後にしてくれ」
「ちげぇよチーズケーキじゃねぇ。お前らなんとも思ってねぇのか?」
「「??」」
純也と二人顔を見合わせて『?』を浮かべる。
「はぁ〜………、いいか?別にどっちが負けるで言い争ってもいいけどなぁ………………
下着ぐらいは履け」
「「あ」」
純也とお互いの格好を見合う。
着替えの最中に言い合いを始めたので、なんと二人ともフル○ン。
「おい純也!許さねぇかんな!」
「最初に絡んできたのはお前だろうが!こっちは答えてただけだ!巻き込みやがって!」
「「「「「どっちもどっちだろうが」」」」」
クラス総員で総ツッコミされ、不服そうに頭を掻く二人であった。
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体操着に着替え終わった俺たちは入場口に並ぶ。
会場では、D組のクラスメートたちが〔ミニゲーム〕をしていた。
トランプの〔スピード〕や、〔気配切り〕、早いところはもう終わっている。
練治や堀那の余裕の佇まいから察するに、アイツらはしっかりと勝ち上がったようだ。
二色も〔気配切り〕で、勝利まであと一点だ。
俺が【ラプラスの悪魔】を使っていないおかげで、いい感じに有利なようだ。
まぁ、〔気配切り〕とかの、一点取って一点取られてって感じの競技なら、いつ終わるか分からないから長引くかもしれないからな。
そう言った意味では、早めに終わらせることができる二色が〔気配切り〕を弾いてくれて助かった。
二色が振った模造剣が相手に当たる。
「おぉ〜っとぉ!〔気配切り〕、決着!勝利したのは、6点先取した秋元 二色選手です!みなさん、大きな拍手をお送りください!!っとぉ〜、スピードも終わったようです!勝者は山武 奏選手です!こちらにも拍手をお送りくださぁい!!」
〔気配切り〕を気にしてみていたが、〔スピード〕もすぐに終わったみたいだ。
次は……俺たち、E組の2人1組の〔ミニゲーム〕だ。
さて、上手いことに、俺が個人的な出場してほしいと思っている役者は、上手くいけば全員第二ステージに出場してくれそうだ。
宇賀田 未来、逆原 菜々、山岸 春太、そして、熱海 穂村。
しっかり、未来は同じギャル仲間の榎田 紫央と、菜々は生徒会関係の仕事で知り合った浜中 真美と、春太はテキトーに選んだ模武くん、穂村は一緒に喋ってた花道 裕香だ。
どちらも、どこのグループも、俺の希望した奴らが勝ち上がりそうな相手だ。
さて、それじゃ、始めるか………。
【特待生】の、炙り出しを。
「E組の皆さんは、入場してください」




