54.個人戦はミニゲームと共に
今、僕が知っている限りの情報で注目しているのは、二人だ。
一人目は、〔玉入れ〕で指示役を担っていたであろう工藤 颯太だ。
さらに、国満によれば自身で「リーダー宣言」していたようだから、彼がリーダーなのはほとんど確定だと思っていいだろう。
だが、問題なのは、彼は「調子に乗ってる【特待生】どもも」って単語を使っていたらしい。
それが真実だとするならば、操られていない、司令塔以外の人間が【特待生】だろう。
つまり、A組の【特待生】はまだ動き出していないと思われる。
これまでずっと行動を控え続けてきた【特待生】が、今になって急に動き出すことも無いだろうが、全員見て決めていかなければならない。
「どちらにせよ、颯太は障害となる。必ずどこかで敵対するなら、手の内は見せず、相手の出方を見計らう必要がありそうだな」
「帝、そこは俺に任せとけ。だからお前はしっかり一回戦勝って次の種目に行くんだぜ」
「まだ一回戦の結果決めんなや」
純也はもう個人戦に出場する気はないようで、諦めたように寝転がっている。
こいつエントリー制のこと知っててなんで個人戦参加したんだ。
そう考えている内に、いつのまにか個人戦種目が始まっていた。
「工藤 颯太&志賀 心音ペア、ミニゲーム『かるた』が選択されました!」
ミニゲーム、『かるた』……。
え、ミニゲームってそんな感じなの?
いや、確かにミニゲーム?なのかもしれないけどさ?
まずミニゲームってなんだ?どっからどこまでがミニゲームなんだ?
他のミニゲームの種目を見てみると、全て小学生くらいの子供が遊びでやるようなゲームばっかりだ。
オセロや将棋などの頭を使えば勝てるボードゲームもあれば、スピードや二人ババ抜き、じゃんけんやあっち向いてホイまで多種多様だ。
それらから一つ、くじ引きで選ばれる。
今回出たのは、『かるた』『将棋』『コイントス』『ダーツ』『男気ジャンケン』の5つだ。
ダーツや将棋と男気ジャンケンが同時に入ってることから、選ばれる種目によって難易度や終了時間にかなりの差がつきそうだ。
このゲームの中で最も時間がかかりそうなゲームは、『かるた』と『将棋』だろう。
この二競技は世界大会が開かれるほどのものだ、そう簡単に終わらない。
この分なら、俺たちの出番が回ってくるのは当分先か……?
その考えが甘かった。
そうだ、彼女……志賀 心音は〔玉入れ〕で《伝心の加護》を使っていたギャルだ。
つまり、多分彼女は、すでに颯太の言いなり……っ!
ならば、今回の彼女の役割は、颯太を2回戦に連れて行くために、わざと負けることだ。
〔玉入れ〕では《伝心の加護》を使って仲間との情報共有をしている、と言う体で彼女を参加させていたから、彼女に警戒せざるを得なかった。
しかし、颯太がここで彼女を切り捨てると言うことは、同等の能力が颯太の《特技》にもあるということ………。
きっと支配が完了しているA組は他のペアも、誰が勝つかをすでに決めてあるのだろう。
ならば、将棋もカルタも、勝負は一瞬で終わる。
「……クラス全体の掌握、なかなかに厄介だな……。クラス単位が一丸となってでの実力となると、E組と戦っても話が変わってくるか…………」
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「……《特待生》って大変なんだね〜。あんな悪巧みしちゃって」
「未来、きっとアイツも本気で勝つために頑張ってんだよ。友達として、なぁ?見守るのが1番だと思うぜ?」
「私がアイツの友達ぃ?ふざけんなって感じだし」
少し離れた座席で未来と純也が帝について話していた。
「いい?私からしたらあいつは、嘘をついて周りを巻き込む、ただのトラブルメイカーでしかないの!!」
「確かに未来視点からすると、コイツ救いようねぇよなぁ」
純也も引くほどの虚言癖、菜々も何度か見たことがあった。
入学式ほどわかりやすい人格の変化は無いものの、昨日と今日とでは雰囲気が違うと感じる場面は多い。
ずっと近くで彼を見てきたつもりだから、そんな人間ではないことはわかる。
しかし、近くで見てきたからこそ、わずかな変化は目につきやすい。
だから、彼女は疑う。
《特待生》と名乗っている彼は、実際には何者なのか。
彼の持つ様々な側面。
神咲 帝、上代 光榴、加闘 井狩、創名高校1年E組生徒、【特待生】、【ラプラスの悪魔】、記憶喪失の少年……。
一体、どれが本物の彼なのか。
「神咲 帝」を知る者として、それは最低限の責務だ。
菜々は密かに、拳を握りしめて決意を固くした。
体調不良続きで投稿できず申し訳ありませんでした……。
久しぶりなのでリハビリがてらに短めの話が続くと思います、根気強く頑張ります……。




