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5.入学は友人の殺意と共に










 さっきの男子、黒田の番になった。





「よーい……ドン!」



 その時、黒田が一歩目を踏み出すと同時に………。

















 走るはずの生徒が、全員転んだのだった。





「うぉ、ラッキー!!」



 なるほど、あれが【必勝の運否天賦】。



 運でどうにかなってしまうところは全て運がどうにかしてしまう【特技】か。





 あれの対処法は………。





 そうだな、滑る滑らない関係なしに、第一歩を踏み込む。


 これが、俺が出せる解決策だ。




 地面を抉って足を地中に入れてしまえば、滑る滑らないは関係ない。



 そして、そこからその足を抜き出すように一歩一歩進んでいかなければならないだろう。





 もしかして、頑張れば隕石とか降らせたりできる!?







 彼には頑張ってもらいたい。

 男のロマンのために!!






◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇















「よーい……ドン!」




 山岸の番になった。



 アイツは僕の【特技】ことを【足が速いなる】みたいなものだと思っているだろう。



 こいつは好都合だ。





 さっきは本気でやってしまったが、ここでムキになることはない。


 他の競技は手を抜いて、アイツの誤認をキープするのが大事だ。



 当の山岸はというと…




「おいおい、こんなレベルの低い体力テストでいいのかぁ?お前ら遅すぎて話になんねぇだろ」



「ウルセェ……」


「ハハハッ!負け惜しみがすぎるだろうが!!」




 バックステップをしながら2位のやつの前で煽り散らかしている。



 彼の足には橙がところどころに散りばめられた緑色のオーラみたいなのを纏っている。



 あれが山岸の【特技】、【スーパーエネルギー】だろう。


 かなりの身体能力向上が見られるな。


 やはり、【特技】っていうのは社会に大きな影響を与えてしまうな。





 山岸は、こちらをチラチラと見ながら『まだまだ余裕があるぜ』と見せつけようとしている。




「自分ができるからって調子に乗りやがって……!」









「あ?反抗してんの?」




 次の瞬間、エネルギー弾のようなものを他の生徒に向かって発射した。


 生徒はつんでのところでかわしている。




「うぉ!?何すんだ!反則だろうが!!」


「今の、【特技】使って手ェ滑っちゃっただけだし。ちゃんと見ろや」





「屁理屈を……….」


「妨害は反則なんてルール言ってなかっただろ。耳腐ってんの?」



「チッ……理不尽すぎるだろ!」






 あーあーあー。


 煽りすぎてもう嫌われてんじゃねぇか。





 それでも、さすがと言うべきか。



 息切れ一つもせず、バックステップで二番手と大きな差を開いていた。






 二番手の男子もかなり悔しがっているな。



 よほど人を挑発するのが得意なのか?


 頭の片隅に留めておくとしよう。















◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇









 今は、女子が走る番である。



 未来は最初に走っていたが、そこまで特徴があったわけではない。


 うん、【特技】も使っていなかった。ここでは使えないということだろうか。


 だとしても、かなり早かった。

 何か昔運動をしていたと考えておこう。





 そして、次の走順。



「よーい……ドン!!」


 合図により、女子が一斉に走り始める。




「おいおい帝、見ろよ。菜々ちゃんのあのダイナマイト。もうめっちゃ揺れてるぜ?何がとは言わないから自分で見てみろ」


「おれはそういう目で見てない。そういう話がしたいんだったらよそに行くんだな」


「流石に冷たすぎねぇか!?」





 黒田が言っている通り、今は菜々が走っている番だ。



 あいつはそういう目で見られるのは嫌だと言っていたからな。


 人の嫌がることはしない。

 これ、割と一般常識。


 (この一般常識がまかり通らないのが山岸なのだが)







 菜々は【特技】を使っているのか、かなり早いし、地面には炎の跡が残っている。




 菜々の【特技】は【焦土】、と言っていたか。


 地面からもらっている熱のエネルギーを使い、炎の推進力を得ているってところか。





 にしても、【特技】の使い方が上手いな。


 どこかで練習したのか?


 なんか負けたくない理由でもあったのか?



 ………なるほど、菜々は負けず嫌い、ね。




 当然の如く、かなりの差をあけて菜々がいちいあでゴールした。



 ちょっとした汗をかきながら、スン…としていたが、僕を見つけた途端に顔をパァッと明るくして手をゆるゆると振ってきた。




 おいやめろ。

 DTにそんなことしたら勘違いしちまうぞ。




 あー、羨望と敵意と殺意の視線を感じる。


 羨望2、敵意3、殺意5と言った、殺意の圧倒的比率の多さである。




 なんというか、菜々さんや、そんな嬉しそうな顔で手を振るのはもうやめてくれや。



 おかげでもはや山岸と対等ぐらいの嫌われ者になりそうだ。




 あぁそう。


 当の山岸はというと。


「なんだあの女。この俺に見向きもせずあんな底辺野郎に手ェ振りやがって。クソが、俺の方が絶対にいい思いできるってのによぉ……俺といれば、絶対にアイツが惨めに思えてくるぜ。絶対に後悔させてぞ。やるどいつもこいつも全員なぁ……!」






 なんか長ったるい呪詛みたいなのを吐き続けている。



 え、待って。

 本当に呪われてるようなことはないよね?


 え?僕、まだ呪われてないよね!?





 え!?大丈夫!?ちょっと怖いよ?





 後でお祓い行こー………。





◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇







 次は他の種目の話だ。




 例えば、ハンドボール投げ。



 これは手加減が楽だった。



 だって計算して、上からどう投げれば平均的な記録が出るかを判断して投げればそこにスポンと収まるのだ。





 ほら、言っただろう?


 特技は狙って平均点を取ることだってね。



 うん。24m。

 ミスター・アベレージと呼んでもらおう。




 やっぱ、何でもかんでも英語にしたらいい感じになってる感出るな。

 (直訳:平均値さん)





 はてさて、本題に戻るとして。




 次は黒田の番だ。



 話しかけてきたし、出席番号が近いからって理由で目にかけていたが彼も彼で身体能力は平均値並みだ。


 だが、彼の【特技】は平均的ではない。




 僕の記録とは大きな差が出るだろう。


 例えば、今回のソフトボール投げ。






 投げると、途中まではちゃんとした軌道を辿っていた。



 だが、突如何もかもが吹き飛ぶかと錯覚するほどの強風が吹き荒れた。




 あまりの風に顔を背けてしまう。


 次に見た時、ボールはもう50m地点に着地していた。





 うん。

 別にいいけど、周りの生徒や先生もポカーンとしてるし、よくよく考えれば、今のやつ、ぼくら、巻き込まれたよな?





「おい黒田、超目が乾いたんだが」


「ん?あぁ、ごめんごめん。ほら、目薬」




 なんでかわからんが目薬を常備している黒田。



 まぁありがたく使わせてもらいます。









 そして、男子最後の方の山岸の番になった。




「「「「「BOOOOOOO!!!!!!!!」」」」」


 なんか、反感買いすぎてブーイングされている山岸。


 アイツもアイツで満更ではなさそうだ。



 ??

 すげえこっちをチラチラと見てくるな。




 そう思った矢先、チカラの差を見せたいとでも思ったのか、山岸は全力投球でボールを投げつけた。




 【スーパーエネルギー】のおかげでボールが30〜45の間くらいの角度で勢いよく放たれている。



 結果は73mとか聞こえてきた。



 チラリと見ると菜々に向けてアピールした後、僕の方をみてニヤニヤしている。






 なんか、『お前のその平均的な記録しか出せない脆弱な身体で俺に勝てるわけないんだから早く降参しろ』って言ってきてるように見える。





 じゃあ僕は『そんなの知ったことか。お前はそうやってすぐマウントとって自慢にもならない自慢をするから自己過信しすぎて結局僕に負けるんだ。惨めだな』って顔で返す。





 そしたら、『別に友達なんて足手纏いになるだけだろうが。それに、ここのそんな程度の低いやつらと友達になったら俺まで低く見られるだろうが』という顔を返してきた。


 ……ん?えぇ??

 ああぁーー……。




 これは、どっちかが表情をちゃんと読み取れてないね。



 まぁ、まずは表情よりも、口があるんだから言葉を使えって話なんだけどね。







◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇






 次は女子のハンドボール投げ。




 相変わらず、未来は普通の女子のタイムを出している。



 って待て。

 アイツなんか違う女子や男子と仲良くなってないか!?


 なんだ、これが陽キャのコミュ力!!


 あ、抗えないほどの陽オーラ……所詮僕たち陰の者とはかけ離れた存在ということか……………





 そう思っていたのだが、未来はこちらを見た後、実にイラついている顔をしてそっぽを向いた。



 ん?ツンデレか?

 と思っていたが、その視線が黒田の方へと向いていたのを知るのはまだ先のこととなる。











 そして我が友、菜々の番となったのだが……。




 …………うん、【特技】のおかげもあるだろうけどハイスペックすぎる。




 彼女の投げたボールは炎の尾を引きながらどんどんと上空へ上空へと上がっていき、ついには数回のバウンドの後、あと十数mで学区外、というところまで転がっていった。




 もう本人は超歓喜。

 他の女子達や先生からは称賛の嵐。

 男子(黒田含む)からは素直な称賛と屈辱の声。

 山岸からは屈辱の声100%であった。




 菜々はその場から目で僕を探し出し、満面の笑みで元気いっぱいにピースサインをしてきた。




 ちょっとドキッとしたかもしれない。




 だが。


 その直後の周囲の男子からの敵意と殺意と怨念と怨みと辛みとを存分に掛け合わせて階乗した挙句さらに練り込んで作っても足りないような視線で射抜かれたのだ。



 そりゃあもう、ドキッとした余韻を楽しむ間もなく冷や汗と脂汗でビチャビチャだよ。


 何してくれとんのや。









 こうして、トラブルと言えそうで言えない出来事をやり過ごし、外の種目は終わった。









うらめもっ!

「ちなみに、ソフトボール投げで神崎と山岸が表情で会話していた時、間違えたのは山岸くんで、『お前そんなんだから友達できないんだぞ』ってニュアンスのこと言われたと思っています。しゃべろよ」

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