43.【特待生】は勝敗とともに
リアルが忙しく投稿が滞ってました。
今日は2話上げたいです………。
穂村は水を蒸発させて、水の無くなった水槽を全力ダッシュする。
水槽を破壊するこの案は、私が考えたものじゃない。
帝くんが考えたものだ。
この体育祭はルールの抜け穴を上手くつくのが最も重要だということ、他クラスの企み、どうすれば対処できるのか。
彼は全て知っていた。
教師にも審査員になってもらうように頼み込んだらしいが、返事はなかったようだ。
それでも諦めず、審査員発表までずっと祈り続けていたらしいが、審査員発表で生徒が出てきた時の落胆のしようで吹き出しそうになってしまった。
だが、『最低限コレだけは』と取っていた対策は功を奏し、生徒会の介入、出場競技の作戦、そして司会者の───。
あらゆる計画を綿密に、保険の保険の保険まで用意する。
今までの人生で出会った中で、最も用意周到な男だ。
いや、もしかすると、これを行ったのは神咲 帝ではないのかもしれない。
授業や日常での提出課題など、横まで見た彼の生活からはそんなものは感じ取れなかった。
だが、稀に見るまるで人が違うかのように淡々と喋る彼……。
おそらく、噂のもう一人が本当に実在するならば、おそらく、その知能は彼のものだ。
「神咲………帝。警戒はしておきましょう」
そして、穂村は水泳という競技で走りながらゴールテープを切った。
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ピイィィィィィィーーー!!!
最後尾の走者がゴールを跨ぎ、〔トライアスロン〕終了のホイッスルが鳴った。
夏樹へとハンドサインを送ってはいるが、気づいている素振りはない。
今僕は、今世紀最大の運試しをしている。
ここで夏樹とのコンタクトをとることさえできれば、この競技は勝てる。
いや、風の噂では〔バスケットボール〕では負けた、と聞いているから、別に全競技勝利を目指しているわけではない。
だがしかし、体育祭全体での勝敗は気にしなければならない。
【特待生】にとって、知名度は最も危険視すべきものだ。
体力テスト終わりに、春太に【特待生】の事実を打ち明けた時に言われた一言。
『お前…………それを安易に話すことが、どういうことを意味するのかわかって言っているのか?』
当時はわからなかったが、今ならわかる。
どのクラスも、生徒の様子はかなりピリついていた。
その雰囲気と、現状証拠から察せられる事実。
教師長の策略により、学校全体でライアーゲームが始まろうとしている。
【特待生】を見つけるゲーム。
そして、【特待生】側伝えられている、【特待生】の願いを叶えるゲーム。
一般生徒に言われている願いを叶えるゲームはハッタリだ。
それは確証を持っていえる。
【特待生】側に伝えられているのは、最も【特待生】だと疑われなかった者の願いを叶えるというものだ。
つまり、一般生徒に言っているあの《【特待生】探索ゲーム》はブラフ。
真の目的は、『【特待生】がどれほどバレていないか』を調査することだ。
だからこの学校の教師長は、一般生徒に『願いをかなえる』という嘘をばら撒きながら、ここぞとばかりにアンケートをとっているようなものなのだ。
実際には【特待生】の中で勝敗を付けるための指標でしかない。
だから、ここで目立つのは得策ではない………。
というわけでもなかったりする。
あの教師長のことだ。
先を見通してこのゲームを作っている。
順序を追って状況を整理するとしよう。
例えば、入学者全員に『【特待生】を見つけたら願いを叶える』という内容の紙を渡す。
そこでは、まず『【特技】とはどのようなものか』や、『まだ不確定要素が多いから動かない』という人がいる。
ここまではまだいいだろう。
だが、次のフェーズでは一般生徒が【特待生】の行動について考察し始めたり、【特待生】の特別な何かを探し出そうとする。
『【特待生】がバレると願いを叶える生徒が出るから、きっと自分からは目立ちにいかない』と考える人や、『【特待生】は存在しない』、などの考察を繰り広げる者達。
『【特待生】は毎日登校している』、『【特待生】は一般生徒とは違う寮に帰っている』など、ありもしない空想を並べ立てて【特待生】の特異な動きを探る奴。
【特待生】だとバレないためには、そのフェーズでどれほど自分が『一般生徒』と同じ行動を取れるか、が重要だ。
体育祭が、それを見定めるための時間。
【特待生】は競技で活躍するか、しないか。
過剰に有名な奴らは、【特待生】に関係があるのか、それともただただ目立った高校生活を謳歌したいだけか。
誰とも喋らないような人間は【特待生】がバレないようにそうしているだけか、普通にただのコミュ障か。
どこにでも、【特待生】の可能性を見出すようになってしまえば、少しのボロを出すことも許されない。
もし俺がここで『【特待生】は俺だ!!』と叫んだとしても、信じないやつ、その裏をかいて信じるやつの半々ってところだ。
まぁ、【特待生】側の理想としては、『願いなんて叶わない』、『そんなもの幻想』、『騙されてるとしか思えない』って冷静に考えてくれるのが一番なんだが。
とりあえず今は、(一部にはもはやバレているが、)【特待生】だと言うことを徹底的に隠すために、体育祭では目立ちすぎず目立たなさすぎず、の調節に重きをおくべきだ。
目下の課題である〔トライアスロン〕では、夏樹が僕からのハンドサインに気づけば勝てる。
ハンドサインに気づかずとも、採点までの時間にこの競技の勝利方法に気づいてくれればいいのだが………。
うん、無理そうだ。
それでも、審査員に忠美を潜り込ませているなら、勝てる可能性は0じゃない。
僕ができることは、この競技では……と言うよりも、僕が出ない競技の対策は考えることはできない。
「もう競技も終わったみたいだし、僕が知ってる人出る競技もコレが最後だから、もう寮帰るかな」
「お?この競技で帰るってんならわかるけどさ、せめて結果発表だけでも見てけよ」
「もう無理、眠い」
「あっそ」
一瞬純也に引き止められたが、そのまま観客席を後にする。
結果発表、か………。
この後の競技は〔綱引き〕、〔ダンスパフォーマンス〕、〔eスポーツ〕とか言う、体育祭らしからぬ競技が主となっている。
なんだよ、体育祭で〔eスポーツ〕って。
絶対いらないだろ、また候補不足か?
こんな競技ばっかりになるんだったら、生徒会に頼めばもっとマシな競技になっただろ……。
「ちょっといいかな?神咲 帝くん」
体育祭の運営に呆れていると、背後から声をかけられる。
振り返ってそこにいたのは、水色髪の長身。
メガネをかけて理知的そうな、今日の朝も見た話の長そうな女性。
校長、水森 歩美。
「なんでしょうか?歩美先生?」
見たのは開催式が初めてだったが、名前だけは聞いたことある。
僕がこの高校に入るきっかけとなった、原因の一端を担う人間だ。




