40.スタートダッシュは轟々と
昨夜、投稿に失敗したので今朝に投稿いたしました!
互いの戦意を高めた後、穂村を含めた3人は各々の出発地点に足を運んだ。
A組の50m障害物走、B組E組共に100m走、C組水泳、D組借り物競走。
なんでもあり、と言いたげな自由競技ばっかりである。
水泳なんて、会場の上に水槽を置くような形で実現されている。
ちなみに、水泳に出るのは男子だし、女子が出場する水泳の水槽は真っ黒に塗りつぶされていたので、男子が鼻血を出しながら望むような光景は見られない。
残念だったな、世の男子諸君!!
借り物競走なんて、会場のどこに借りに行けばいいのか。
障害物走なんてもう箱を人が通れそうな隙間が生まれるようにテキトーに置いただけだ。
まぁ、かなり通りにくそうではある。
面白そうって理由で見ているが、今考えてみると僕の今後の学校生活はこの競技にかかっているのか。
二色が勝てば僕は厳しい束縛によって今後の学校生活がすごい不自由なことになるわけだ。
まぁ、特定の一人に重く愛されるって言うのも、非モテよりは贅沢なもんだろう。
でも、せっかくのファーストフレンドの菜々と話せないって言うのはちょっと寂しいしな!
菜々!ファイト!!
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「第一走者は、規定の場所で準備してください」
菜々の出場する種目は100m走。
E組の〔トライアスロン〕の最初の走者だ。
二色はB組の2個目の競技に出るつもりらしい。
先ほど、思い出した二色によれば、体力テストの頃から【特技】を見せてはいないらしい。
未来曰く、(直感だけど)厄介な【特技】なのは間違いない、と言っていた。
なんなら、【原初】の特技であることも視野に入れておいた方がいい。
スタートラインに菜々が着く。
他のクラスもスタートラインに着き始め、次の走者も用意が終わったようだ。
「では、位置について………」
菜々はクラウチングスタートの姿勢をとり、他の選手も出走に向け構えを取る。
「よーい…………」
各々、【特技】の使用準備をし、水泳は【水流を操る特技】を、障害物走の走者は【透過】を、などなど。
菜々も能力を発動させようとしていた。
【特技】、【焦土】が発動され、足元の地面がチリチリと焦げ始める。
周囲には熱気が溜まり始め、他の走者の足元にも影響がおよび始める。
そして、青空に空砲が響き渡る。
「スタァーートッ!!」
全員が一斉に走り始め、ありとあらゆる【特技】が散乱する。
【透過】で障害物をものともせずに走り去っていく者、流水に乗りハイスピードで泳いで行く者等、様々な【特技】が扱われる。
その中で、一際目立つ【特技】があった。
地面に一筋の黒い跡を残しながら、猛スピードで駆けていく菜々である。
菜々の能力について、少しだけ説明しよう。
そもそも、【特技】は五つの段階に分けた方がいいだろう。
まずは、なんの特徴もない、【特技】。
これは、数値的に表せば0〜25ってところだろう。
そして次が【スーパー】の前置詞が着く【特技】だ。
数値的には26〜50だ。
その上に、【加護】と呼ばれる【特技】がある。
数値は51〜75。
そして最後に、【原初】なる【特技】となり。
数値76〜100と言ったところとなる。
基本、こう言った序列はピラミッド型で表されることが多いだろう。
しかし、【特技】の場合は円形で表した方が良い。
何故ならば、【原初】を超えた人外の【特技】、通称【称号無し】。
純也が同じであると言われたその部分が、なんの特徴もない【特技】と全くの見分けがつかないからだ。
それを踏まえて、彼女の能力を見てみよう。
菜々の能力、【特技】【焦土】。
自身が足をつけている地面を焼け野原にする、といった凶悪な【特技】。
明らかに、なんの特徴もない【特技】としては異質な性能を持っている。
推定だが、これは【称号無し】と呼ばれるにふさわしい【特技】だ。
まだ予測ではあるが【称号無し】の【特技】を持っているのを確認しているのは、彼女を含めると3人目だ。
そのため、まだ曖昧な部分もあるが、『他とは隔絶した効果を持ちながら、何かしらの特別な称号がない特技』という観点からすると、やはり菜々の【焦土】は異質であった。
自身が足をついた瞬間に、その足元の土の火力を最大限まで上昇させ、擬似的に爆発させて脚の回転をできる限りサポートしている。
そのため、競技場には足跡型の焼け跡が黒く残っている。
さらに発動するだけでも、(抑えているのに)半径1メートル圏内の円の領域は常時焼け野原と化していて、一歩踏み出すごとに、その方向に焦げた地面は広がっている。
100m11秒台。
つまり11秒辺りで、幅2m、長さ102mの草むらが灰色に変わっていたのだ。
今回の体育祭も、そのチカラは十全に発揮され、E組の100m走は瞬く間に終わりを迎えた。
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「菜々のあのチカラ…………予想外だな」
「いや、なにさらっと観客席戻ってきてんだよ。バスケどうした、バスケ。さっきのバスケ負けたんだからな!?」
いやはや、先ほど元の観客席に戻ってきたのだが、まぁ一試合帰ってこなかったからもう淳弥くんプンプンでしたね。
まぁ、飲み物買うって出て行った友だちが数時間戻ってこなかったら普通死んだか帰ったかを疑うよな。
それは友人としてこちらの配慮が足りなかったな………。
「にしてもだよ、なんだあのスピード。僕より速いんじゃないのか?」
「それはない。シャトルランを見る限り、それはない」
「そんな否定しなくて良いじゃん………」
そう、そういえば。
彼は本当に特異なケースだ。
【必勝の】とは付いているが、【称号無し】の【特技】を持っている。
なんでそんなに【特技】に関しての見識が高いのかって?
そりゃあもう、教えられたから覚えたに決まってるでしょ。
この学校じゃ、たまにそういう教育があんのよ………。
まぁあとは、『【特待生】だから』という理由も付け足しておこう。
菜々がゴールした後、次の走者である穂村が走り始めた。
ここまで来ても、疑念はまだ残る。
それは…………。
「〔トライアスロン〕…………審査員は誰の味方だ?」
うらめもっ!
「僕の【特技】ぃ?えーっとね。多分【称号無し】に入るんじゃないかな?考えたことないからわかんないや!!!」




